1. スコアキーパー
記帳と決算報告が主な役割であるスコアキーパーはデジタル技術活用による業務の標準化、自動化による効率化が求められています。
EYのデジタル監査では、リモートワークで資料のやりとりが可能なウェブベースのプラットフォーム(EY Canvas Client Portal※3)やITシステムからのデータ抽出ツールの無償提供(Smart Exporter)などファイナンス部門の皆さまの監査対応業務の負荷軽減のため、さまざまな取組みを行っています。
22年10月にEY新日本と宝印刷(株)は、有価証券報告書など企業の開示決算プロセスを支援するため、宝印刷(株)の開示システムである「WizLabo」に格納される企業の決算データおよび開示データをEY新日本に連携するための「Application Programming Interface」と、有価証券報告書等の監査業務を効率化するシステムを開発するプロジェクトの発足をリリース※4しました。今後も財務報告に関するエコシステム全体のDXのため、会計システム、開示システムを提供する企業とも積極的に連携してまいります。
その他、EYではERPなどITシステム上の承認活動から発生するイベント・ログを収集し、業務プロセスを可視化するプロセスマイニングを監査で活用しています。例外処理の網羅的な把握による異常な業務処理統制の検知の他、業務に関するフローチャート作成の自動化、IT業務処理統制の再実施の自動化などファイナンス部門、会計監査人双方の内部統制評価の高度化、効率化に取り組んでいます。
2. カストディアン
コンプライアンスや財務リスクなど守りのリスク管理や資産価値の保全を担うカストディアンはデジタル技術活用によるリスクの可視化が求められます。
EYのデジタル監査では、監査で入手した全量データ分析による異常検知を行っていますが、当法人内Forensics事業部に所属する不正調査メンバーの知見※5と不正事例を学習したAIアルゴリズム(東京大学大学院 首藤昭信准教授と協働して開発)※6で財務リスクの適時把握とクライアントへの早期共有を進めています。
またランサムウエア攻撃などサイバー侵害が財務諸表に係るシステムに及んだ事例※7や財務・非財務情報に与えるデータガバナンスの影響※8などを踏まえ、EYではDigital Trust領域※9についても、財務・非財務リスクへの影響を踏まえた洞察の提供を積極的に行っています。
3. コメンテーター
財務的な観点からの短期の予測と対応が求められるコメンテーターはERPなど企業内の構造化データの結合、SNSやIoTからの情報などERP外にある非構造化データの活用に加え、BIツール※10利用によるデータ分析などデジタル技術の活用でマネージメントに対して洞察の提供が求められます。
EYのデジタル監査では、企業内の構造化データを結合したデータレイクとEYのデータ分析環境をクラウドまたは専用線でリアルタイムに連携する取組みを行っており、複数の監査業務で実用化しています。リアルタイム連携による全量データ分析を活用し、ファイナンス部門、会計監査人双方にとって効果的効率的な継続的監査手法※11を導入していくことで、リスクの検知や洞察の提供を早期に行っていく予定です。
4. ビジネスパートナー
財務面からの意思決定支援と事業価値向上が求められるビジネスパートナーはデジタル技術を活用した将来予測が求められます。バリューチェーン全体を俯瞰(ふかん)するために、財務・構造化データのみならず、非財務・非構造化データを活用したダッシュボードを構築し、予測モデルの作成、投資モニタリングの仕組みを整備した上で、事業計画・資金計画を作成することが必要となってくると考えられますが、「攻め」のリスク管理をカバーする統合的なプラットフォームは実用化段階にはまだ至っていないようです。
EYのデジタル監査では、これまで7年以上利用してきた世界共通の監査プラットフォームをさらに発展させた次世代のアシュアランス・テクノロジー・プラットフォームの構築に10億米ドル強の投資を行うことを22年6月に公表※12しました。この投資により、データ範囲の拡大(財務から非財務へ)、AIの実装(リスク検知力向上)、ユーザー体験の向上(洞察の提供、サステナビリティへの対応)を進め、財務・非財務報告に対する包括的な監査・保証サービスの提供を実現させます。
EYではこのようなプラットフォームの活用と、サステナビリティや企業価値評価など多様な経営アジェンダに対応するスペシャリストの参画により、ファイナンス部門のビジネスパートナーに対して将来に対する予測分析に基づき、第三者視点でのマネージメントレターで新たな気付きを積極的に提供していきます。