1. クラウド化とデータ基盤
これまで多くの企業では中央集権的なメインフレームやサーバー型の基幹システムの開発・保守を行ってきましたが、この10年ほどでクラウドファーストの考え方が広がってきており、ビジネス要件に対して柔軟・迅速に対応することが可能となりました。また、クラウドサービスの選択肢も増え、既存のシステム要件を維持しつつクラウド基盤に移行することも比較的ハードルが低くなっています。
こうしたクラウド化の流れの中で企業が強化すべきは、クラウド基盤で取り扱う多様・大量のデータ収集です。そこで重要となる要素技術はIoTです。例えば、プラントにおける各機器の稼働状況のIoTを通じてデータを収集し、分析することで、設備投資のROIを最適化するなどの事例が増えています。IoTに必要な機材やソフトウェアの導入コストが今後低減することが予想される中、IoTを通じた各種データのリアルタイム収集という傾向が続くものと考えられます。
2. 自動化の領域進化
自動化は、「業務効率化」「予測・最適化」「意思決定の自動化」という三つの段階で進化します。「業務効率化」については、RPAなどのIntelligent Automationツールを適用することで、多くの企業が一定の効果を享受しています。また、「予測・最適化」についても、AI、機械学習機能などを用いた取組みが進んでいます。
そしてさらなる発展段階として「意思決定の自動化」があります。これはCognitive Automation(CA)と呼ばれるもので、状況を可視化し、高精度の予測を通じた最適解の導出を行い、最終的に意思決定を自動化することを可能にします。CAは人間の思考を再現するものであり、認識・分析・判断という一連の技術が集積されたものです。さらにCAは人が介在せずに自己学習を続けることが可能です。数年前から一部の領域においてCAアプリケーションは存在していましたが、自然言語処理、画像処理およびパターン認識などの各種技術の品質向上により、さらなる普及が期待されます。
3. Digital Workforceの民主化
自動化の範囲が広がると、人間と自動化ツール(Digital Workforce:DW)との関係も変わってきます。RPA等の業務効率化段階では人間はDWを使用し管理する立場でしたが、自動化のレベルが上がるにつれ、人間が担うべき役割は次の三つに変化します。
一つ目は、DWに関する動向を把握する役割です。デジタルテクノロジーは日々進化しており、新たなツールや開発手法などが次々に出てきます。それらを収集し、メリットやリスクを関係各所に発信していくことが求められます。
二つ目は、DWをどの業務にどのように適用するかを検討する役割です。そのためには企業を取り巻く社会課題を大局的に把握し、課題を設定した上でDWの適用領域を見極める能力を備えることが肝要です。
最後は、DWを業務に実装する役割です。クラウドファーストでLow Code/No Codeのソリューションが発達することにより、デジタル実装は必ずしもIT部門やITベンダーの役割ではなくなりました。ビジネス部門が主体的に関わり、DWの民主化を進めることが期待されます。