地球デジタルツインの用途は多岐にわたりますが、特にサプライチェーン、将来予測・気候変動評価、社会経済評価等の領域での活用が期待されており、CONSEOでも活用用途の検討が進められています。ここでは、今後地球デジタルツイン、そして衛星地球観測データの活用可能性について、いくつかご紹介します。
1. サプライチェーンのレジリエンスと透明性の向上
サプライチェーンのレジリエンスと透明性は、企業の持続可能性と競争力にとって不可欠な要素です。衛星地球観測データ活用は、物流ルートの最適化、リスク管理、異常気象や政情不安による影響の未然防止などに貢献できる可能性があります。例えば、全球水資源分布のモニタリングや確率予測により、洪水や干ばつなどの自然災害によるサプライチェーンへの影響を事前に識別し、適切な対策を講じることができたり、海洋熱波や海流のリアルタイムモニタリングにより、海上輸送の安全性を高め、持続可能な海洋資源を管理したり、といった使い方です。
衛星データや気象データ、地政学リスク情報などからサプライチェーンに影響する危機をリアルタイムで可視化し、生産や納期への影響等を把握できるようなソリューションも登場し始めています。
2. 気象予測と災害検知による意思決定支援
多様なセンシング技術を用いて地球の状態をより詳細に、かつ広範囲にわたって観測できるようになることで、より正確な気象予測や気候変動の評価が可能になります。例えば、台風の進路予測や強度の変化、局地的な洪水や干ばつのリスク評価などが挙げられます。地球システムの物理的な挙動がより正確に再現できれば、気候変動の長期的な影響評価や、将来の気象パターンの変化を予測することが可能になります。
農業における農地管理や生育管理、行政における災害発生時の救援救助計画のシミュレーション等、高精度な予測に基づくきめ細かな計画立案や被害軽減が期待されます。
3. 社会経済評価
自然資本の価値を可視化し、気候危機等の対策において、自然・社会経済などの将来を見通すことで、サステナブルな社会を目指して行動変容を促すことも地球デジタルツインの活用用途として期待されます。
従来把握が難しかった環境変化や経済活動の影響が、地球デジタルツイン上で可視化されることで、例えば、気候変動による農業生産性の変動、都市開発に伴う熱島効果、自然災害リスクなど、社会経済に直結する要因の分析が可能になります。
気候変動は生物多様性とも強く結び付いており、鉱業、林業、農業などのセクターに限らず多くの企業は自然資本に依存しているため、生物多様性の損失はサプライチェーンの混乱や規制遵守コストの増加、ソーシャルライセンス(社会からの承諾)の失墜等につながる可能性があります※10。生物多様性のリスクやその測定は複雑かつ多岐にわたるため可視化や客観的な証跡を示すことが容易ではないところがありましたが、地球デジタルツインを活用することで生物多様性への悪影響を可視化し、適切な対応をすることが期待されます。
昨今の企業経営においては、短期的な経済成長だけでなく持続可能な社会への貢献も求められ、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する非財務情報の重要性も高まっており、衛星地球観測データの活用はESG経営とその客観的な評価を行う上でも、鍵となり得るでしょう。例えば、温室効果ガスの排出量の監視、森林破壊の追跡、自然資本の価値評価、カーボンクレジットの活用など、衛星地球観測データを活用することで、企業は自らのサステナビリティへの取り組みをより透明かつ具体的に示すことができます。