第6回EYモビリティサーベイの調査結果
海外出張
- 出張先地域別飛行機クラス
日本からのフライト時間の長い地域(アフリカ・中南米)はビジネスクラス利用を認める割合が高い傾向にあるものの、多くの企業がエコノミークラスを標準クラスとしています。
- 出張日当
「全拠点一律で上限額を定めている」が最も多く52%、次いで「拠点または地域別で上限額を定めている」が36%という結果となりました。
- 出張費用の管理・費用負担のポリシー
出張日数・費用の管理は「出張者の所属部門が行う」とする割合が56%で、「管理部門」の36%を上回りました。また出張費用負担方法のルールやポリシーの策定状況については、67%が「ルール・ポリシーがある」とするものの、「ない」との回答も20%に上り、税務調査に備えた対策が必要と考えられます。
- 課題
昨今の為替の急変動・世界的な物価高による宿泊費、日当の見直し基準の設定、出張費用の負担先、有事の体制構築等が課題として挙げられます。
海外人事体制
- 戦略/オペレーション
海外人事の戦略とオペレーションを「同じチームで担当」が46%、「別のチームが担当」が32%と回答が割れる結果となりました。また赴任者数が多い企業ほど、シェアードサービスや外部委託を活用する傾向が明らかになりました。
- 今後力を入れて取り組みたい分野
204社中116社が「手当・福利厚生制度をはじめとした海外勤務者規程の策定・見直し」と回答し、制度改定を検討する企業の多さが浮き彫りとなりました。
国をまたいだリモートワーク・バーチャルアサインメント
- 検討時に気を付けているポイント
204社中156社が「税金の取扱い」と回答、次いで「労務管理」(108社)、「ビザの取扱い」(105社)という結果となりました。
- 今後について・課題
50%が「ケース・バイ・ケースで検討」と回答し、検討段階の企業の多さが明らかとなりました。
また他社での導入事例を聞いてみたいという声が多く、ニーズはあるものの事例の少なさから制度化に至っていない企業も多いことが推測できます。
EY税理士法人 パートナー 藤井 恵(ふじい めぐみ)のコメント:
「今回は『海外出張者の処遇』『海外人事体制』『海外リモートワーク』の3点に絞って調査を実施しました。海外出張については、日当、宿泊費、航空機座席クラス、海外現地法人のための出張時の費用負担について調査しています。航空機座席クラスについては、一般社員はエコノミークラスが主流ですが、長距離移動の場合はビジネスクラスやプレミアムエコノミークラスの利用を認める企業も2割程度存在することが明らかになりました。
また、宿泊費について役員クラスは2.5万円~3万円、課長クラスは2万円~2.3万円、一般社員については2万円~2.2万円が中央値でしたが、「上限設定せず実費支給」の企業も4割近く存在する点からも、昨今の円安や海外物価高に応じて柔軟に対応していることが明らかです。日当についても役職ごとの差はそれほど大きくなく、役員クラスが7,600円~8,000円、課長クラスが7,000円~7,500円、一般社員が6,600円~7,000円、という結果でした。また、海外現地法人のための出張であっても、日本法人が費用を全額または一部負担している企業が4割以上存在するため、今後の税務調査で指摘を受ける可能性があることから注意が必要です(詳細結果は回答企業様に配布済み)。
海外人事体制については、赴任者数が多い企業ほど、シェアードサービスや外注を利用するなど、分業体制が進んでいることがわかりました。一社当たりの海外人事担当者は5名程度(中央値)という結果でした。しかしその多くは専任ではなく、他業務との兼務で担当されている傾向にあります。そのため、業務負荷が多い割に割ける時間が少なく、知見が十分でない、そもそも担当者数が不足しているという意見も多く、海外人事業務担当者の苦労が垣間見えます。
今後優先的に取り組みたいこととしては「海外勤務者規程の策定・見直し」が最も多くなっていました。海外赴任者の多様化や外部環境の変化に伴い既存規程では対応が難しいことに対し、対応策を検討されていることが明らかです。
また、国をまたいだリモートワーク・バーチャルアサインメントについては、税務面について特にリスクを感じておられ、規程や内規等で制度化している企業は5%程度ですが、個別判断や今後検討していきたいという企業が3割ほど存在します。一方、「認めていない」とする企業も半数近くあり、国内でも出社回帰の傾向も見られることから、海外リモートワークは必要に応じて限定的に認める、という体制が継続する見込みです」