EU域内で事業を営む特定の多国籍企業グループは、欧州連合(EU)のCbCR開示指令に基づき、法人所得税の納付額、会計上の税務および関連する指標を開示(「CbCR開示」)することが義務付けられています。この情報は、27の全EU加盟国と、税務面で非協力的な国・地域のEUリストに記載されている国・地域について、国・地域別に開示しなければなりません。
EU加盟国は指令の国内法制化を継続して進めていますが、EU加盟国ごとの開示範囲や手続き(「CbCR開示要件」)に違いが生じており、多国籍企業グループはCbCR開示要件を慎重に検討する必要があります。EU PCbCR Developments Tracker(EUにおける国別報告書の開示に関する最新状況一覧)は、指令に定められている規則と、EU加盟国および欧州経済地域(EEA)諸国の国内法制化の進捗状況とCbCR開示要件の概要を提供しており、指令の早期採用国、CbCR開示要件についての共通点や差異につきまして、一目でご覧いただけます。
日本企業においては、どのEU加盟国の法制に基づいてCbCRの開示が求められるのか、そのEU加盟国のCbCR開示要件を確認することが求められます。今後、開示様式、指標の定義ならびに開示手続きについて、EU加盟国間の統一が図られない限り、個別の開示対応を求められる可能性が否定できません。CbCR開示は税務当局以外のステークホルダーにも参照されるため、各指標の異常値やEUリストに含まれる国・地域における事業活動の状況など、税務コンプライアンスの順守および過度な租税回避行為を行っていないことに加えて、税務以外の観点からの説明責任も求められることになります。オーストラリアにおいても、CbCR開示についての法制化が検討されています。さらに、米国会計基準ではCbCR開示とは異なる様式での税務ディスクロージャーの基準が導入され、国・地域別の税関連指標の開示は世界的な潮流となりつつあります。日本企業においてもCbCR開示に際しては、税務部門に留まらず、経営企画、地域統括、事業部門、IR、サステナビリティ等の各部門、そしてCEO、CFOなどトップマネジメントの関与による戦略的な検討が求められます。
2024年2月20日現在のEUリストは次の通りとなります
EUブラックリスト | EUグレーリスト |
米国領サモア(2017年12月5日追記) | アルメニア(2022年10月4日追記) |
アンギラ(2022年10月4日追記) | ベリーズ(2024年2月20日追記) |
アンティグア・バーブーダ(2023年10月17日追記) | 英領バージン諸島(2023年10月17日追記) |
フィジー(2019年3月12日追記) | コスタリカ(2023年10月17日追記) |
グアム(2017年12月5日追記) | キュラソー(2023年2月14日追記) |
パラオ(2020年2月18日追記) | エスワティニ(2022年10月4日追記) |
パナマ(2020年2月18日追記) | マレーシア(2021年10月5日追記) |
ロシア(2023年2月14日追記) | セーシェル(2024年2月20日追記) |
サモア(2017年12月5日追記) | トルコ(2017年12月5日追記) |
トリニダード・トバゴ(2017年12月5日追記) | ベトナム(2022年2月24日追記) |
米領バージン諸島(2018年3月13日追記) | |
バヌアツ(2019年3月12日追記) |
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