日本企業はBEPS2.0にどう対応すべきか
これまで日本企業では税務コンプライアンスを重視する考え方が根強く、各国の税制に基づいて適切に申告納税し、税務調査に対応することに重点が置かれてきました。しかし、最近は日本企業の中にも欧米のグローバル企業と同様に税務プランニングによって連結の実効税率の低減を図る傾向が広まりつつあります。ただ、税務部門がグループ全体の投資・ストラクチャー・バリューチェーンやモビリティについて、税務の観点から責任を持ち、国別の実効税率を管理する戦略的なマネジメント機能を持つにはまだ至っていません。
今後新たに施行されるBEPS2.0はPillar 1(第1の柱)における新たな課税権と課税所得の配分、Pillar 2(第2の柱)におけるグローバル課税ベースとミニマム課税に伴う、歴史上初のグローバル課税と言えます。そのため、日本企業としてもおのずと従来の税務対応のスタイルを変えざるを得ない状況となっているのです。
欧米のグローバル企業はBEPS2.0を税務の観点からのルール化によるグローバルビジネスモデルの変革の機会と捉えているのに対し、日本企業は事務作業の負担増加のみに関心が集中している傾向が見られます。欧米のグローバル企業でも事務作業は発生しますが、従来のグローバル税務オペレーションの延長線上で対応可能と考えられており、むしろBEPS2.0の導入後に何が起こるのか、事業への影響を中心に検討がなされています。
欧米のグローバル企業ではBEPS1.0においても、各国の税制改正に応じた適切な税務プランニングを図り、新たなバリューチェーンやビジネスモデルを導入してきました。一方、日本企業は、BEPS行動13のマスターファイルや国別報告書の作成、BEPS行動3によるJCFC税制(タックスヘイブン対策税制)改正への対応に終始しており、ビジネス変革における税務部門の貢献という面で後れを取っていることは否めません。
BEPS2.0導入後の世界では、日本企業も単なる税務申告や納税負担を超えて、グローバルなビジネスモデルを構築し、持続的な成長を図る機会としなければならないのです。