一般的に、内部統制は経営者が事業活動を健全にかつ効率的に行うために企業内に構築する仕組みなので、経営者自身には及ばない、経営者は内部統制の枠外にいると考えられています(いわゆる内部統制の限界)※2。したがって、2013年5月改訂COSOで内部統制の仕組みが経営者にも適用されるという考え方が示されたことについて違和感を持たれる方も多いでしょう。
しかし、内部統制の4つの目的を達成する責任を有する経営者が、ガバナンスやコンプライアンスに後ろ向きであるような場合に、その企業内で有効な内部統制が整備され運用されるでしょうか?事業活動を健全にかつ効率的に行うためには、企業内にさまざまな仕組みを作り必要十分な内部統制を整備運用するだけではなく、経営者自身の意識、姿勢を含めた有効な企業環境を経営者が確保し続ける必要があります。内部統制というと、すぐに販売や購買などの業務プロセス、仕組みの話となりがちですが、それらを具体的に考える前に、経営者自身のガバナンスやコンプライアンスに関する考え方、姿勢がどのようなものか、内部統制は経営者自身が率先して取り組むべき重要なものであることを理解されているかの方が重要です。
改訂後の実施基準では、全社的な内部統制や業務プロセスレベルの内部統制を適切に整備運用していれば、内部統制の無視又は無効化のためには社内に複数の共犯が必要となるため、たとえ経営者であっても内部統制の無視又は無効化は相当程度困難なものとなり、経営者の不正に対する抑止的な効果も期待できるとされています。
関係者の皆さんが、経営者の役割を含む内部統制の重要性を理解し、新基準が適切に運用されることを期待したいと思います。