18 分 2024年9月20日
Energy storage power station

バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)投資の指針となる4つのポイント

執筆者
Arnaud de Giovanni

EY Global Renewables Leader

Future-focused thinker with over two decades of experience guiding power and utilities businesses through transformation.

Ben Warren

EY Global Power & Utilities Corporate Finance Leader

Adviser on procurement, regulatory policy and mergers and acquisitions across the entire energy, waste and water value chains.

EY Japanの窓口

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション リード・アドバイザリー アソシエートパートナー

インフラセクターにおける経験豊富なプロフェッショナルとしてサービスを提供。

18 分 2024年9月20日

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RECAI 63:系統の不安定化を受け、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)への需要が⾼まっています。EYが作成した国・地域別のBESS市場の魅力を示すランキングは、BESSへの投資機会・投資戦略の参考となるでしょう。

本稿は、Renewable Energy Country Attractiveness Index(再⽣可能エネルギー国別魅⼒指数︓RECAI)第63号の抜粋です。

レポート全文をダウンロードする(英語版のみ)

要点
  • 系統の不安定化に伴い、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の役割が拡⼤し、BESSの需要と投資機会が急増している。
  • 国・地域別のBESS市場の魅力を示すランキングは、BESSの投資機会・投資戦略の指針として活⽤することができ、BESS投資のアプローチに参考となる4つのポイントを取り上げている。
  • RECAI第63号のランキングでは、1位 ⽶国、2位 中国、3位 ドイツの順位となった。COP28の⽬標を達成するには、BESS投資を含めクリーンエネルギー投資を加速させる必要がある。
Local Perspective IconEY Japanの視点

世界の脱炭素化・ネットゼロを加速するためには、送配電網の不安定化を解消する必要があり、BESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)等を含めた新たな技術・事業の導入が不可⽋となっています。国内においては、本編に記載されている国・地域、特に英国と比べると、まだ市場整備および大胆な支援策の欠如から普及が遅れているものの、需給調整市場や容量市場(長期脱炭素電源オークション含む)の開設に伴い、複数のビジネスモデル・収入源ができ今後はさらなる活性化が期待されます。加えて再生可能エネルギー発電事業との組み合わせによるピークシフト、系統用蓄電池による系統運用の柔軟性・安定性の向上、マイクログリッドを一例とした災害対策としての活用等、大きな可能性があり、ここでも本編に記載の「4つのポイント」を踏まえ検討することで、事業者は長期的に堅実な収益を狙うビジネスモデルを構築することが可能となります。EY Japanおよびメンバーファームでは、これらBESS分野における支援実績を多数有しており、戦略策定、市場調査、事業計画策定、FA・ストラクチャリング・デューデリジェンス等の投資実行支援、PMO、会計・税務助言等の幅広いサービスを提供しています。

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内海 直人
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランザクション リード・アドバイザリー アソシエートパートナー

2023年、クリーンエネルギー投資は過去最⾼の1兆8,000億⽶ドルを記録し1、新規導入容量も過去最⼤となりました(507GW、その3分の2は太陽光)。2世界の再⽣可能エネルギーセクターは、一見すると順調に成長しているように考えられます。

しかし、状況はそれほどバラ⾊ではないことが分かります。2023年に投資が急増したことにより、世界の再⽣可能エネルギー容量を2030年までに2.5倍とする⽬標達成に向け順調に推移していますが、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の目標である再⽣可能エネルギー容量を2030年までに3倍とする⽬標達成には不⼗分であり3、目標達成のために投資の加速が必要な今、問題が発生しています。

⻑年にわたる系統への投資不⾜のため、複数の国・地域において系統の一部で送電容量を超えてしまい、系統制約が発生しています。そのため、開発事業者がタイムリーに開発出来ず、投資機会が損なわれているため、系統のアップグレードと拡張が早急に必要です。 EYとEurelectricが実施した調査「Grids for Speed」によると、欧州だけでも系統への年間投資額を2050年までに670億ユーロ(約730億⽶ドル)に倍増させる必要があり⁴、系統の容量不⾜により頓挫しているプロジェクトに投じられている資⾦は、プロジェクトが順調に進⾏していれば本来であれば循環するはずでした。また、投資家は非常に高い開発コストに直面し、状況はさらに悪化しています。⽶国、英国、ドイツ、アイルランドでは、再⽣可能エネルギーの割合が倍増する中で、出力制御率は2015年の2%から2022年には8%に上昇しています。5

BESSは、系統が抱える問題に対する解決策の1つになり得ます。また本号のRECAIで検討したように、適切な地域をターゲットとし、4つのポイントを考慮した場合、経験豊富な投資家は多くの収益を得る機会をもたらすでしょう。

RECAI第63号を読む:

  1. 分析:バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)投資戦略の指針となる4つのポイント
  2. 主な動向:世界の再⽣可能エネルギーの状況
  3. 標準化された指数:経済規模に対し、期待を上回るパフォーマンスを発揮している国・地域を紹介
  4. PPA指数:活発なPPA市場で優位に立つ買い手

chapter1

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(Chapter breaker)
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第1章

分析:バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)投資戦略の指針となる4つのポイント

投資のアプローチに有用なBESSの投資機会・投資戦略の指針となる4つのポイント

世界ではエネルギー転換のペースは上がっています。しかし、再⽣可能エネルギー容量を2030年までに3倍にするというCOP28で採択された⽬標を含め、気候目標を達成するには、取り組みを大きく加速させる必要があります。

特に輸送分野と暖房利用において電化が進んでいることから、化石燃料から電力への代替が進展し、2050年までにエネルギー需要の大部分を電力が占めるとみられます。例えば、欧州のエネルギー需要に電力が占める割合は、現在の20%から60%に上昇すると予想されます。6しかし、これには信頼のおけるレジリエントな系統が必要であり、BESS導入は系統の抱える課題解決につながります。具体的には、電力需給の分離、系統との不要な電力交換の削減、電力供給が可能になります。BESSの需要は急速に増加しており、2030年までに出力572GW、容量1,848GWhへと4倍に拡大することが予想されています。7

世界のバッテリー貯蔵電力量(GWh、2020~30年)
世界のバッテリー貯蔵電力容量(GW、2020~30年)
  • BESSが選ばれる理由

    BESSは、エネルギー密度、効率、モジュール性、反応時間の点で、他の既存のエネルギー貯蔵技術よりも優れています。また、BESSプロジェクトに要する資⾦は、他のエネルギープロジェクトよりも少なく、⽐較的速く調達することができます。BESSは、エネルギーシステムにおいて複数の役割を担うことが可能であり、さまざまな課題を解決することができます。

投資家の関⼼も⾼まっていますが、マーケットが習熟するには時間を要します。プロジェクトは通常20年以上であり、その間バッテリーの修繕が実施され、BESSへの投資には⻑期のコミットメントが求められます。さらに地域性が強く、他のクリーンエネルギー投資よりも多くのリスクを伴います。プロジェクトを成功するためには、地域性、電⼒市場の構造、技術、資⾦調達の相互作⽤を理解し、不確実性を受容する必要があります。

EYではこの難題を解決するため、今回初めて各国・地域のBESS市場の投資魅⼒度を調査し、ランキングを作成しました(これに当たり、容量・パイプラインのほか、⼊札、補助⾦、政策、導⼊⽬標などの政府⽀援を含めた要因を評価しています)。

  • 1. 米国

    • 米国のBESS市場は、インフレ抑制法に基づく30%の税額控除が追い風となり、急成長を遂げています。8
    • カリフォルニア州は先行しており、全ての新規建築建物にBESSの設置が義務付けられています。9
  • 2. 中国

    • 政府の強力な支援により、中国はランキングの上位に躍り出ました。補助金が一因となり、BESSプロジェクトの急速な開発が一層加速しています。
    • 新たな計画では、2025年までにBESSのコストを30%削減することを目標としています。10
  • 3. 英国

    • 英国のBESS市場の構造は洗練されており、BESS開発事業者にとって魅力的です。例えば、ナショナル・グリッドESO社のOpen Balancing Platformは、リアルタイムの大量給電に対応しています。
    • 新たなエネルギー法案ではBESSは発電設備に分類されており、建設における規制緩和と特定の料金体系が定められています。
  • 4. オーストラリア

    • 日次スポット市場には、電力調達と周波数制御に関連した多様な収益源があります。
    • 連邦政府は、安定供給に必要な電源を確保する制度であるCapacity Investment Schemeの制定について各州と合意し、BESS事業者の入札への参加を認めました。
  • 5. ドイツ

    • 系統使用料の一部免除や建設を対象とする補助金など、BESSにとってビジネスチャンスが拡大しています。
    • エネルギー貯蔵事業者は、一日前市場および時間前市場に参加できます。
  • 6. イタリア

    • 投資家は、イタリアのBESSに関する野心的な目標に関心を寄せています。同国は、送電事業者であるTerna社の71GWh(12GWから15GW)のエネルギー貯蔵プロジェクトの入札を、2030年までに完了することを目指しています。11
    • イタリアは、Terna社に対し、12~14年間のインフレ率連動型固定価格長期契約を提示しています。
    • 最初の入札は2024年12月に予定されており、初回引き渡しは2027年になる見込みです。
  • 7. 韓国

    • BESS市場でトップの中国、米国に次ぐ地位を目指す韓国では、ビジネスチャンスが生まれています。12
    • 新しく建設される全ての公共建築物にエネルギー貯蔵システムの設置が義務付けられています。13
    • 政府の奨励策には、BESSの設置に対する税制優遇措置が含まれるとみられます。
  • 8. インド

    • インドはBESSを積極的に推進する姿勢を明確にしており、アフリカ、アジア、中南米、カリブ海地域にクリーンで安価なエネルギーを供給することを目的とするパートナーシップ「Global Energy Alliance for People and Planet」のBESSコンソーシアムに参加しています。
    • インドは、BESSコンソーシアムのメンバーとして、2024年末までにBESSを5GW導入するコミットメントに合意しました。14
  • 9. フランス

    • フランスでは、BESS投資に対する税額控除を一因とし、BESS導入拡大が急速に進んでいます。15
    • BESSプロジェクトの増加を受け、エネルギー規制当局は延期されていた需要対応電力の入札を再開しました。
  • 10. 日本

    • 日本のエネルギー市場には、BESS事業者がアクセス可能な一日前市場および週次市場を含め、複数の収益源が存在します。
    • BESS事業者は、今後の入札で3時間の枠に入札可能であり、独立した施設を含む適格プロジェクトの「固定費」に相当する補助金を20年間受領できる予定です。

投資家は次の4つのポイントを抑えることで、堅牢なビジネスモデルを構築し投資機会を得ることができ、リスクに対処することが可能になります。

1. レジリエントな投資計画を策定するには?

通常バッテリー貯蔵事業では、いわゆる「スタッキング(積み重なった)」リターン、つまり複数の収益源からのリターンを積み上げることができます。これらの収益源には、需給調整市場、卸電力市場、容量市場という3つの主要市場へアクセスできます。この3つの市場は、異なる時間枠・プロセスで運営されています。

  • BESSの3つの主要市場

    需給調整市場:アンシラリーサービスには、周波数応答、ピーク緩和、バックアップに関するサポートが含まれ、系統の安定性を支えるサービスを提供することで、バッテリー事業者は収益を得られます。

    卸電力市場:バッテリー事業者は、需給バランスを取るために、需要が低い時に電力を購入して貯蔵し、需要が高い時(通常は午前・午後のピーク時)に電力を供給することで収益を得ます。需給調整市場への参加または、一日前、時間前、先物などの市場のオプションを利用するホールセール取引を通じて、収益を得ることができます。

    容量市場:バッテリー事業者は、容量市場を通じて、将来容量を提供する契約を締結することができます。高額ではないものの、確実で安定的なリターンが得られますが、一部電源・システムでは利用できません。

アンシラリーサービスである周波数応答サービスが、BESSの収益の大部分を占めています。しかし市場の飽和に伴い価格が下落し、エネルギー裁定取引市場と容量市場に移行しています。例えば、英国では2022年にはアンシラリーサービスがBESSの収益の84%を占めていましたが、2024年の現時点では20%に過ぎず16、欧州全体で同様の状況が生じています。

今後、収益を確実に最大化するには、適切な入札戦略と最適化が不可欠になるでしょう。また再生可能エネルギー事業者が急増し、見通しが一段と不透明になる中、投資価値のある地域は限られ、さらに集中すると想定されます。すでにマイナス価格やゼロ価格での取引が頻繁に発生し、エネルギー貯蔵の役割が拡大していくと考えられます。          

欧州のバッテリー貯蔵における各市場収益の積み上げ(%)(2016~24年)
  • 図の説明を表示する#図の説明を閉じる

    このグラフは、各時点におけるBESS収益源の変化を示しています。2016年には、アンシラリーサービスが収益源の91%を占めていましたが、2024年には33%に減少し、他の電力取引市場を含め別の方法での収益確保が重要であることが分かります。

2. ⾃社のバッテリー貯蔵の競争⼒を維持するには?

急速に変化する社会において、競争力を維持するためには、アジリティが必要です。これには、柔軟な考え⽅とインサイトに基づき、変化に対して迅速な対応を可能とする⼈⼯知能(AI)とデジタルツールが必要です。

EY Global Energy & Resources AI LeadのAna Dominguesは、次のように説明しています。「AIとデジタルツールを理解し、エネルギー貯蔵取引戦略を最適化するために活⽤することで、企業は投資リスクを軽減し、規制変更に対して迅速に対応し、新しい市場構造と市場変動によって⽣じる投資機会を収益化することができます」

データを使いこなし技術進化をモニタリングすることで、技術進化に合わせた判断が可能となります。例えば今後バッテリー寿命の⻑期化や、⽔素やV2G(Vehicle-to-Grid)技術などの新たな競合の出現により、今後BESSのビジネスモデルに変化が求められる可能性があります。

3. 最適なビジネスモデルや資金調達に係るストラクチャーとは?

BESSプロジェクトは資本集約型のビジネスであり、プロジェクト期間を通じて資⾦の調達・管理が必要です。投資家は、資⾦調達とオフテイク戦略をリンクさせ、プロジェクト全体の戦略を熟考する必要があります。企業等とのPPA締結により安定的な収益獲得を目指すのか、電力市場で取引し、価格変動リスクを抱えつつも高いリターンを目指すのか検討し、場合によっては長期的な不確実性を受け⼊れる必要があります。

BESSプロジェクトは非常に複雑であり、プロジェクトを成功させるためには、バリューチェーンにおいて他社と差別化された能力を持つ投資家と、その地域を十分理解するマネジメントの存在が重要となります。地域住民との良好な関係は、その地域の制度・規制やオフテイクマーケットを理解するのに役⽴つだけでなく、スムーズな開発に寄与します。

4. 複雑なサプライチェーンにおけるリスクに対処するには?

BESS投資を拡大するには、CAPEX(Capital Expenditure:設備投資)の削減が不可欠です。BESSのコストは、2030年までに約20~30%低下すると予想されています。しかし、コモディティ価格の変動とサプライチェーンのボトルネックがコスト低下分を相殺するかもしれません。例えば、変圧器建設のリードタイムが長期化することで、新しいBESSプロジェクトの系統接続が遅れる可能性があります。

多くの国・地域で資源ナショナリズムと保護主義が高まる中、バッテリーのサプライチェーンにおける中国の存在感が大きいことが、今後のプロジェクトの実現可能性に影響を及ぼす恐れがあります。それに対して、バッテリーリサイクルがリスクを低減する可能性があり、Iberdrola、Glencore、FCC Ámbitoなど、リチウムイオン電池の循環型ソリューションに取り組む企業が増えています。

  • なぜ今、BESSなのか?

    BESSは、系統運用の柔軟性と安定性の向上に資する有望な選択肢になり得ますが、BESSの需要に応えるには、大幅に投資を拡大する必要があるでしょう。ビジネスチャンスを理解し、高度にローカライズされたマーケットの見通しを見極めるためにも、投資家はすぐ行動すべきであり、それは多額の利益の獲得とサステナブルなエネルギーシステムの構築に貢献することになります。

マーケット変動の高まりはBESS投資を加速させるのか、それとも減速させるのか?

RECAI第63号(PDF)をダウンロードする RECAIの最新版を購読する(英語版のみ)

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(Chapter breaker)
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第2章

主な動向︓世界の再⽣可能エネルギーの状況

洋上風力発電のビジネスチャンスが増加したことにより、カナダ、⽇本、デンマークの順位が上昇

野⼼的な脱炭素化⽬標の達成に向け、クリーンエネルギーの推進に⼒が注がれています。こうした中、洋上⾵⼒・太陽光発電の入札において記録的な水準の参加が見られるほか、炭素回収や⽔素に関する⾰新的なプロジェクトも進行しています。

ランキング上位にはさほど変動がなかったものの、洋上⾵⼒発電におけるビジネスチャンスの増加により投資家の関⼼を引き付け、カナダ(9位)と⽇本(10位)が新たにトップ10に入りました。スペイン(12位)は、投資家が低価格化に懸念を示し、順位が4つ下がり、イタリア(13位)とギリシャ(16 位)の順位が上がりました。

合計すると世界の⼈⼝の約半数となる国々で選挙が実施される年に、よりサステナブルでクリーンなエネルギーシステムの構築を決意したアルゼンチンは順位を3つ上げ、26位となりました。これは、政府の政策がいかに投資行動に影響を及ぼし得るのか示しています。

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    上のインタラクティブな図表には、2つの独立した図表が含まれています。1つ目は、RECAIのランキング上位10カ国、2021年10月のRECAI第58号から2024年6月の第63号におけるランキングの変動を示しています。2つ目は、同期間のインデックススコアの変動を示しています。

詳細については、RECAIトップ40ランキング(PDF、英語版のみ)をダウンロードし、ランキングとスコアの算定⽅法についてはMethodologyのページでご確認ください。

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(Chapter breaker)
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第3章

標準化された指数︓

経済規模に対し、期待を上回るパフォーマンスを発揮している国・地域を紹介

RECAIでは、再⽣可能エネルギー市場の魅⼒を⽐較する上で、開発パイプラインのサイズ等の再⽣可能エネルギーへの投資機会を示すさまざまな基準を⽤いており、当然ながら経済規模の⼤きな国が有利になります。国内総⽣産(GDP)で標準化することで、経済規模に対し、期待以上のパフォーマンスを発揮している国・地域が⾒えてきます。このように指数を標準化することにより、経済規模が⽐較的⼩さい国・地域の野⼼的な取り組みが明らかになり、投資家は魅⼒的な選択肢を⾒いだすことが可能となります。

標準化RECAIのトップ10ランキング

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(Chapter breaker)
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第4章

PPA指数:活発なPPA市場で優位に立つ買い手

企業が固定・低価格でPPA契約を締結することで、活発化するマーケット

2024年当初は、企業の電⼒購⼊契約(PPA)取引は活発ではありませんでしたが、現在市場は活性化し、買い⼿が有利になっています。⼀部の地域で、PPA価格が⾼騰しましたが、現在は調整が進んでいます。経済状況は依然として厳しく、太陽光発電ほど⾵⼒発電のコストは低下していません。

このPPA指数には、PPA市場の地域的多様性が⽰されています。スペインでは、過剰な再⽣可能エネルギーの導入により価格がほぼゼロまで低下し、固定価格でPPAを締結した企業が痛⼿を被っています。しかし、順位を3つ上げて9位となったイタリアでは、市場価格は⾼⽌まり、規制に課題があるにもかかわらず、より多くの企業が契約締結を急いでいます。

今回中国が初めて対象になりました。電⼒市場の⾃由化の進展に伴い、ビジネスチャンスが拡⼤すると期待されます。

PPA指数

EYのPPA指数は、4つの観点からパラメーターを設定し、各国PPA市場の成長可能性を分析し、ランキングを決定します。データと⽅法論の詳細については、EYコーポレートPPA指標(PDF、英語版のみ)をダウンロードしてご確認ください。

  • 参照を表示する#参照を非表示にする

    1. https://www.renewableenergyworld.com/news/energy-transition-investments-hit-record-1-8-trillion-in-2023/#gref
    2. Wood, Johnny, “The world added 50% more renewable capacity last year than in 2022,” World Economic Forum, 8 February 2024, https://www.weforum.org/agenda/2024/02/renewables-energy-capacity-demand-growth/
    3. Ambrose, Jillian, “World’s renewable energy capacity grew at record pace in 2023,” The Guardian, 11 January 2024, https://www.theguardian.com/environment/2024/jan/11/worlds-renewable-energy-capacity-grew-at-record-pace-in-2023
    4. EY-Eurelectric “Grids for Speed,” May 2024, https://powersummit2024.eurelectric.org/wp-content/uploads/2024/05/Grids-for-Speed_Report.pdf.
    5. “Renewable Energy Market Update - June 2023”, International Energy Agency, June 2023, https://www.iea.org/reports/renewable-energy-market-update-june-2023,License: CC BY 4.0
    6. EY and Eurelectric, “Grids for Speed,” May 2024, https://powersummit2024.eurelectric.org/wp-content/uploads/2024/05/Grids-for-Speed_Report.pdf.
    7. IEA、Rystad Energyから入手したデータのEYによる分析
    8. Fischer, Anne, “US battery storage demand to surge within this decade, says SEIA,” PV magazine, 3 January 2024, https://www.pv-magazine.com/2024/01/03/us-battery-storage-demand-to-surge-within-this-decade-says-seia/
    9. Christensen, Erin, “California’s new building efficiency standards, mandating solar + storage, are set to go into effect on January 1, 2023,” Energy toolbase, 1 August 2022, https://www.energytoolbase.com/newsroom/blog/californias-new-building-energy-efficiency-standards-mandating-solar-storage#:~:text=community%20solar%20program-,Storage%20Mandate,B%20and%20Equation%20140.10%2DC
    10. Zhang, Xiaohan, “China’s booming energy storage: a policy-driven and highly concentrated market,” APCO, 14 November 2023, https://apcoworldwide.com/blog/chinas-booming-energy-storage-a-policy-driven-and-highly-concentrated-market/#:~:text=The%20“New%20Energy%20Storage%20Development,equipment%20for%20NTESS%20by%202030
    11. “Italy rolls out new model for BESS investment,” Timera Energy, 18 March 2024, https://timera-energy.com/blog/italy-rolls-out-new-model-for-bess-investment/
    12. Choi, Jasmine, “South Korea aims to secure 35% of the global ESS market by 2036,” Business Korea, 1 November 2023, https://www.businesskorea.co.kr/news/articleView.html?idxno=204775#google_vignette
    13. “Korea Electricity Security Policy,” International Energy Agency, 7 March 2023, https://www.iea.org/articles/korea-electricity-security-policy
    14. Kumar, Nitin, “India joins battery energy storage systems consortium for RE integration,” Business Standard, 4 December 2023, https://www.business-standard.com/india-news/india-joins-battery-energy-storage-systems-consortium-for-re-integration-123120401068_1.html
    15. Cossins-Smith, Annabel, “France to offer tax credit for renewable technology investment,” Power technology, 12 May 2023, https://www.power-technology.com/news/macron-announces-renewables-tax-credits-france/?cf-view
    16. Wood Mackenzie、LCP Delta、Modo Energyから入手したデータのEY Insightsによる分析

RECAIは年に2回発行されています。最近発行された号(PDF)は以下の通りです。

サマリー

気候目標の達成期限である2030年が迫る中、エネルギーシステムと経済全般の脱炭素化を加速させる必要があります。バッテリーエネルギー貯蔵システムの規模拡大は、系統強化・運用の安定化や系統に接続可能な分散型エネルギー源の増加などを通じて、現在障害となっている複数の問題解決につながるでしょう。成功の鍵となる4つの要点を踏まえたレジリエントなビジネスケースの構築に向けて、EYのバッテリー投資における世界トップ市場ランキングをご活用いただけます。

この記事について

執筆者
Arnaud de Giovanni

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