- 2023年2月2日、経済協力開発機構(OECD)は、第2の柱であるグローバル税源浸食防止(GloBE)ルールに関する運用指針を公表。
- 本運用指針は、(i)範囲、(ii)所得および税、(iii)保険会社に対する適用、(iv)移行措置、(v)適格国内最低トップアップ税に関して取り上げている(本アラートは(iii)保険会社に対する適用について解説している)。
- 本運用指針は、GloBEルールの解釈および運用に関する重要な追加情報を提供、グローバルミニマム課税パッケージの主要な構成要素である。
2023年2月2日、OECDは、OECD/G20税源浸食と利益移転(BEPS)で承認された第2の柱GloBEルールに関する運用指針を公表しました。この文書は、GloBEモデルルールとそれに関係するコメンタリーについて追加指針を提供するものです。本指針は、コメンタリーの追加やその他の修正という形で、今年末に公表されるコメンタリーの改正版に組み込まれる予定です。
本運用指針は、さまざまな技術的問題を対象としており、以下のセクションで構成されます。
- セクション1 – 適用範囲
- セクション2 – 所得および税
- セクション3 – 保険会社に対する適用
- セクション4 – 移行措置
- セクション5 – 適格国内最低トップアップ税
本アラートでは、セクション3の「保険会社に対する適用」について解説します。
セクション3 – 保険会社に対するGloBEルールの適用
この運用指針のセクションは、GloBEモデルルールおよび注釈コメンタリーにおいて、保険グループにとって意図しない結果を招く可能性のある規定の適用を明確化するものです。この明確化により、これらの規定が保険においてどのように適用されるべきかについて、具体的な指針が提供されます。
3.1 保険会社系の投資事業体への第7.6条の適用
GloBEモデルルール第7.6条は、投資事業体に該当しない構成事業体が、投資事業体にあたる構成事業体に対する所有持分について一定の条件を満たす場合に、課税分配方法を適用できる選択肢を定めています。この選択は、5カ年選択となります。
本運用指針では、この課税分配方法の選択を保険会社系の投資事業体にも適用しています。この選択は、構成事業体の所有者が、分配金に対して少なくとも15%のETRで課税されることが合理的に予想される場合に利用可能です。この選択により、保険会社系の投資事業体が4年以内に分配またはみなし分配を行う場合に限り、当該分配またはみなし分配に係る所得および税金は、当該保険会社系の投資事業体を所有する構成事業体(またはそれらの事業体)の所得および税金として取り扱われ、当該事業体はトップアップ税の計算対象から除外されます。しかし、過去3年間の未分配利益の所有者の持分は、4年目には保険会社系の投資事業体のレベルでトップアップ税制の対象となります。運用指針ではさらに、この選択におけるETRの測定には、分配から生じる税金と分配に関して投資事業体または保険会社系の投資事業体が負担した税金が含まれることを明確にしています。また、包摂的枠組みでは、この選択における投資事業体および保険会社系の投資事業体の取り扱いについて、当該選択に関するルールの簡素化およびさらなる明確化の検討を含む検討を行うとしています。なお、後述のように、本運用指針では、投資事業体または保険会社系の投資事業体を保有する相互保険会社が利用できる別の選択についても、さらなる明確化を図っています。
3.2 中間親事業体および部分被保有親事業体の定義から保険会社系の投資事業体を除外
GloBEモデルルールにおける中間親事業体の定義では、投資事業体の除外を含め、中間親事業体として取り扱わない事業体のカテゴリーに関する一連の除外について定めています。GlobEモデルルールにおける部分被保有親事業体の定義も同様です。これらの除外は、少数株主にとって投資事業体の税務上の中立性の維持を意図しています。
本運用指針は、中間親事業体および部分被保有親事業体の定義から保険会社系の投資事業体を明示的に除外することにより、保険会社系の投資事業体の取り扱いを投資事業体の取り扱いと一致させるものです。
3.3 制限付きTier1資本
GloBEモデルルール第3.2.10条では、構成事業体によって発行されたTier1資本(規制当局が銀行に発行を要求しているもの)を負債性金融商品と同様に取り扱うルールを定めています。
本運用指針は、この取り扱いをそれらの保険会社が発行する制限付きTier1資本商品にも拡大しています。本指針では、これらの金融商品を、保険業界に適用されるプルーデンス規制に従って構成事業体が発行する金融商品で、既定のトリガーイベントが発生した場合に株式に転換可能、もしくは元本削減され、金融危機が発生した場合の損失吸収性を助けるように設計されたその他の機能を有するもの、と定義しています。この取り扱いは、制限付きTier1資本商品からの分配による持分の変動は、GloBE所得または損失として処理されるため、当該商品は持分法会計適用による会計処理にかかわらず、実質的に負債として取り扱われることを意味しています。
3.4 保険契約者のために保有する有価証券から除外された配当金および持分損益に関連する負債
本運用指針では、保険会社が保険契約者のために株式に投資し、その投資収益から運用報酬を差し引いた金額を保険契約者に支払う義務のある特定の保険契約に関して、新しいルールを定めています。この新しいルールは、GloBEルールにおいて、このような投資収益の取り扱いと保険責任の取り扱いの間に生じる可能性のある不整合を解消するために策定されています。
本運用指針の下では、保険契約者のために保有する有価証券(例えば、ユニットリンク保険)からの除外配当金(運用報酬控除後)または除外株式損益に関連する保険積立金の変動は、GloBE所得または損失の計算において費用または控除として処理することは認められません。
3.5 短期ポートフォリオ所有持分に関する簡素化
GloBEモデルルールでは、短期ポートフォリオ所有持分(配当分配時点の保有期間が1年に満たない所有持分と定義されるもの)から支払う配当については、除外配当ルールから除かれるとしています。このような配当は、GloBE所得または損失の計算に含まれます。
短期ポートフォリオ所有持分と長期間保有するポートフォリオ所有持分の区分を保険業界が実施することは負荷が大きいという懸念に応えるため、本運用指針では、運用の利便性を考慮すべく新たな選択肢を定めました。この新しい選択肢は、保険会社だけでなく、すべての事業体が利用でき、MNEグループはすべての構成事業体について、それらの事業体のポートフォリオ所有持分から支払う配当金をGloBE所得または損失の計算に含めることを選択できます。これは5カ年選択であり、構成事業体単位で行います。特に保険会社の場合、この選択を行ったMNEグループは、保険契約者の代わりに保有する有価証券に関する保険積立金の変動を調整する必要がなくなります。
3.6保険相互会社に対する第7.5条の適用
GloBEモデルルール第7.5条では、既定の条件を満たした場合、構成事業体が投資事業体または保険会社系の投資事業体を投資の透明な選択に従ってGloBEルール上の課税上透明な事業体として取り扱い、当該事業体の財務会計上の純損益は、選択した構成事業体の所有者に配分できることを定めています。この選択を行うための条件は、(i)構成事業体所有者が、投資事業体または保険会社系の投資事業体に対する所有持分の年間価値の変動に基づき、時価評価または類似の制度により課税されること、(ii)その税率が最低税率の15%と同等またはそれ以上であることです。
保険相互会社がこの選択の条件を満たすかどうか不確実であるため、運用指針では、規制対象の保険相互会社に対する当該選択の適用について、具体的なルールを定めています。指針では、保険契約者が所有する規制対象の保険事業体である構成事業体は、投資事業体または保険会社系の投資事業体の所有持分の公正価値の年間の変動に基づく時価評価または類似の制度により課税されるとみなされることを詳しく説明しています。