経済安全保障戦略策定 ― Geoeconomics Strategy

> コンサルティング

EYでは経済安全保障の政策動向について、各国のルールや新常識の動向を収集・分析し、⽇本に影響を及ぼし得るシナリオと想定される経営リスクを常時モニタリングし、機会に転じる経営戦略の策定からビジネスモデル改革、サプライチェーン改革、サイバーセキュリティ体制の構築まで、⽇本政府や企業・業界団体などに対してさまざまな提⾔や支援を⾏っています。

EY JapanのGeoeconomics Strategyチームについて

チームにはコンサルタントのみならず、各国情勢や法規制の動向を把握するためのインテリジェンスメンバーとして研究者や⼤学教授なども配置しており、独⾃に築き上げた⼈的ネットワークに基づくインテリジェンスを収集しています。


幅広い業種・領域の専門チームと連携した知見を提供

私たちは、EY Japanの⾦融・保険、⾃動⾞、エレクトロニクスなど各業界に精通した有識者や、ファイナンス、組織・⼈事、M&A、DX、気候変動、サイバーセキュリティなどの領域におけるプロフェッショナルと連携しています。EYのストラテジックインパクトリーダーで、経済安全保障の専⾨家である國分俊史が経済安全保障の全体を俯瞰した上で、それぞれの専⾨分野での経済安全保障知⾒を提供しています。


具体的な提供事例

経済安全保障に準拠する経営改革

世界各国の経済安全保障政策の動向から経営改⾰要件を定義し、経済安全保障環境の変化を事業機会にしていくための全社戦略、事業戦略、オペレーション改⾰、サプライチェーン改⾰、⼈事制度改⾰、リスクマネジメント改⾰、ファイナンス改⾰、情報システム改⾰を⽀援しています。

  • 大国・地域は軍事のみならず経済でも自国に有利なルール形成を進めており、日本の産業競争力維持には世界動向を踏まえた対応が必須

    米中技術覇権競争に見られるように、世界の安全保障環境に影響を与え得る大国は、自国の安全保障にとって脅威となる国などに対して、軍事力にとどまらず、経済力および産業競争力を優位に保つために、独自の規制や複数国間の枠組みを構築するなどのルール形成を進めています。

    例えば米国は、2018年に国防権限法*を抜本的に見直し、中国の通信関連企業5社の製品に関して政府調達で取り扱わないよう明示しました。それ以降、対外投資規制や技術貿易管理の厳格化といった規制強化が本格化していますが、これに対抗する形で中国も、輸入品目の調達規制、輸出管理法を制定するなどしています。EUは、個人情報の保護を目的としたプラットフォーマーの規制等による域内産業の保全を図るなど、それぞれの国等の利益を確保するために、経済安全保障政策を導入しています。

    日本においても経済安全保障推進法案が2022年5月に成立し、官民双方における対応への関心が急激に高まっています。

    *National Defense Authorization Act

     

    図1:なぜ経済安保をやらなければならないかー各国の政策動向
    CUI:Controlled Unclassified Information(非格付け情報)
    NIST SP800:National Institute of Standards and Technology(米国国立標準技術研究所)Special Publications(特別刊行物)
    EAR:Export Administration Regulations(米国輸出管理規則)
    NDAA2019:National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2019(2019 年度米国防権限法)
    GDPR:General Data Protection Regulation(一般データ保護規則)
  • 規制対応という“守り” に加え、経済安保をてこに国際情勢を成長機会に転換する “攻め” のリスクマネジメントが有効

    多くの企業は、各国の経済安全保障政策に基づく方針や規制動向、国家間対立の結果として想定される国際的な事象をリスク要因として捉えています。

    法規制への遵守に限らず、各国が進める経済安全保障政策に対応しない、または対応が遅れることは、企業にとってさまざまな損害をこうむる可能性があります。その損害は、サプライチェーンの断絶などの特定事業におけるものから、人権侵害への加担などによるレピュテーション低下に起因する投資家や消費者の離反まで、さまざまです。これらリスクに対応することは、企業の“守り”のアクションとして必須です。

    他方、逆に他社に先行して各国の安全保障政策動向を捉え、業界のポジションを生かして自社が先行している経済安保対応を業界ルールへ昇華させて優位性を創造する、または顧客の安全保障リスクへの対応を念頭においた製品開発やThought Leadership型の営業活動を行うことにより、自社の顧客内プレゼンスを向上させる成長機会に転じていくことが有効です。これは経済安全保障をてこにした “攻め”のリスク対応であり、現在の延長線では描くことができない非連続な未来をリスクの視点から生み出す“真のリスクマネジメント”です。

    EYは、企業が採るべき“守り”と“攻め”のアクションを選択し実行していく支援をしています。

    図2:とるべき対応(リスク対応・機会創出)
  • 最新動向モニタリングに基づく国際情勢の未来リスクシミュレーションを支援

    EYは独自の専門家ネットワークを活用し、主要地域の経済安全保障に関する最新の動向や状況を常にモニタリングしています。

    既存の規制に加え、各国の議会やシンクタンクで議論される政策や規制化の内容やその発表から、近未来に現実化するであろう国際情勢を読み解き、企業の先行対応を支援しています。

    さらに、現在の延長線では捉えることのできない非連続な未来において発生し得る、今までの政策が軌道修正されるような、いわゆる「有事」とされる国際的なリスクイベントについても、国際関係の専門家がシミュレーションを行い、各国の政策判断が日本の企業に与える影響と、それに対する対応策を併せて検討する支援を行っています。

    図3:現在・未来の可視化
  • 現在から近未来までの国際情勢モニタリングに基づくリスクシミュレーションを支援

    EYは、現時点ですでに法制化されている各国政府や国際機関による最新の法規制やガイドライン、各国議会やシンクタンクで議論されている最新の政策動向に基づいて、 企業のバリューチェーンおよびオペレーション基盤の観点で250項目以上の経済安全保障要件を特定しており、かつその内容を常にアップデートし続けています。

    企業は、その全てに対して一律に対応するのではなく、それぞれの事業の特性に合わせた重要論点を特定し、昨今の経済安全保障情勢に対する構造的な弱みと、逆にこの情勢を機会に転換し得る強みを明確にした上で、効率的な対応を行っていくことが重要です。

    EYは、日本の企業の国際情勢に対するレジリエンスを向上させることを目的とし、個別の状況に合わせた“健康診断”的な現状のアセスメントから、対応計画の策定、実際の導入まで一気通貫で支援します。

    図4:オファリング ①アセスメント 
  • 国際情勢の未来リスクシミュレーションに基づく実践的BCP(事業継続計画)立案を支援

    安定した事業継続のためには、企業は各国個別の政策動向の延長では捉えることのできない国際的なリスクイベントに対しても、あらかじめ対応を計画しておく必要があります。

    その際重要になるのは、各国にて水面下で行われている政策協議について、質の高い一次情報を把握し、政策化される前の段階で予兆を把握し、経営へのインパクトとして解釈する経済インテリジェンスです。

    また、リスクシナリオも教科書的な事象ではなく、以下を想定し、経営としてどこから動き出すべきかを考えておく必要があります。

    ・どの国で誰がどのような発言をしたか
    ・どの機関がどのような情報を発したか
    ・どのような事故が発生したか

    このような具体的なレベルまで落とし込んだ実践的なBCPを立案していくことが求められます。

    EYは、各国政府のインテリジェンス機関やシンクタンクにおいて、安全保障分野における有事シミュレーションや外交シミュレーションに携わってきた専門家を多数擁しており、各国の歴史的な意思決定の変遷や国際関係理論等に基づいて、企業が直面する可能性のある未来のリスクシナリオを複数立案します。また、当該シナリオが発現した場合の各企業の特性に合わせた影響分析ならびに、影響を回避あるいは最小限に抑えるために取るべきアクションのロードマップ化についても支援します。

    図5:オファリング ②シナリオ分析

経済スパイ対策の強化

先端技術情報管理の流出を未然に防⽌するために、各国のインテリジェンス機関との連携は不可⽋になっています。私たちは各国のインテリジェンス機関とのネットワークや捜査⼿法の特性を踏まえ、抑⽌⼒を⾼める具体的な技術流出対策の⽴案と運⽤を⽀援しています。


サイバーセキュリティ・プログラム・マネジメント

EYのサイバーセキュリティ・プログラム・マネジメント・サービスは、組織が⽇常的に直⾯する数多くのセキュリティ上の課題の改善や解決に向けた取り組みを後押しします。リスクに基づく意思決定やサイバーセキュリティの強化、セキュリティリスク管理に関するコストの低減、全般的なサイバーセキュリティ態勢の改善をサポートします。


NIST対応⽀援

昨今、⽶国は極めて頻繁にサイバーセキュリティや情報保護に関する基準を発⾏・更新し、それらを政府調達規制や業界団体の罰則付きガイドライン、情報保護プログラムなどの政策に組み込んでいます。⽇⽶同盟下において、⽇⽶間での防衛装備品の共同運用を想定した機微技術開発やインテリジェンス共有などの際は、当然同等の⽔準が求められます。この水準は、⽶国NIST(National Institute of Standards and Technology︓国⽴標準技術研究所)が策定したSP800-171に基づくものであり、私たちは、当該水準に準拠した基準改訂支援を⾏いました。

昨今の経済安全保障に関する課題やルール形成により、⾃社が使⽤するネットワーク製品やカメラ、プリンタなどはセキュリティの担保されたものにしたいと要望する企業が増えています。

私たちはアセスメントからセキュリティ機能実装までトータルサービスを提供しています。

寄稿記事

経済安全保障に関するEY Japan の寄稿記事を紹介します。
その他の寄稿記事は、 こちらをご覧ください。
経済安全保障の強化に向けて 第1回:今なぜ経済安全保障戦略が必要なのか

米中冷戦をきっかけとした、先端技術に対する輸出規制に加え、パンデミックによって顕在化した特定国に生産を大きく依存するリスクによって、世界規模でサプライチェーンの自国回帰が動き出している。国民生活と日本企業を守るために、国家として経済安全保障戦略を構想し、能動的に対処していくことが求められている。(自由民主党機関紙「自由民主」『成長と分配の好循環を実現 新しい資本主義実行本部』第2960号(令和3年12月14日号)<5面>経済安全保障の強化に向けて【第1回】)

ゲスト編集者 國分 俊史

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 チーフ・エコノミック・セキュリティ・オフィサー/ストラテジック インパクトリーダー パートナー

多摩大学大学院 教授、多摩大学ルール形成戦略研究所 所長。ルール形成戦略の第一人者として世界を飛び回る。趣味はマインドフルネスにつながるさまざまな活動の模索。

経済安全保障の強化に向けて 第2回:技術情報管理と経済インテリジェンス機能の強化

日本は第三位の経済大国であり、特許数でも世界第三位を誇る高い技術力を有している。日本政府主導で先端技術情報を管理するルールを策定し、先端技術情報を不用意に流出させないルール形成が不可欠だ。日本企業は米中冷戦を踏まえ、特定国への生産依存や、軍事手用リスクの高い製品は取引を見送る等、経済性だけを優先しない行動が求められる。(自由民主党機関紙「自由民主」『臨時国会 補正予算の早期成立に全力』第2961号(令和3年12月21日号)<5面>経済安全保障の強化に向けて【第2回】)

ゲスト編集者 國分 俊史

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 チーフ・エコノミック・セキュリティ・オフィサー/ストラテジック インパクトリーダー パートナー

多摩大学大学院 教授、多摩大学ルール形成戦略研究所 所長。ルール形成戦略の第一人者として世界を飛び回る。趣味はマインドフルネスにつながるさまざまな活動の模索。

経済安全保障の強化に向けて 第3回:日本の大戦略にすべき「冷戦の長期化」

日本は経済大国第3位の影響力を活かし、冷戦を平和裏に終結させるべく「冷戦の長期化」を促すことを大戦略にすべきだ。冷戦の長期化が日本と世界に有益であり、日本企業は、自らに負担を課す高度な社会課題解決のルールを考案し、ルール形成を牽引しながら会社を改革していく志が求められる。(自由民主党機関紙「自由民主」『衆参本会議で代表質問 茂木幹事長「国民の期待に応えていく」』第2962号(令和3年12月28日号)<5面>経済安全保障の強化に向けて【最終回】)

ゲスト編集者 國分 俊史

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 チーフ・エコノミック・セキュリティ・オフィサー/ストラテジック インパクトリーダー パートナー

多摩大学大学院 教授、多摩大学ルール形成戦略研究所 所長。ルール形成戦略の第一人者として世界を飛び回る。趣味はマインドフルネスにつながるさまざまな活動の模索。


ストラテジック インパクト

世界は新たな秩序を競う合う時代に突入しています。EYでは、さまざまなステークホルダーとともに、日本から新たな秩序を形成する活動を展開することと並行し、新たな秩序に適合した企業経営の実践をサポートします。

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