TradeWatch 2023年 Issue 3

TradeWatch 2023年 Issue 3 ベトナム:みなし輸出入取引の一部廃止案

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EY 税理士法人

2024年2月20日
カテゴリー 間接税

2023年5月29日より、みなし輸出入(On the spot Export/Import)取引に新たな法律が適用されました。この変更は、ベトナム税関総局(Vietnam General Department of Customs、以下GDC)がベトナム財務省(Vietnam Ministry of Finance、以下MoF)に発行したオフィシャルレター2587/TCHQ-GSQLに基づくものです¹。GDCは、関連法令の内部レビューに基づき、ベトナムにおけるOn the spot取引の実施に関する見解を示し、いくつかの規制改正を提案しました。

On the spot取引

On the spot取引とは、ベトナムの売手から海外の買手への商品の販売ですが、商品は物理的に国外に出ず、ベトナムの別の当事者に引き渡され、その当事者が海外の買手から商品を購入します。商品はベトナムの売手による輸出品として扱われ、輸出税は0%(天然資源を除く)、付加価値税(VAT)は0%となります。その後、ベトナムの相手方によって再輸入されます。輸入には、輸入税、特別消費税(該当する場合)、および従価ベースで計算される輸入VATが課されます。

提案

GDCは、三者間取引(政令08/2015/ND-CP第35条1項c号)を廃止するための提案をMoFおよびその他の管轄当局に提出し、当該取引に関連する関税法の施行に関するガイダンスを示しました。

例えば、本提案では、以下のOn the spot三者間取引が廃止されます。

三者間取引

MoFはGDCの提案を検討し、提案された廃止に同意しているようです。MoFは、2023年8月25日付けでベトナム政府官房に宛てたオフィシャルレターNo.9133/BTC-TCHQ²の中で、事業や税収への潜在的な影響を含む当該問題に関する評価を示すとともに、廃止が承認された後に企業が現在のOn the spot取引に代わるものとして採用を検討するために推奨される代替取引構造をいくつか示しました。

企業を支援し、サプライチェーン急な混乱を避けるため、MoFは、外国企業が「ベトナムに拠点を持たない」という条件を厳格に満たすことを条件に、廃止が恒久的になる前の1年間の移行期間を設けることを提案しています。

変更の影響を受けないOn the spot取引

残る2つのOn the spot取引(製造委託契約と輸出加工企業〈EPE〉関連取引)は廃止される予定はありません。

EPEとは、ベトナム国内に設立・所在する会社ですが、主な事業活動は輸出向けの製造であるため、非関税地域にあるものとして扱われ、関税やVATがほとんど免除されます。

On the spot取引

代替案

前述の通り、MoFは、廃止案が承認された場合、ベトナムで事業を営む企業が検討すべき代替案をいくつか提案しました。それらの代替案には以下が含まれます。

  • 売買取引を国内企業間の取引と同様に取り扱う方法
  • 保税倉庫の利用
  • 国内企業のEPEへの転換
  • これらの提案にもかかわらず、MoFはこれらの代替案に関する具体的なガイダンスをまだ発表していないため、企業においては混乱が生じる可能性があります。

一般的な傾向と実務

  • 企業は、事業継続のための可能な選択肢を検討し、サプライチェーンの混乱を回避するために、MoFの廃止案と代替案を検討する必要があります。
  • 新たな取り決めを検討する際には、サプライチェーンの実現可能性に加え、企業は特に、新たな税、関税、通関手続きへの潜在的な影響も評価する必要があります。
    • 「保税倉庫」を利用する場合、最初の国内販売者には新規または追加の通関手続きが適用されるのか? そのような倉庫保管の費用は誰が負担するのか? 倉庫に商品はどれくらいの期間保管できるのか? といった輸出入手続上の課題を検討する必要があります。
    • 外国企業と国内の買手または荷受人との間の売買が国内売買として扱われる場合、外国企業にはベトナムでVATを登録し、VATを納付する義務があるのか? といった税務上の課題を検討する必要があります。
    • 取引のコスト構造が変化する可能性があることを考慮すると、取引に関連者が関与する場合は、取引が独立企業原則に基づくものであることを確認し、移転価格税制を順守するために、取引の移転価格の再検討が必要になる可能性があります。
    • 国内企業をEPEに転換するためには、既存のVATクレジットに対するVAT還付の可能性や、将来的に事業に下請け業者を利用する可能性など、分析すべき多くの行政手続き、潜在的な影響、潜在的なリスクが存在すると考えられます。
    • また、どのような代替案であっても、最初の国内販売者による外貨の回収の可能性など、他にも評価すべき税以外の考慮事項がある場合があります。
  • さらに、過去の期間については、企業はOn the spot三者間取引状況の適格性について内部レビューを行う必要があります。特に、調査または要請があった際に、外国企業が「ベトナムに拠点を持たない」という証拠を当局に提出することが極めて重要です。
  • 企業は、この政策変更の進捗状況を引き続き注視し、適切な行動と判断によって対応できるようにする必要があります。

巻末注

  1. 政令08/2015/ND-CP第35条の改正および補足についての見解を示すオフィシャルレター2587/TCHQ-GSQL 2023(2024年2月16日アクセス)こちらをご覧ください。(ベトナム語のみ)
  2. 政令08/2015/ND-CPを改正する政令案のオフィシャルレター9133/BTC-TCHQ 2023

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