Peppolの活用によって、取引プロセスの効率化を推進
一方、企業税務への影響はどうなのでしょうか。まず税務調査関連では、デジタル化によって調査手続が効率化されることから、企業は調査にかかる時間や負担を削減することができます。データの活用が一層進むことで、税務調査の制度も向上するでしょう。
企業の対応としては、データの正確性や信頼性を確保することが求められており、社内税務調査対応の体制拡充だけでなく、税務コンプライアンスの一層の整備も必要になるでしょう。加えて、データは企業にとっても有益な情報源となる可能性があり、学術研究目的活用による研究成果が民間でも活用できるようになるでしょう。
「事業者の税務デジタル化促進」を巡る影響では、データの活用による効果と課題が挙げられています。企業はデジタル化されたデータを活用して、経営分析や効果的な意思決定を行うことができるほか、データの蓄積や分析によって税務申告の正確性も向上するでしょう。他方で、データの保護とセキュリティが重要な課題となっており、個人情報保護法など法的な規制について企業は対応する必要があります。また、デジタルなビジネス取引を可能とするPeppolによる効果と普及の取組みについても、日本ではPeppolを標準仕様として推奨しており、普及・定着に向けた取組みを行っています。
日本版記入済み申告書とマイナポータルについては、マイナポータル経由で給与情報が納税者の申告書手続と連携し、申告データに自動で取り込まれることが可能となり、納税者は申告書作成の手間とエラーの発生を削減することができます。
企業は「事業者のデジタル化促進」が進められることで、どのような対応をすべきでしょうか。まず企業はデジタル化のメリットを最大限に活用するため、データの活用に注力する必要があります。また、セキュリティ対策や法的な規制への適合も欠かせません。また、企業にとって、Peppolの活用も重要であり、取引プロセスの効率化や相互運用性の向上を図ることができます。
企業はデジタル化に敏感に対応し、国際的な税務コンプライアンスを確保すべき
今後の展望としては、デジタル化の進展とともに税務行政DXはさらに進んでいくでしょう。今回の改定は税務行政だけでなく、企業の経営戦略全体に影響を与えるものであり、積極的な対策を講じることが求められます。
デジタル化によって税務手続の効率化や精度向上が図られ、データの活用によって税務当局との対話や税務調査業務も円滑に進められると同時に企業のDXも進んでいくでしょう。データの活用が進めば、そのクオリティーと信頼性の確保も重要な課題となります。企業はデータの正確性を保証するためにも、適切なデータ管理や分析手法を導入する必要があり、データの品質向上に向けた取組みやデータガバナンスの構築も重要になるでしょう。
企業はデジタル化によるビジネスの効率化や競争力の向上を実現することが不可欠であり、それによって生じる変化に対応するためにも、組織文化の変革も必要となります。
合わせて、国際的なデジタルトレンドとの連携も忘れてはならないでしょう。そのためにもPeppolなどの国際的なデジタルプラットフォームの活用やデータの相互運用性の向上にも取り組むことが欠かせません。デジタル化の進展に伴い、国際的な税務ルールも変化しており、企業はこれらの変化に敏感に対応し、国際的な税務コンプライアンスを確保することが求められます。
※旬刊『経理情報』2023年8月10日号に掲載された記事をリライト