22年12月にOECDからGloBEルールに関する情報申告書案が公表されました。最終的な様式は同時に実施されたパブリック・コンサルテーションの結果を踏まえて改訂が見込まれますが、GloBEルール申告実務で求められるアウトプット形式が明らかになったことで、各企業にとっても帳票定義等の実務準備に資する情報が得られました。
今回明らかにされた情報申告書案の構成は次のとおりです。
- 一般情報
- 企業構造
- 実効税率の算出とトップアップ税の算出
- トップアップ税の割り当てと帰属
このうち、実効税率の算出とトップアップ税の算出に関する箇所に詳しいデータ項目が数多く組み込まれており、必要となるであろう情報の膨大さと計算の複雑性がうかがえます。
EYのグローバルメンバーファーム間では、協働してGloBEルールの情報収集項目の定義化及び計算ロジックの構築を進めており、日本でもこの内容を踏まえたシステム開発を進めています。その上で、SharePointなどのファイル共有・情報共有システムを利用したGloBE情報収集機能の実装、管理会計・予算管理目的等で利用されるEPM(Enterprise Performance Management)のGloBEルール対応機能の拡張、税務データマネジメントツール上の標準機能としてGloBEルール機能開発など、企業のソフトウェア利用状況・目的に応じて選択可能な複数のオプション提供をスコープにしています。
システム選定に当たっては、上記情報申告書の様式に合ったデータ出力機能の有無などの個別機能に目が行きがちですが、実際にはEYを含む税理士法人、また幾つかのソフトウェアベンダーも一定のツールオプションを提供することが予想されます。その意味で、申告実務への波及効果を見据えると、システム選定に向けた調査・計画・評価の段階では、より現状の自社のケイパビリティ―把握に注力することが重要です。具体的には、調査フェーズ(現状のシステムで取得可能な情報の把握など)の結果に基づき、GloBEルール対応に向けてシンプルに新規システム導入で済むのか、もしくは法令で定められた情報を効率的に抽出するために既存システム機能の一定の見直し・データ連携を視野に入れるのかなど、税務以外の他部署にも協力やシステム上の連携を依頼すべき事項を把握することとなります。
導入フェーズでは、選定したGloBEルール対応システムの構築・実務運用に向けた細かい判断が求められます。特にGloBEルールはそれだけでも幅広いデータの収集が求められることから、GloBEルール対応に閉じたシステム導入に選択肢を狭めると、ツールは導入したものの工数低減効果が得られない可能性があります。その意味で、グループ全体の税務情報管理業務や隣接する国際税務業務のシステム化と併せて(その場合、必然的に税務データウェアハウスなどの構築が課題となります)GloBE情報申告書に対応していくことが望ましいと考えられます。