前述の情報申告フォーマット案と同じタイミングで、OECDからGloBEセーフハーバールール案も公表されました。セーフハーバールールは、一定の要件を満たした場合に手続の簡素化を認めることで、納税者の事務負担の軽減を図るものです。
公表されたガイダンスは主として、適用可能な年度を当初の2~3年程度に限定した「移行期CBCRセーフハーバー」と「恒久的セーフハーバー」について説明しており、要件に該当した場合は当該法域について発生するトップアップ税をゼロとすることとされました。
このうち「移行期CBCRセーフハーバー」の移行期(対象期間)は、「2026年12月31日以前に開始する会計年度を対象とするが、2028年6月30日以降に終了する会計年度は対象としない」とされており、3月決算の日本企業であれば2025年3月期~2027年3月期の3事業年度が対象になると考えられます。また、このセーフハーバーはその名の通り、GloBEルールの対象となる企業のほとんどが毎期作成していると考えられる国別報告書(CBCR)の数値を基礎とするように定められており、セーフハーバーの計算に伴う追加事務負担への配慮がなされています。
「移行期CBCRセーフハーバー」の求める要件には①デミニミステスト②実効税率テスト③通常利益テストの3つがあり、いずれかを満たせばセーフハーバーの求める要件を満たすことになります。まず①デミニミステストは法域の総収入が1千万ユーロ未満かつ法域の税引前利益が1百万ユーロ未満か又は損失であることを条件としており、当該法域のビジネスが小規模である場合に事務負担軽減を図る趣旨の要件となります。次に②実効税率テストは、税引前利益(損失)及び簡易対象税金費用に基づく法域の実効税率(簡易ETR)が暫定税率以上であることを条件としており、GloBEルールの当初目的から外れる税率が高い法域について事務負担軽減を図る趣旨の要件となります。
最後に③通常利益テストは、税引前利益(損失)がGloBEルールに基づく実体ベースの所得控除額以下であることを条件としており、ある程度実体を伴ったビジネスをその法域で行っている(極端な租税回避を企図していないと想定される)場合に事務負担軽減を図る趣旨の要件となります。
なお、「恒久的セーフハーバー」について、その計算枠組みは「移行期CBCRセーフハーバー」と同じ3つの要件で構成されていますが、GloBEルールにおける所得計算等と比較してどの程度簡易な計算になるかは明らかにされておらず、今後の追加ガイダンスで定められるものとされています。
最後にGloBEセーフハーバールールの留意点について、まず、セーフハーバーはGloBEルール対応の初期段階で検討すべき項目であり、また、「移行期CBCRセーフハーバー」は「適格なCBCR」の存在を前提としていることから、今後はCBCRを早期かつ適切に作成することが必要になります。
次に、「移行期CBCRセーフハーバー」はその名称からCBCRの数値だけで完結すると誤解しそうになりますが、その他にも必要となる追加情報がありますので留意が必要です。
最後に、セーフハーバーは納税者の事務負担の軽減を企図したものではあるものの、毎期対象事業年度が終わったあとに検証されるものであることから、セーフハーバーの要件を満たさない法域が出てきた場合、突然その時になってGloBEルールに基づく計算が必要ということになり混乱をきたす可能性があります。セーフハーバーの計算対応を含めた、GloBEルール計算のための事前準備が重要です。