各国が合算課税の対象とならない適格税額控除となるインセンティブ導入を検討
インセンティブにより実効税率が低減し、最低税率15%を下回るのであれば、最終親事業体において合算課税の対象、あるいは、適格国内最低追加課税として現地で合算課税の対象となります。
しかし、Pillar2モデルルールでは、適格還付税額控除(Qualified Refundable Tax Credit)は、当期税金費用から控除されている税額控除額を加算することが認められることとなっています。
適格還付税額控除は、現金または現金相当として支払われ、法律に基づき控除を受けることができる場合で、4年以内に税額控除できるものを対象としています。
これまで取得してきたインセンティブ、例えば、EUのイノベーション基金、オランダやイギリスのイノベーションボックスなどについて、今後、適格還付税額控除に該当することになるのかを検討していく必要があると考えられます。
各国では、引き続き海外直接投資を呼び込むため、適格国内最低追加課税をするのであれば、その代わりに、Pillar2の適格還付税額控除に該当するインセンティブを導入することを検討しています。これまでの各国の租税条約の恩典を活用する「条約あさり」のように、今後は、Pillar2による合算課税を避けるため、適格還付税額控除を活用する「適格優遇あさり」が行われていくものと考えられます。
これまで、シンガポールでは、IP開発のインセンティブとして、5%または10%の軽減税率のほか、製造に対するパイオニアインセンティブとしての免税措置、研究開発費に対する150%の追加控除、金融財務センターに対する8%の軽減税率などがありましたが、Pillar2のルールに照らし、今後どのような取り扱いになるのか検討していくものと考えられます。これまで利用してきたインセンティブについて、今後の活用や合算課税を回避できるのかを検討していくことが重要な課題になっていくでしょう。
(注)出典:OEDC,Stat 2016 and 2017 Corporata Tax Statistics - CbCR aggregate totals by jurisdiction