これまでにない大きな影響をもたらすGloBEルールにどう対応すべきか
新しい国際税務の基準となるBEPS2.0は、2つのPillar(柱)で構成されています。Pillar1は多国籍企業の超過利益を全く新しい課税権により各国に分配する制度であり、Pillar2は各国で最低税率(15%)の法人税負担を確保することを目的とした新しいグローバルなミニマム課税制度です。その中核がGloBEルールです。
BEPS2.0の特徴は各国が協調して新税制を導入し、各国税制の隙間を利用して合法的に節税を図ってきた多国籍企業に対応することにあります。複雑な制度が各国で段階的に導入されるため、多国籍企業は各国の制度導入状況を常にモニタリングし、適切な対応ができる体制を構築する必要があります。とりわけ、Pillar2のGloBEルールは複雑だと言えるでしょう。
このGloBEルールの追加課税額は、主に次の3つステップを経て算定されます。①GloBEルールの対象となる事業体の特定、②追加課税額の計算、③追加課税額を支払う事業体の特定と支払うべき金額の特定です。
そもそもGloBEルールは、タックスヘイブン国や低課税国がGloBEルールを導入しないことを前提に、各国での導入状況にかかわらず最低税率15%が達成されるように設計されています。①から③の各ステップにおいて、子会社や地域統括会社の所在地国の現地税制の改正、GloBEルール導入の状況に変化があれば、追加納税額が変わるだけでなく、追加納税する法人や納税先の国も変化するという複雑な税制になっています。
EUや英国、韓国などではGloBEルールを2024年1月1日以降の開始事業年度から適用する方針であり、日本でも同年4月1日以降の開始事業年度から適用することが決まっています。ただ、シンガポールなどは2025年からと各国のスタート時期はバラバラで、導入期の混乱が予想され、1年目と2年目で納税先の国が変わることも頻発しそうです。
これほど大きな規模で、各国の税制の変動がグローバルレベルで税務コンプライアンスに影響を与える事例はこれまでありませんでした。そのため、本社税務部門が各国の税制改正を集中的にモニタリングすることが必須となっています。特に変動が激しい導入期においては、外部リソースの利用も検討する必要があるでしょう。