2022年のM&Aの動向とリスク
M&Aの取引総額が5兆米ドルと過去最高を記録した昨年に引き続き、2022年もM&AはCEOにとって他の領域への投資を補完する極めて重要なツールとなるとみられます。日本企業の回答者の55%、グローバル全体においてはほぼ3分の2(59%)が今後12カ月以内に買収を実行する見込みであると答え、2021年初頭の57%とほぼ変わらない高い数字になっています。
また、今回の調査の中で⽇本企業のCEOは今後12カ⽉間で実施するM&Aについて、テクノロジー、⼈材、新たな製造ラインやスタートアップ企業の買収(37%)、ならびに事業推進⼒の向上(18%)につながる案件を優先すると答えています。
2022年に買収を行う意向を示している日本企業のCEOが最優先の投資先として挙げた国は、中国、インド、米国、シンガポール、日本となっています。また、買収を行う可能性が高いセクターの上位3分野は、自動車関連・交通、テクノロジー、先進製造業でした。
多くのCEOはいつでも投資を実行に移す準備を整えています。その一方で、地球環境の変動の影響、インフレの進行やエネルギーコストの急騰をはじめとする事業コスト全般の上昇は常に経営課題としてあるでしょう。
欧⽶諸国に⽐べてコロナ対策が遅れがちな⽇本では、海外投資が鈍化した時期もありましたが、主にアジア諸国に対し投資意欲が⾼まりつつあるようです。CEOにとってM&Aは引き続き投資活動における重要なオプションとなるでしょう。昨年空前の活況を呈したM&A市場でしたが、今後CEOの多くは過去12カ⽉に買収したアセットの統合に注⼒することになるでしょう。一方、CEOは依然として買収にも意欲的な姿勢を⽰していることから、2022年もM&Aは⾼い⽔準で推移するものと⾒込まれます。
2022年のM&A市場の最⼤のトレンドについては、クロスボーダーM&Aの増加(72%)、セクターを越えた買収の増加(70%)、アクティビストのさらなる介⼊(64%)、ならびにプライベートエクイティ(PE)による買収の増加(61%)が上位の回答となっています。
しかし、CEOが考える投資計画は、外部リスクにより予定通りに実行できなくなる可能性もあります。自社の今後の成長を脅かす最も重大なリスクとして、調査に参加した日本企業のCEOの大多数(92%)は原料価格の上昇に懸念を示しています。その他の要因として、他社との競合の激化(19%)、気候変動の影響(14%)、競合他社の技術とデータ仕様の加速(12%)が挙げられています。