9 分 2023年2月13日
岩の上に座り、オーロラを眺める女性

新たな地政学的戦略時代を迎える2023年に戦略をいかにシフトすべきか

執筆者
Courtney Rickert McCaffrey

EY Global Geostrategic Business Group Insights Leader

Geopolitical analyst and strategist. Creative methodologist. Proud feminist. Passionate about generating insights to help executives make better-informed decisions.

Oliver Jones

EY Global Business Development, Markets and Insights Leader; EY-Parthenon Global Government & Public Sector Leader

Passionate about providing outstanding support to governments and businesses. Deeply committed to excellence in public policy. Team builder. Mentor. Flexible worker. Loving husband. Father of three.

投稿者
EY Japanの窓口

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 EY Asia-Pacific ストラテジー エグゼキューション リーダー

クロスボーダーを強みとする、実績のある戦略コンサルタント&オピニオンリーダー。

9 分 2023年2月13日

各国での政策の不安定化により、企業戦略において地政学的動向の重要性が非常に⾼まっています。

2024年版「2024年に予想される地政学的動向トップ10」は、こちら

要点

  • 企業戦略において地政学的動向の重要性が今世代で最も高まっており、経営幹部は政治的な機会とリスクに対応する必要がある。
  • 各国政府が自給自足を追求する背景には地政学的緊張、経済的不確実性、環境のサステナビリティがある。
  • 企業にとって、地政学的動向は、今後もサプライチェーン戦略に影響を及ぼし、投資先の変更やコストの押し上げの要因となる可能性が⾼い。

米中の緊張が高まり、多くの中堅国が発言力を強める中、世界は⼀極集中型から多極分散型への移⾏が進み、地政学的な環境は近年ますます不安定化しています。また各国中央政府が自国経済の統制を強め、ポピュリズムとナショナリズムが台頭していることも国際機関の弱体化を招いています。こうした傾向は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで加速しており、さらにこれに追い打ちをかけたのがウクライナを巡る情勢です。

グローバル化が進む中で世界貿易が比較的自由化されていた時代は終わりを告げました。それに伴い、グローバルな経営環境も⼤きく変わり、経営判断において地政学的問題を経済⾯より重視せざるを得ない場合が増えました。EYが今後5年間の世界に関するシナリオ分析で示したように、グローバル化の中期的な⾒通しは極めて不透明となりました。

ただし、2023年の短期的な⾒通しは明らかになり、2023年の地政学的戦略環境を特徴づける包括的なテーマには2つあると考えられます。

  • 1つ⽬は、⽭盾した表現になりますが「ボラティリティの定着」です。昨今の地政学的緊張や政府の経済介⼊の傾向は持続し、ボラティリティは2022年に⽐べて⼀定の高いレベルで続く可能性が⾼いものと考えられます。
  • 2つ⽬は、重大かつ緊急な政策におけるトレードオフの拡⼤です。現在の地政学的環境は、エネルギー安全保障やインフレの進行といった深刻な課題を各国政府に突き付けていますが、容易な解決策は見当たりません。トレードオフ解消のために政府が取り得る選択肢が国により異なることも、グローバル企業の経営環境が複雑さを増す遠因になるものと思われます。

本稿では、2023 Geostrategic Outlook(PDF)に示された見解に焦点を当てます。これは、2023年に予想される地政学的動向のうち、最も発生の可能性が高く、かつ影響の⼤きいものについてのEYの⾒解です。また、こうした動向がさまざまなセクターに与える影響を掘り下げるとともに、自社の成⻑を促進するために経営幹部が取り得る5つの「後悔なき」地政学的戦略上の対応に焦点を当てています。

2023年に予想される地政学的動向トップ10

EYの地政学戦略グループ(Geostrategic Business Group)は、2023年にセクターや国・地域を問わず企業に最も重要な影響を与える得る地政学的動向トップ10を予想しました。ここで挙げられた動向の多くは、近年リーダーが対応を余儀なくされてきた地政学的なトレンドを元に引き起こされるものとみられます。

  • 上のグラフが正しく表示されていない場合は、ここをクリックしてください。2023年に予想される地政学的動向トップ10

    1. ウクライナ情勢

    ウクライナ情勢とその影響については引き続き不確実性が非常に高く、地域的・世界的に大きな政治・経済的影響を与えることになりそうです。地政学的緊張の著しい拡大によって、先進国がロシアに追加制裁を科す可能性は高く、またそれにより制裁を科す側の国の経済にも影響を及ぼすことになります。

    2. 中国と西側諸国の分断

    米国とEUは今後も引き続き、暗にまたは明確に中国をターゲットとした規制措置を新たに科す可能性が高いものとみられます。一方、中国も引き続き対内・対外政策を転換していき、西側のバリューチェーンとの結びつきを弱めていくものとみられ、結果として、経済的なつながりが徐々に薄れていくものと考えられます。

    3. 地政学的動向を左右する国・地域

    地政学的緊張が高まり、地政学的ブロック化への対応を中堅国に求める圧力が高まっていますが、中堅国の中には複数の大国との関係を維持しながら、外交上の影響力の最大化に努める国も出てくるものとみられます。今後、地政学的動向を左右し、影響力が最も大きくなるとみられる国・地域は、インド、ブラジル、トルコ、サウジアラビアなどです。

    4. 経済的自給自足の実現への努力

    各国政府は今後、戦略上のライバル国をはじめとした他国への経済的依存を減らすことを目指すものとみられます。そのためのインセンティブ政策や規制措置はセクターにより異なりますが、戦略的産業に重点が置かれるものと思われます。ニアショアリングやフレンドショアリングを促進する政策を打ち出す中で、同盟国や友好国がその対象になることもありそうです。

    5. テクノロジー分野でのブロック化の加速

    テクノロジーは今後も、地政学的競争の戦略的重点分野となり、貿易・投資に対する規制措置の拡大が図られるものと思われます。半導体は今後も、最大の重点分野となると考えられ、こうした傾向が個々に分断されたテクノロジーのブロック出現をさらに加速させるものとみられます。

    6. 喫緊の課題であるエネルギー安全保障

    各国政府は同時に複数の、時には相いれないエネルギー安全保障目標の達成に取り組んでいます。具体的には、供給の信頼性向上、家庭と企業の負担軽減、環境のサステナビリティの実現となります。こうした目標の優先順位は国により異なる場合が多く、それにより世界のエネルギー環境はさらに複雑化することが予想されます。

    7. 国・地域によるESG政策進捗状況の差

    環境・社会・ガバナンス(ESG)政策は、排出量削減目標達成、社会問題に対する監視の強化、企業による非財務報告の拡大など、短期的な課題に焦点を当てる傾向があります。今後は一部の国・地域でESG政策に対する反動が予想されることや地政学的緊張の世界的な高まりにより、ESGへの取り組みの進捗状況に差が出てくると考えられます。

    8. インフレと景気後退のパラドックス

    中央銀行による金融引き締めで景気後退が懸念される中、インフレ率は引き続き高止まりする可能性があります。これはさらなる政権交代や、政情不安と社会不安を招きかねません。また、一部新興国・地域でソブリン・デフォルトや経済危機が発生する可能性が高く、これもまた政情不安につながる恐れがあります。

    9. 食糧難と不安定化

    金利が上昇し、輸入コストが高騰する中で、物価安定という難題に直面する各国政府にとって、食糧難は引き続き大きな課題となりそうです。各国・地域の足並みをそろえた対応がなされないならば、食糧難は今後も政情不安リスクを上昇させる要因となりそうです。

    10. 中南米の左翼系政権

    中南米主要国の多くは今後、左派政権になるものとみられます。農産物やグリーンミネラルの主要な生産国であるそれらの国々は、政治的選択次第でグローバル市場の動向に影響を及ぼすことがありそうです。中南米地域の政策もまた、地域の投資やサプライチェーンの機会に影響を及ぼすことになるものと考えられます。

地政学的動向は各セクターにどのような影響を与えるか

2023 Geostrategic Outlookで示された2023年に予想される地政学的動向トップ10は、セクターや国・地域を問わず幅広い影響を企業に与えることになりそうです。また、特に短中期的には、動向トップ10の中でも特定のセクターに対してより直接的な影響を与えるものがありそうです。

以下のセクターに関する主要な地政学的戦略上テーマと事業への影響について、詳しくは該当するセクターをクリックしてください。

  • 先進製造業、モビリティ

    地政学的動向は引き続き、製造業企業の成⻑機会と戦略的選択肢に影響を与えるものとみられます。各国の政策にはサプライヤーの選択肢を狭めたり仕⼊価格を上昇させたりするなどメーカーを苦しめる面もあれば、⼀部の⼯業製品の需要を上昇させるなどメーカーを助けている面もあります。

    地政学的緊張の⾼まりが続く中、航空宇宙・防衛関連製品の需要は⾼まるものと考えられます。政府の政策は、製造業者全般が必要とするエネルギーに加え、化学品製造企業が使⽤する⽯油由来の材料に関しても、量の確保とコストに直接影響を与えることになりそうです。半導体など⾼度なテクノロジーを搭載した製品はますます「友好的」な国での使用に制限されるため、サプライヤーの選択肢は限定される傾向にあります。

    戦略的に重要な製品のメーカーは、自社業務のオフショアリング、ニアショアリング、フレンドショアリングへの圧⼒が⾼まる一方で、それに向けたインセンティブも増えるものとみられます。また、二酸化炭素(CO2)排出量や労働者の権利擁護については、政府による監視の⽬が向けられることになります。

  • 消費財・小売

    国家安全保障や国際競争⼒の⾯で、多くの政府は消費財を地政学戦略的セクターとは位置付けていません。しかし、2023年は年間を通して、地政学的動向は消費財企業に多⼤な影響を与えることになりそうです。収益機会と成⻑機会が縮小し、サプライチェーンには引き続きさまざまな形で混乱が⽣じるリスクがあります。

    各国政府がインフレと景気後退の同時進行にどのように対処するかが、マクロレベルでの成⻑機会と収益機会を左右することになるでしょう。サプライチェーンのオンショアリング、ニアショアリング、フレンドショアリングを促すインセンティブ政策は、戦略・物流上の課題をもたらす⼀⽅、輸送コストおよび炭素コストそれぞれの削減につながる可能性もあります。

    農家とアグリビジネス企業については、引き続き肥料など⽣産コストの上昇に直⾯するものとみられます。消費財・小売セクターにおけるESG政策に関しては、消費財企業にさまざまな形で影響を与えるものとみられ、収益の拡⼤や最終的なコストの削減をもたらし、また、レピュテーションといった無形資産の増加に寄与する可能性もあります。

  • エネルギー・資源

    エネルギー・資源セクターは2022年に地政学的動向の影響を特に⼤きく受けましたが、この傾向は今年も続くものとみられます。2023年に予想される地政学的動向トップ10のほとんどすべてがエネルギー企業に影響を及ぼすものとみられ、短期的にも⻑期的にも企業戦略に反映されることになりそうです。

    短期的には、地政学的動向を左右する国や地域が、世界のエネルギー需給関係で中⼼的な役割を果たすことになりそうです。ただし、⽶国や中国などの主要な国・地域での景気後退や経済成⻑鈍化のリスクが、エネルギー需要全体を抑える可能性もあると思われます。

    また、各国政府は引き続き、需要抑制に努めながら同時に一般消費者や企業の光熱費の高騰を抑えようとするといった、やや複雑なシグナルを市場に発信することになると考えられます。

    ⻑期的な動向としては、エネルギー・資源セクターでもサステナビリティ関連政策・法令など規制が強化されることにより、企業の資本コストが影響を受けるものとみられます。また、上下水道、ガスといったユーティリティ企業や電⼒会社、およびグリーンミネラルの鉱⼭事業者は今後、著しい成⻑と投資の機会に恵まれるものとみられます。

  • 金融サービス

    ⾦融機関に影響を与える地政学的動向は近年著しく拡⼤しており、この傾向は2023年も続くものとみられます。こうした影響は直接的に産業等に影響を与えるものもありますが、同時に⾦融機関や、その金融機関が事業運営する国・地域の経済に及ぼす大きな政策転換などからの間接的な影響もあります。

    中央銀⾏の⾦融引き締めは、ローン⾦利や預⾦⾦利を各⾏が提示する際に潜在的機会をもたらす⼀⽅で、経済的課題が⾦融サービスの需要全体を減退させかねません。

    経済的な制裁措置は今後も引き続き、金融機関の業務運営上のレジリエンスに多⼤な影響を及ぼすものとみられます。国際⾦融ハブの勢⼒図の変化により市場アクセスを多様化させる重要性が増しているものの、継続する経済制裁コンプライアンスに対する順守は従来以上に費⽤がかかり、困難になるものとみられます。

    主要国間の経済・⾦融関係に⻲裂が⽣じた場合には、市場ボラティリティの上昇、資産価値の低下、および資本の効率と移動性の低下といった事象が懸念されます。

    なお、エネルギー転換と脱炭素化への両取り組みに資⾦を配分することは、金融サービスセクターにとっても重要な事業機会となります。

  • 政府・公共部門

    政府・公共部門は当然のことながら、2023年に予想される地政学的動向トップ10のすべての影響を受けることになりそうです。政府が外因性のショックへの対応を余儀なくされる場合もあれば、政府⾃らが講じた対策により政治リスクや政策上の課題をもたらす場合もありそうです。

    産業政策により、一国の国際競争⼒は⾼まるかもしれませんが、各国政府は⽣産性の低下やコスト上昇といった潜在的な落とし⽳だけではなく、貿易相⼿国との緊張関係にも対峙する必要が生じるものと考えられます。

    さらに、多国間体制の弱体化は、気候変動などグローバルな課題に対する効果的な解決の妨げになりかねません。また、地政学的動向は⼈道的危機を招いたり、悪化させたりするため、各国政府は今後解決が求められるものとみられます。

    多くの国で財源が限られる中、政府が同時並行的に複数の緊急危機に対処することには⼤きな困難を伴うことが予想されます。

  • 医療・ヘルスケア

    2023年は、医薬品、医療機器、その他の医療・ヘルスケア製品を製造する企業は、サプライチェーンや業務運営面を中心に地政学的動向の多大な影響を受ける可能性が高いと思われます。医療・ヘルスケア産業は地域性が⾼く、その国独⾃の構造的な特徴があるとはいえ、部分的に地政学的動向の影響を受ける傾向にあるようです。

    企業は今後も引き続き、仕⼊価格と⽣産価格の上昇に加えて、労働コストの著しい上昇に直⾯するものとみられます。その上、医療システムにおいては政府が最⼤の保険者となることが多いため、医療機関が転嫁できる価格上昇分は抑制されることになりそうです。

    各国政府は、医薬品と医療機器のサプライチェーンの⾃給自足化を加速させるため、引き続き介⼊を続けるものとみられます。国境を超えたデータフローの管理や制限の厳格化により、臨床試験の進行に制約が及ぶ可能性もあります。

    また、医療の公平性と医療・ヘルスケアの社会的影響がますます重要視されるにつれ、レピュテーションリスクや規制コンプライアンスが問われる局面が増加すると考えられます。

  • プライベートエクイティ

    地政学的動向から受ける影響は、セクターや国・地域により異なります。そのため、プライベートエクイティ(PE)企業の場合、主に影響を受けるのはポートフォリオ企業です。PE企業は、個々のポートフォリオにあるセクター次第で、地政学的動向トップ10のいずれか、あるいはすべてから影響を受ける場合があります。

    またPE企業は、保有ポートフォリオによらず、マクロのセクターレベルでは複数の政治リスクの影響を受ける可能性があります。国境をまたぐ貿易や投資に対する規制強化により、世界各地のPE企業にとって参⼊が不可能となる市場セグメントが増える⼀⽅、オンショアリングの動きが国内市場で新規取引の機会をもたらす可能性もあります。

    クロスボーダーに活動をするPE企業は、地政学的戦略上重要視されていないセクターでの取引に注⼒していくものと思われます。その⼀⽅で、テクノロジーセクターにおける機会は制限されるかもしれません。

    経済的不確実性を受けて、PE企業は新規買収より現⾏ポートフォリオのマネジメントにより⼒を⼊れざるを得なくなるかもしれませんが、バリュエーション(企業評価額)が低下するならばPE取引が活発化する可能性もあります。政府が景気を後退させることなくインフレを安定させることに成功した市場こそが、今後最も好ましい資本・資⾦調達環境となることでしょう。

  • テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム

    国境なきデジタル時代にグローバルなテクノロジー企業の多くが成長を遂げました。その一方で、地政学的緊張の高まりと、エマージングテクノロジーの劇的な進歩により、テクノロジーセクターは地政学的競争の中心となっています。また、活動や産業が広くユビキタス化する現状を踏まえると、データも戦略的資産になったと⾔えそうです。このように見ると、政府の政策と地政学的緊張が2023年もテクノロジーセクターの事業機会を創出することになりそうです。

    半導体メーカー、人工知能(AI)企業、量子コンピューティング企業は今後も、輸出規制など規制措置の対象となるものと思われます。電気通信事業者においても、戦略的競合国と位置付けられた国のサプライヤーに対する政府の規制が強化されそうです。

    中国国内を見ると、消費者向けテクノロジーが規制により影響を受ける可能性があるのに対して、戦略的エマージングテクノロジーは政策の追い⾵を享受する可能性が⾼いと思われます。世界に⽬を転じると、経済的不確実性によりテクノロジー・ハードウェアの需要は減退するかもしれませんが、ソフトウェアの需要はより⼒強い回復を⾒せるものと考えられます。

    また、⼀部テクノロジー企業が消費するエネルギーと⽔の使⽤量に対する監視は強化されるとみられていますが、他方でテクノロジー企業には、政策のトレードオフという政府の課題に対処するソリューションの⼀⾓を担う機会もありそうです。

不確実な社会に対応した強固な戦略を構築するには

こうした地政学的動向はいずれも、グローバル企業に課題と機会の両⽅をもたらしています。地政学的に不確実な時代にあって企業が成⻑するには、地政学的動向のみならずその他の政治リスクまでをマネージし、⻑期的戦略に織り込むなど、より一層戦略的なアプローチをとる必要がありそうです。ボラティリティが定着し、政策のトレードオフが発生しそうな2023年に、自社の成⻑のために経営幹部が選択できる「後悔なき」地政学的戦略アプローチを5つ、最後にご紹介します。

1. コスト上昇にうまく対応する

ほとんどの地政学的動向は企業の経営コストを押し上げることが予想されます。サプライチェーンの再構築、クロスボーダー・オペレーティングモデルの有効性の向上、エネルギーの効率化といった対応策が、こうしたコスト上昇を抑える⼀助となるかもしれません。

2. サプライヤーエコシステムを評価する

2023年も地政学的動向のすべてがサプライチェーンに影響を及ぼす可能性は⾼く、それが現実となれば2年連続のことです。リスクを多⾯的に評価する、サプライヤーのオンショアリング/ニアショアリング/フレンドショアリングを行うことを検討する、サステナビリティやESGの⽬標達成を後押しするサプライチェーンを築く、といった対策をとり、レジリエンス強化を目指すことが有効と考えられます。

3. 「友好的」な国・地域での事業機会を模索する

産業政策の利用拡⼤と⾃給自足へのシフトの動きは、従来型のグローバルなビジネスモデルを動揺させることになりそうです。企業に最も確実に成⻑と投資の機会をもたらすのは、主に本国やその同盟国での市場開拓ではないかと考えられます。

4. ステークホルダーの優先課題に合わせて経営戦略を策定する

地政学的動向の影響により、ステークホルダーの優先課題や企業に対する期待も変化すると思われます。その先を⾒越して、顧客、従業員、投資家、政策決定者の要求を満たすような成⻑戦略を策定することが、政治リスクを軽減する⼀助となる可能性もあります。

5. シナリオ分析を実施する

2023年に予想される地政学的動向は、中期的な地政学的⾒通しの不確実性の高さを浮き彫りにしています。地政学的なリスクに対するシナリオ分析の実践は、今後訪れる激動の時代において、企業が不確実性への備えを整える上で非常に有効な手段の1つであると考えられます。

サマリー

企業は戦略、ビジネスモデル、コーポレートガバナンスに地政学的分析結果を織り込む必要があります。経営幹部が企業のDNAに地政学的分析を組み込むことにより、その企業は戦略的な意思決定を⾏う際に地政学リスクに対して、より適切に対応することができるようになると思われます。また、変動の激しい地政学的環境下においても、競合他社に対して⼤きく優位に⽴てるようになる可能性が高まるでしょう。

この記事について

執筆者
Courtney Rickert McCaffrey

EY Global Geostrategic Business Group Insights Leader

Geopolitical analyst and strategist. Creative methodologist. Proud feminist. Passionate about generating insights to help executives make better-informed decisions.

Oliver Jones

EY Global Business Development, Markets and Insights Leader; EY-Parthenon Global Government & Public Sector Leader

Passionate about providing outstanding support to governments and businesses. Deeply committed to excellence in public policy. Team builder. Mentor. Flexible worker. Loving husband. Father of three.

投稿者
EY Japanの窓口

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 EY Asia-Pacific ストラテジー エグゼキューション リーダー

クロスボーダーを強みとする、実績のある戦略コンサルタント&オピニオンリーダー。