1. ウクライナ情勢
ウクライナ情勢とその影響については引き続き不確実性が非常に高く、地域的・世界的に大きな政治・経済的影響を与えることになりそうです。地政学的緊張の著しい拡大によって、先進国がロシアに追加制裁を科す可能性は高く、またそれにより制裁を科す側の国の経済にも影響を及ぼすことになります。
2. 中国と西側諸国の分断
米国とEUは今後も引き続き、暗にまたは明確に中国をターゲットとした規制措置を新たに科す可能性が高いものとみられます。一方、中国も引き続き対内・対外政策を転換していき、西側のバリューチェーンとの結びつきを弱めていくものとみられ、結果として、経済的なつながりが徐々に薄れていくものと考えられます。
3. 地政学的動向を左右する国・地域
地政学的緊張が高まり、地政学的ブロック化への対応を中堅国に求める圧力が高まっていますが、中堅国の中には複数の大国との関係を維持しながら、外交上の影響力の最大化に努める国も出てくるものとみられます。今後、地政学的動向を左右し、影響力が最も大きくなるとみられる国・地域は、インド、ブラジル、トルコ、サウジアラビアなどです。
4. 経済的自給自足の実現への努力
各国政府は今後、戦略上のライバル国をはじめとした他国への経済的依存を減らすことを目指すものとみられます。そのためのインセンティブ政策や規制措置はセクターにより異なりますが、戦略的産業に重点が置かれるものと思われます。ニアショアリングやフレンドショアリングを促進する政策を打ち出す中で、同盟国や友好国がその対象になることもありそうです。
5. テクノロジー分野でのブロック化の加速
テクノロジーは今後も、地政学的競争の戦略的重点分野となり、貿易・投資に対する規制措置の拡大が図られるものと思われます。半導体は今後も、最大の重点分野となると考えられ、こうした傾向が個々に分断されたテクノロジーのブロック出現をさらに加速させるものとみられます。
6. 喫緊の課題であるエネルギー安全保障
各国政府は同時に複数の、時には相いれないエネルギー安全保障目標の達成に取り組んでいます。具体的には、供給の信頼性向上、家庭と企業の負担軽減、環境のサステナビリティの実現となります。こうした目標の優先順位は国により異なる場合が多く、それにより世界のエネルギー環境はさらに複雑化することが予想されます。
7. 国・地域によるESG政策進捗状況の差
環境・社会・ガバナンス(ESG)政策は、排出量削減目標達成、社会問題に対する監視の強化、企業による非財務報告の拡大など、短期的な課題に焦点を当てる傾向があります。今後は一部の国・地域でESG政策に対する反動が予想されることや地政学的緊張の世界的な高まりにより、ESGへの取り組みの進捗状況に差が出てくると考えられます。
8. インフレと景気後退のパラドックス
中央銀行による金融引き締めで景気後退が懸念される中、インフレ率は引き続き高止まりする可能性があります。これはさらなる政権交代や、政情不安と社会不安を招きかねません。また、一部新興国・地域でソブリン・デフォルトや経済危機が発生する可能性が高く、これもまた政情不安につながる恐れがあります。
9. 食糧難と不安定化
金利が上昇し、輸入コストが高騰する中で、物価安定という難題に直面する各国政府にとって、食糧難は引き続き大きな課題となりそうです。各国・地域の足並みをそろえた対応がなされないならば、食糧難は今後も政情不安リスクを上昇させる要因となりそうです。
10. 中南米の左翼系政権
中南米主要国の多くは今後、左派政権になるものとみられます。農産物やグリーンミネラルの主要な生産国であるそれらの国々は、政治的選択次第でグローバル市場の動向に影響を及ぼすことがありそうです。中南米地域の政策もまた、地域の投資やサプライチェーンの機会に影響を及ぼすことになるものと考えられます。