新型コロナウイルスの影響で多くの人々がリモートワークを余儀なくされましたが、さまざまな課題を抱えつつも、リモートワークは「意外とできる」という感覚を持った方は多いのではないでしょうか。最近は多様な働き方を求める潮流も相まって、国境を跨ぐリモートワークの動きが活発化していますが、日本本社との雇用契約の下、海外の自宅、いわゆるホームオフィスの形態で仕事をする場合には、さまざまな検討課題があります。
例えば、日本本社の従業員が配偶者の海外赴任に帯同することになり、海外からリモートワークで日本本社の仕事をするケースがありますが、帯同VISAは就労ができない可能性もあり、税務だけでなく、査証の切り替えやワークパーミットの可否の検討も必要になります。また、個人所得税については通常居住地国の税法に従い課税されることになりますが、一部の国では雇用主である日本本社がリモートワーカーのために源泉徴収義務者となり、雇用主登録などの手続きが必要になる可能性も出てきます。
なお、日本本社の従業員が海外で常習的に役務提供を行う場合には、恒久的施設(PE)の問題がありますが、2021年1月21日に経済協力開発機構(OECD)は「租税条約とCOVID-19感染拡大の影響に関する最新ガイダンス」を公表し、ホームオフィスPEの問題を取り上げています。個人が自宅(ホームオフィス)で在宅勤務をする場合には、企業の事業を行う一定の場所としてのPEを構成しないとされていますが、これはCOVID-19感染拡大に対する公衆衛生対策のための特別な事象であるため、当該対策が必要なくなった後に、個人が在宅勤務を続ける場合には、ホームオフィスは永続性を持っているとみなされる可能性があるとされています。
上記は日本との雇用契約がある場合の課題ですが、業務委託契約により海外でリモートワークを行う場合などは活動内容により代理人PEなどの検討も必要になりますので、リモートワークを制度として導入するには、目的別に整理をしてどのような活動までリモートワークを認めるかなどの事前の対策をすることが肝要です。