ここまでは店舗損益の不自然な動きの検知について解説してきました。不正の兆候を捉えるという観点からは不正のトライアングルに基づき不正の機会がある、強い動機がある、正当化しやすい環境となっているような店舗に絞り込むことで、より効果的効率的にリスクの高い異常を検知することができます。
例えば、不正の強い動機の例として、前期赤字の店舗は2期連続赤字となり、減損の兆候ありと判定される事態を回避したいという動機が考えられます。したがって、前期は赤字だが当期は黒字となった店舗で店舗損益に不自然な動きがある店舗という形で対象を絞り込むことで、よりリスクの高い異常検知が可能となります。
別の動機として固定資産簿価が大きな店舗は減損損失の影響が多くなることから不正の動機も強くなる可能性があります。そこで固定資産簿価が大きな店舗という観点からさらに絞り込むことも考えられます。
<図4>は横軸に営業利益を取り、縦軸に固定資産簿価を取り、前期損益および当期損益の組み合わせで各店舗を色分けしプロットしたものです。この事例では全店舗数は80程度ですが、原価が過少計上の方向で異常検知され、前期損益が赤字かつ当期損益が黒字の店舗(黄色い点)のみに絞り込みをすると20店舗程度となり(<図5>参照)、この中で固定資産簿価の大きな店舗という絞り込みを行うことでより深い検討を行っていく店舗を数件まで絞り込むことができます。