社員の主観を起点とした組織文化へ「直観と主観の覚醒プログラム」ラインアップ
社員の声(主観)を起点とした健全な組織文化に向けて、個々人の主観を覚醒、組織へ表出する姿勢を定着させる体系的な研修プログラムを提供しています
チーム
健全な組織文化に向けた変革の要諦
日本企業における“行き過ぎた組織の客観化”は、社会課題であるという認識を持って中長期的に取り組むことが必要です。(参考:「直観と主観の覚醒プログラム」 - 社会課題という認識を持って取り組むべき“行き過ぎた組織の客観化”)
客観化に偏重した組織文化では、過去のやり方を無条件に踏襲する、経験者の発言をうのみにする、定量データを過信し表層的な考察にとどまる等の状況が発生します。これが定常化した組織は、潜在的な可能性に気付きづらく、イノベーション創出やリスク管理が機能しないことは想像に難くないと言えます。だからこそ、個々人が主観(個人的な物の捉え方)を覚醒し、それを表出する姿勢が不可欠であり、そのためには主観の表出を受け入れる組織文化へと変化を促す必要があります。
企業という組織体の中に新たな変化をもたらすためには、組織における3.5%の人材を変えることが閾値(しきいち)になります。これはハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェス氏の、全人口のうち3.5%を動かした場合、既存システムへの変革が成功する確率が高いという研究結果に基づく「3.5%ルール」を根拠にしています。直観と主観の覚醒プログラムは1回あたり20名の参加が上限となりますが、例えば5グループでプログラムを実施した場合は計100名が受講し、受講者が100名に達すれば約3,000名規模の組織変革が実現できることを意味します。
ちなみに、1995年に一橋大学・野中郁次郎名誉教授が提唱した「知識創造理論(SECIモデル)」では、暗黙知を形式知化する過程において、個々人の主観を表出することの重要性が指摘されていました。SECIモデルの出発点である「共同化(経験を共有・共体験し、言葉を使わずに暗黙知を獲得する)」、その次の「表出化(対話や共同思考を通じて暗黙知を概念化する)」は、そもそも主観が覚醒されなければ実現できないものです。しかし、主観の重要性が十分に認識されないまま、知識を蓄積・共有するナレッジマネジメントという用語が一人歩きしたことが、理論の効果を十分に発揮できなかった要因と考えます。本プログラムは、「共同化」と「表出化」のプロセスに着眼して実践化している故に、知識創造につながるコンテンツと言えるのです。
「直観と主観の覚醒プログラム」で主観の表出を受け入れる組織文化へ
EYSCのストラテジック インパクトでは、個々人の主観を覚醒、組織へ表出する姿勢を定着させ、主観の表出を受け入れる組織文化にするための体系的なプログラムを提供しています。
本プログラムにおける特徴的なコンテンツの例をご紹介します。
「直観と主観を使いこなす土台づくり」に含まれるコンテンツ例
FBIやCIA、ニューヨーク市警察などでは、観察力や思考力の向上を目的にアート作品を活用した「知覚の技法プログラム」が継続的に開催されています。このプログラムが評価されている理由として、非言語情報であるアート作品にこそ特徴があります。アート作品には捉え方の正解や不正解が明確にあるものではなく、鑑賞者に解釈が委ねられる性質があります。そのため、知覚した非言語情報と鑑賞者の信念・価値観が融合し、その対象物への解釈が直観的に生じるため、作品に付属する説明書き以外の独創的な解釈が生まれやすいのです。
本プログラムでは、アート作品を鑑賞し、客観的な情報によらない個人的な解釈を主観として言葉にしてもらいます。個人的に好き/嫌いな点、違和感や共感する点とその理由を言語化することで主観を覚醒させ、独自の物の見方に昇華させるために必要な観察力やリフレーミング(物事の視点や枠組みを変える)力を強化する演習を繰り返します。
「主観を出し合う対話の実践」に含まれるコンテンツ例
組織へ主観を表出することの価値は、視点の多様性を組織レベルで共有できることにあります。多様な主観を表出し合うことで、新たな物の見方を見いだしたり、潜在的な可能性やリスクを発見したりするきっかけを作り出せます。しかし、客観に偏重した組織文化では、主観を言葉にすることすらできないケースが多いです。
このような組織では、年長者・経験者・主流派の声に過度に信頼を寄せる傾向があるため、そうでない人たちは本音や声を出すことを控えてしまいます。この状態を黙認し続けることは、組織として集団浅慮に陥っている可能性を容認していることになりかねません。
本プログラムでは、グループの中で公平に主観を出すことで、視点の多様性を明らかにするところから演習を始めます。例えば、インクルーシブ・マッピングの技法を用いて、特定のテーマに対する個々人の意識を物理的に距離として可視化することを促し、それぞれの立ち位置に立った理由を言葉にすることで視点の違いを受け入れる素地(そじ)を形成します。加えて、互いに主観を引き出すコミュニケーション技術を学び実践することで、個々人の違いを⽣かし、より良い成果を上げるためのインクルーシブな姿勢を実体験します。
プロジェクト事例
組織で取り組みたいテーマに応じて、最適なプログラムをオーダーメードでご提案することも可能です。以下に、ご提案したプログラムの一部をご紹介します。
- イノベーション研修として(機械メーカーA社)
A社は、グローバルに拠点を展開する大手企業として新規事業開発に取り組んできたものの、新たな事業や市場の創出に突破口を見いだせずにいました。組織全体として客観化の傾向が強いと認識されており、個々人が主観に目覚め、互いに表出し合う姿勢を定着させることに活路を見いだし、ルール形成戦略の検討と併せて「直観と主観の覚醒プログラム」を研修として同時展開しました。このプログラムは、ルール形成戦略を構成する着想力、社会課題解決型のビジネスモデルとエコシステム設計力、政策提言力、世論形成力を強化すべく、直観と主観を覚醒させるためのアート対話やアセスメントの実施、主観を起点に社会課題を思索するソーシャリー・エンゲージド・アートを用いた研修を計8回で実施しました。
【過去の関連セミナー実績】
直観と主観の覚醒によるルール形成戦略型のイノベーション力強化プログラム
※アーカイブの視聴はできないことをご了承ください
- コミュニケーション研修として(ヘルスケアB社)
B社は、専門医療・介護領域で組織を拡大し続けてきましたが、離職者の増加が目立つようになり、組織内のコミュニケーションの在り方が原因であることを特定しました。そこで、評価制度の刷新が行われるタイミングに合わせ、全社でコミュニケーション力の強化を目的とした研修を行うことになりました。
コミュニケーションを不全にしている背景に、個々人の主観を無意識に抑圧している上位者の存在がありました。そこで、もともと予定されていた評価者・被評価者研修の前に、管理職と非管理職を合同して主観の重要性を組織の共通理解とするためのアート対話、そして、テーマと自分の意識距離を可視化するインクルーシブ・マッピングの実践や主観を引き出すコミュニケーションの学習と実践を織り込んだ計4回のカスタマイズドプログラムを取り入れました。
本サービスの担当者
森 華子(Mori Hanako)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング
ストラテジック インパクト マネージャー
多摩⼤学⼤学院客員教授として、「知識創造理論に基づくアートと戦略的直観」の講義を担当。10年以上にわたるリーダーシップ開発や⼈材マネジメント全般に係るコンサルティングの経験を有する。アート思考やコーチングを切り⼝とした講師としての実績多数。国際コーチング連盟認定プロフェッショナルコーチ。
脚注
The '3.5% rule': How a small minority can change the world - BBC Future, BBC, www.bbc.com/future/article/20190513-it-only-takes-35-of-people-to-change-the-world(2024年6月6日アクセス)
ストラテジック インパクト
世界は新たな秩序を競う合う時代に突入しています。EYでは、さまざまなステークホルダーとともに、日本から新たな秩序を形成する活動を展開することと並行し、新たな秩序に適合した企業経営の実践をサポートします。