1. 水際対策の始まり
2020年1月、日本国内で初めて新型コロナウイルス感染症の感染者が確認されて以来、日本政府はさまざまな水際対策を打ち出してきました。21年1月13日、日本政府は、全世界からの外国人について、極めて限定的な特段の事情がない限り新規入国を認めないこととしました(水際対策強化に係る新たな措置(7)※1)。
2. 水際対策の見直し
他国と比較しても厳しい水際対策は、同年11月に見直され、11月8日から商用・就労目的の短期間(3カ月以下)の滞在者および長期間の滞在者の新規入国について、受入責任者※2の事業を所管する省庁(業所管省庁)から指定された誓約書および活動計画書を含む申請書式を日本国内に所在する受入責任者から当該業所管省庁へ提出し、当該業所管省庁から事前に審査を受けた場合には、「特段の事情」があるものとして認めることとなりました(水際対策強化に係る新たな措置(19)※3)(以下、水際対策19)。EY行政書士法人がEY税理士法人とともに実施したサーベイ(「海外赴任者・税務等実態調査結果 ~第2回 ビザ・水際対策・海外出張・外国籍社員の受け入れ~」)にて、水際対策19を受けた取組みを尋ねたところ、約50%の企業が「手続き方法を理解したが煩雑であるため行っていない」「知ってはいたが、手続き方法への理解が不足しているため開始していない」と回答しており※4、外国人を受け入れる企業にとっては、実質的には使い勝手の悪い仕組みでした。水際対策19は、オミクロン株の流行を受けて3週間後に停止されることとなり(水際対策強化に係る新たな措置(20)※5)、実際に水際対策19のスキームを通じて入国できた外国人はわずかでした。
3. 最新の状況
本年3月1日から、外国人の新規入国については、受入責任者の管理のもと、観光目的以外の新規入国がようやく認められることとなりました(水際対策強化に係る新たな措置(27)※6)(以下、水際対策27)。水際対策27における外国人の新規入国の流れは次のとおりです※7。
① 受入責任者は、入国前に、厚生労働省の入国者健康確認システム(ERFS)にログインの上、オンラインで事前申請し、外国人の新規入国者に関する情報等(待機場所を含む)の入力、誓約事項の同意等を行います。
② 必要事項の入力後、受付済証(PDF)が発行され、受入責任者は受付済証をダウンロードし、入国予定者に送付します。
③ 入国予定者は、各在外公館に受付済証を呈示の上、査証申請書類一式を提出します。これを受けて、各在外公館は、審査を行った後、査証を発給します。
④ 入国後、入国者に対して、MySOS(入国者健康居所確認アプリ)を通じた健康状態、位置情報確認等が行われるとともに、受入責任者は、待機施設での待機や健康状態の確認や、入国者が有症状、陽性の場合の医療機関への連絡など、必要な管理・支援を行うことになります。
入国者数の上限も、22年4月10日以降は、1日1万人となり外国人の新規入国がさらに進むことが期待されています。
また、本年6月以降については、岸田文雄首相が、「水際対策をG7並みに緩和する」と発表しています。詳細について公式な発表はありませんが、①受入責任者の管理の下、入国者の受入を行うという基本的な枠組みは変更せず、②観光目的を含む幅広い目的の入国を認め、③1日の入国者数を2万人とするといった枠組みになる可能性があります。