1. 戦略分野国内生産促進税制の創設
国として戦略的な長期投資が不可欠となる対象物資が選定され、それらの商品を生産するための機械・設備を取得した場合に、それらの商品の生産・販売量に比例して法人税額を控除する戦略分野国内生産促進税制が創設されます。具体的な対象物資は、電気自動車等(蓄電池)、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF(持続可能な航空燃料)、半導体とされ、物資ごとに単価が設定されます。措置期間を通じた控除上限は既設の建屋等を含む生産設備全体の額とされるほか、各年度の控除上限は当期の法人税額の40%(半導体については当期の法人税額の20%)となります。企業の投資の中長期的な予見可能性を高める観点から、措置期間を計画認定から10年間という極めて長期の措置とした上で、4年間(半導体は3年間)の税額控除の繰越期間が設けられます。
2. イノベーションボックス税制の創設
企業が国内で自ら研究開発を行った特許権又はAI分野のソフトウェアに係る著作権について、当該知的財産の国内への譲渡所得又は国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%の所得控除を認める制度が創設されます。令和7年4月から7年間を期限とします。所得全体から知的財産から生じる所得のみを切り出して税制優遇を行うという制度であり、わが国民間企業による無形資産投資を後押しします。税制適用の対象範囲については、状況に応じ、今後見直しが検討されます。
3. 賃上げ税制の見直し
大企業については、より高い賃上げへのインセンティブを強化するため、前年度から7%以上の賃上げをした企業は増額分の25%を法人税額から控除できることになります。女性活躍・子育て支援を後押しする企業には、一定の要件のもとで控除率の上乗せ措置が講ぜられます。大企業・中堅企業の最大控除率は、35%となります。また、中小企業の最大控除率は45%に引き上げられるとともに、赤字の場合には控除できなかった部分の5年間の繰越が可能となります。
4. 外形標準課税制度の見直し
法人事業税における外形標準課税対象法人の現行基準(資本金1億円超)は維持されますが、補充的な基準が追加されます。前事業年度に外形標準課税の対象であった法人が資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には外形標準課税の対象とすることとされます。この改正は令和7年4月1日に施行され、同日以後に開始する事業年度から適用されます。直前の駆け込み減資等を防ぐ措置も講じられます。
5. その他
- 発行者以外の第三者が継続的に保有する暗号資産については、一定の要件のもと、期末時価評価課税の対象外とされます。
- パーシャルスピンオフを適格株式分配とする制度について、見直しを行った上で適用期限が4年延長されます。
- オープンイノベーション促進税制は、適用期限が2年延長されます。
- 中小企業事業再編投資損失準備金制度が拡充されます。
- 特定税額控除規定の不適用措置(いわゆるムチ税制)について、要件が強化されます。
- 交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準について、現行の一人当たり5千円以下から1万円以下に引き上げられます。