当該スピンオフ税制においては、分割型分割に係る分割承継法人の株式または株式分配の対象となる完全子会社の株式の全てがスピンオフを行う法人の株主に分配されることが要件として定められており、スピンオフを行う法人に持分を一部残す場合には、適格組織再編に該当しないものとして取り扱われていました。
しかし、2022年11月28日に政府が決定したスタートアップ育成5カ年計画において、大企業が有する経営資源(人材、技術等)の潜在能力の発揮や大企業発のスタートアップ創出の観点から、スピンオフを行う企業に持分を一部残す場合についても課税の対象外とすることが明記され、かかる状況を踏まえ、令和5年度税制改正において、段階的に事業を切り出そうとする法人がスピンオフ税制を活用できるよう、パーシャルスピンオフ税制が創設されました。
なお、当該特例措置は令和5年度末(令和6年3月31日)までの時限措置として創設されていますが、正式な可決は今後の国会における審議を経てからであるものの、2023年12月14日に公表された令和6年度税制改正大綱において、適用期限を4年延長することが明記されています。
2. パーシャルスピンオフ税制の概要
(1) 税制適格要件
2023年4月1日~2024年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けた法人が同法の特定剰余金配当※1として行う現物分配で、その現物分配の直前において現物分配法人により発行済株式等の全部を保有されていた法人(以下、完全子法人)の株式が移転するものを認定株式分配と定義し、当該認定株式分配の直後に現物分配法人が有する完全子法人の株式が当該完全子法人の発行済株式等の20%未満となること等の<表1>の要件の全てに該当するものが適格株式分配に該当することとされています※2。
なお、2023年12月14日に公表された令和6年度税制改正大綱において、パーシャルスピンオフ税制の認定計画の公表時期を見直すとともに、計画の認定要件の見直しを行った上で、適用期限を4年延長することが明記されており、適格要件に関する具体的な改正内容について注視する必要があると考えられます。