ビッグデータ等を活用した第4次産業革命型の「サービスの開発」を対象としたもので、具体的には、①対価を得ることを目的としたサービス開発であること②新たな役務の開発であること③一定のプロセスを経たサービス開発であることが適用要件とされています。③の一定のプロセスとは、次の4つの工程をいいます。
【租税特別措置法施行令第27条の4第3項1号(改正前)】
(i)大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部若しくは主要な部分が自動化されている機器若しくは技術を用いる方法によって行われた情報の収集又はその方法によって収集された情報の取得
(ii)上記(i)の収集に係る情報又は上記(i)の取得に係る情報について、一定の法則を発見するために行われる分析として財務省令で定めるもの
(iii)上記(ii)の分析により発見された法則を利用した当該役務の設計
(iv)上記(iii)の設計に係る上記(iii)に規定する法則が予測と結果とが一致することの蓋がい然性が高いものであることその他妥当であると認められるものであること及び当該法則を利用した当該役務が当該目的に照らして適当であると認められるものであることの確認
2. 改正が行われた背景
前述のとおり、サービス開発はあらゆる業種の研究開発投資を後押しする目的で導入された経緯があります。平成29年当時は「第4次産業革命」がキーワードの1つであり、ビッグデータやAIの活用が注目されていました。また、ドローンを用いたビジネスも登場し、今後多様なサービスに発展することが期待されたところです。このような社会環境の中で、さまざまなデータが大量に収集され、その大量のデータをデータアナリストが分析することで発見される法則を用いて、今までにないサービスを開発する行為は研究開発と捉えることができるため、これを税法上の試験研究に追加しました。
昨今は、あらゆるものがインターネットにつながる、いわゆるIoTの進展により、販売した製品の利用状況をインターネット経由で把握し、追加的なサービスを提供する例も増えています。その結果、製造業とサービス業の境界は薄れつつあり、サービス開発は製造業も含むあらゆる企業に適用可能な状況になっています。
しかし、サービス開発にかかる試験研究費の税額控除はそれほど増加しなかったのが実情です。
その理由には幾つかの要因が考えられますが、その1つに前述の4つの工程の(ⅰ)にある情報収集があると考えられていました。つまり、前述の(ⅰ)では、新たなサービスの開発を目的としたビッグデータの収集または取得が必要であり、過去に収集したビッグデータはサービス開発目的で収集または取得したものではないことから研究開発税制の対象外になっていたというものです。
3. 令和5年度の改正点
令和5年度の税制改正で分析に使用するビッグデータの範囲が拡大し、サービス開発の目的で収集または取得したもののみならず、企業に蓄積されている過去のビッグデータも含まれることになりました。
デジタル化が進む今日の経済社会では、製品の使用状況から得られるデータ等、一定の法則を発見することが見込まれる量のデータがすでに企業内に存在する場合があります。このような既存データを活用した新たなサービス開発が対象に加わることで研究開発税制の適用企業が増え、研究開発投資の好循環につながることが期待されます。
【租税特別措置法施行令第27の4第6項第1号】
一 次に掲げる情報について、一定の法則を発見するために行われる分析として財務省令で定めるもの
イ 大量の情報を収集する機能を有し、その機能の全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いる方法によって収集された情報
ロ イに掲げるもののほか、当該法人が有する情報で、当該法則の発見が十分見込まれる量のもの