2. 租税特別措置の不適用措置
大企業が試験研究費の税額控除など一定の租税特別措置法に規定する税額控除を適用する場合、適用事業年度の所得が前事業年度の所得を超えているにもかかわらず、継続雇用者の給与支給額が増加せず、かつ国内設備投資額がその事業年度の償却費総額の30%を超えないときは、これらの税額控除の適用が受けられない措置が導入されています。この制限の適用を受ける大企業が次のいずれにも該当するときは、継続雇用者給与等支給額の要件が対前年度増加率0.5%以上(令和5年度以降は1.0%以上)に強化されています。
① その事業年度末の資本金が10億円以上であり、かつ、その法人の常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合
② 前事業年度の所得の金額がゼロを超える場合、または設立事業年度または合併等事業年度に該当する場合
3. 受取配当等の益金不算入から控除する負債利子
その事業年度に支払う負債の利子の額がある場合には、受取配当等の益金不算入制度の計算のうち、関連法人株式等に係る配当等の額については、その負債の利子のうち関連法人株式等に係る部分の金額を控除する必要があります。この負債利子控除について、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から関連法人株式等に係る配当等の4%相当額とされています。なお、負債利子が少ない法人もあることから、その事業年度に支払う負債利子の10%相当額を上限とすることとされています。
4. グループ通算制度の改正及び初年度対応事項
令和4年4月1日以後に開始する事業年度からグループ通算制度の適用が開始されました。ここでは、令和4年度の税制改正で手当てされた投資簿価修正に関する改正、連結納税制度を適用していた事業年度中に連結グループ内の適格合併が行われていた場合の経過措置について取り上げます。
(1) 投資簿価修正の改正
グループ通算制度では、通算法人に通算終了事由が生じた場合に通算グループを離脱する法人の株式の帳簿価額を離脱法人の税務上の簿価純資産価額に合わせるような投資簿価修正が行われます。通算グループの子法人の中には、いわゆる買収プレミアムを支払って買収した会社もあり、そのような子法人が通算グループを離脱すると買収プレミアム相当の金額が株式の帳簿価額に反映されなくなってしまうという問題がありました。この点について令和4年度の税制改正で手当てがなされ、簿価純資産価額に資産調整勘定対応金額の合計額を加算することができるようになりました。なお、当該資産調整勘定対応金額の合計額を加算するためには、離脱法人の株式を有するすべての法人がその通算終了事由が生じたときに属する事業年度の確定申告書等にその計算の明細を記載した書類を添付する必要があるため留意が必要です。また、離脱法人の株式を有するいずれかの法人が資産調整勘定対応金額の計算の基礎となる書類を保存していることも要件とされています。
(2) 連結納税グループ内の適格合併が行われていた場合の経過措置
連結納税制度からグループ通算制度に移行した法人が連結グループ内で適格合併を行っていた場合の被合併法人の株式に係る資産調整勘定対応金額も前記(1)の加算措置の対象とすることができます。ただし、この場合には、連結親法人であった法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度終了の日までに「投資簿価修正における簿価純資産価額の特例計算に関する経過措置を適用する旨の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していることが要件であるため、3月決算の法人がこの経過措置を適用する場合には、令和5年3月31日までに当該届出書を提出しておく必要があります。