多岐にわたるアイデア出しや問題点の検討にも利用可能
生成AIについては、API(ソフトウェアの一部機能を共有する仕組み)などを活用しなくても、そのままで高い能力を発揮することを実感している人は多いでしょう。当然ながら、税務部門の日常業務でも活用は可能です。例えば、GPTは、特定のテーマや問題点に関して「どのようなアプローチが考えられるのか?」といった多岐にわたるアイデア出しや提案をしてくれるので、それらを参考に具体的なアプローチを検討できます。
また、生成AIは与えられた情報やテーマに基づいて関連する情報を提供する能力もあります。このほか、会議でのアジェンダのリストアップや論点整理、議事録のほか、文章の要約、重要な情報の抽出など資料の整理と要約でも効果的に活用することができます。これを応用すれば、今後税務判断についても限定的な範囲で行うことも可能になるでしょう。
生成AIの開発手法はどんどん進化している
では、税務業務に特化したGPT開発にはどのような手法があるのでしょうか。まず公的文書など外部知識を参照するときに利用できるファインチューニング(追加学習)という手法があり、これによってGPTが事前学習していないデータでも応答が可能になります。
特定のビジネス目的でGPTを開発する場合は、その出力形式を制御する必要がありますが、これを解決するためにプロンプトエンジニアリングを利用することが考えられます。これはプロンプトの入力時に入力・出力の例を記述することで、GPTに望ましい出力(形式)を生成させることが可能となります。
ファインチューニングとは別に、データベースから外部知識を文章検索して関連データを抽出する文章生成(RAG)という手法があります。これはファインチューニングと比べ、精度が高く、類似度検索という技術を用いることで、より効率的に外部知識を参照できる点が特徴となっています。
また、社内向けにチャットボットを活用している企業は多いですが、税務領域でも事業部や子会社が担っていた税務相談業務を本社税務部門に集約し、税務相談にチャットボットを利用しているケースもあります。
さらに、印紙税法上の課税文書に該当するかどうかを判断するには、文書内容の読解が必要となります。これまでは経理・税務担当者が判定し、実質判断の暗黙知も蓄積されてきましたが、課税当局による不備の指摘も多い領域でした。しかし、これもGPTを活用することで、作業の効率化に加え、判定作業の標準化、可視化が可能となります。