しかし、日本におけるPEファンドの活動は引き続き活発になるのではないかと想定しています。背景として、まず、日本にはコングロマリット企業が多く、事業売却、カーブアウトを行う長期的トレンドがあるということです。前述した企業の他に複数事業を有する大企業は枚挙にいとまがありません。また、日本国内での上場会社数約3,900社のうち、200社を超える会社が上場子会社です。上場子会社は、親会社と少数株主の利益相反、子会社利益のグループ外流出などの問題点が指摘されています。改訂コーポレートガバナンス・コードによるグループ内の利益相反を避けるためにガバナンスの在り方の基準が厳しくなり、東京証券取引所の市場区分の再編により設けられたガバナンス項目(流動株式比率要件)も上場子会社見直しの機運を高めています。
また、日本においてもアクティビスト活動が活発化しつつあり、アクティビストから企業に対して事業ポートフォリオの見直しに関する提案を行う事例が増えています。経済産業省が2019年に実施した上場企業へのアンケートでは、過去3年間にアクティビストからアプローチのあった企業数は回答数の3割を超えていました。取締役は会社に対して善管注意義務を負っていますので、アクティビストからの合理的な提案に対しては真摯(し)に対応することが求められています。直近でもセブン&アイ・ホールディングスがそごう・西武をフォートレス・インベストメント・グループに売却することを発表しましたが、背景の1つにはアクティビストの提案があったといわれています。また、オリンパスによるデジタルカメラなどを手掛ける映像事業の日本産業パートナーズへの売却や今年8月に発表された祖業である科学事業のBain Capitalへの売却は、アクティビストが株主および取締役として関与してからの事業ポートフォリオ変革の動きです。
さらに、日本固有の足許の要因として、低金利と大幅な円安を挙げることができます。特に外資系PEファンドからすると新規投資の際のコストが下がっていると考えることができます。