- 下水道管路に特化した劣化予測のアルゴリズムの構築を完了。
- AI活用予測で、劣化予測下水道管路は従来より約80%減少、交換優先順付が容易に。
- 劣化診断精度の向上により管路のテレビカメラ調査費用の約75%が削減できる可能性が示唆された。
EY新日本有限責任監査法人(東京都千代田区、理事長:片倉正美、以下「EY新日本」)およびEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:近藤聡、「以下EYSC」)、Fracta(米国カリフォルニア州、CEO:岡田英樹)、Fracta Japan株式会社(東京都渋谷区、代表取締役:伊藤陽子、以下「Fracta Japan」)の4社は、国土交通省の令和3年度下水道応用研究に採択された「AIによる下水道管路破損予測、財政効果の見える化ならびにストックマネジメント、アセットマネジメントの高度化に関する調査業務」を共同実施し、成果がまとまりましたのでお知らせします。
日本の下水道施設では、下水道管の老朽化に伴う陥没事故の発生や、将来の更新費用増大が課題となっており、劣化状況の把握や管路更新計画の立案、投資費用の削減(いわゆるストックマネジメント)が急務となっています。
本業務では滋賀県大津市企業局の協力を得て、日本初となるAI(人工知能)/ 機械学習を活用した下水道管の劣化予測技術の確立を目指すとともに、今後の更新費用が財政に与える影響の見える化を検討しました。
研究結果の要旨
- 上水道分野で実績のあるAIアルゴリズムを下水道分野に適用し、下水道に特化した管路劣化予測AIアルゴリズムを確立した。
- モデル都市(大津市)における下水道管路の劣化予測精度について、AIを用いた劣化予測は、直近2年間に発生した腐食について、従来手法の半分以下の調査で発見できることが明らかとなった。
- 従来型の布設年度からの経過年数のみを変数とした管路劣化予測式を用いた場合、50年間で213キロメートルのコンクリート管について更新が必要と推計されていたが、今回のAIによる予測手法では、50年間で劣化すると予測されたコンクリート管は累計45 キロメートルとなり、従来手法よりも劣化予定の管路は大幅に減少した。これにより、交換優先順付が容易になることがわかった。
- 本技術による財政効果の見える化を実施した。その結果、劣化診断精度の向上により、ストックマネジメントの維持管理費用(管路のテレビカメラ調査費用)の約75%が削減できる可能性が示唆された。
EY Japan インフラストラクチャーアドバイザリー担当 アソシエートパートナー 福田 健一郎(ふくだ けんいちろう)のコメント:
「人口減少下で老朽化していくライフラインを効率的に維持・更新していくためには、先端テクノロジーを最大限活用することが不可欠です。今回、EYでは、我々が培ってきた公共インフラセクターでの知見や財務会計に関する専門性を生かしながら、テクノロジーを保有するスタートアップであるFractaと連携して国内初となる下水道管の劣化予測実証に取り組み、効率的な事業実施につながりうる結果を得ることができました。EYでは、今後もインフラセクターでのイノベーション創出に向けた多様な取組みを推進してまいります」
本業務のFractaの責任者であるFracta Manager of Business Development 前方 大輔(まえかた だいすけ)のコメント:
「実証を進める中で水道と下水道は似て非なるものであることを痛感しました。その中でも水道事業での経験を生かし、過去の劣化・異常に関するデータと環境ビッグデータをAIが解析することによって、大津市様における下水道管きょの劣化状況を把握することができました。Fractaでは、水道事業で既に複数の自治体で活用頂いているAI劣化診断を下水道分野でも実際の製品として速やかにご提供できるように、準備を加速したいと考えています」
EY及びFractaでは、本業務が、全国的に施設の老朽化が進む下水道事業の維持と住民にとって不可欠な公共サービスの持続に向けた端緒となるよう引き続き努めてまいります。