1. バイオベンチャーの財務諸表の特徴(<図1>参照)
(1) 収益認識
バイオベンチャー企業における主たる収益項目には、①公的機関からの助成金収入、②他社からの受託研究収入、③製薬会社との提携に係る収入(導出、ライセンスアウトと呼ぶこともある)などが挙げられます。収益のうち、「顧客との契約から生じる収益」は収益認識に関する会計基準(以下、収益認識基準)を適用し、「その他の収益」は企業会計原則の実現主義に基づき会計処理します。
(2) 研究開発費
バイオベンチャー企業における主たる費用項目は研究開発費です。研究開発費は発生時に費用処理します(研究開発費等に係る会計基準三)。これは、自社で研究開発を行う他、他社に研究開発を委託する場合に発生する費用も同様となります。
(3) 固定資産の減損
バイオベンチャー企業は固定資産を多額に保有しない傾向がありますが、汎用(はんよう)的な実験施設・器具などの固定資産を保有しているケースもあります。一般的に事業収益の獲得に比べて研究開発費の支出が先行するため、資産又は資産グループについて減損の兆候ありと判断される場合が多いと考えられます。
(4) 損益計算書の表示
他業種の一般事業会社の場合、損益計算書上、売上と売上原価の差額を売上総利益とし、そこから販売費及び一般管理費を差し引いて営業利益を算定します。しかし、バイオベンチャー企業の場合には、実務上、「事業収益」、「事業費用」といった括り方で損益計算書の表示を行う事例も見られます。
(5) 継続企業の前提に関する注記
事業収益の獲得に比べて研究開発費の支出が先行することにより、「継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュ・フローのマイナス」等の事実がある場合、資金残高等の状況を踏まえて継続企業の前提の注記の要否の慎重に検討する必要があります。