外貨建有価証券等の換算と処理
情報センサー2023年2月号 企業会計ナビダイジェスト
EY新日本有限責任監査法人 企業会計ナビチーム 公認会計士 久保 慎悟
大手食品製造業(IFRS)の監査業務、大手投資会社(IFRS)などにおける連結決算支援に従事しつつ、法人ウェブサイト(企業会計ナビ)での記事執筆、セミナー講師、書籍の執筆、雑誌への寄稿を行っている。主な著書(共著)に『M&A・組織再編会計で誤りやすいケース35』(中央経済社)などがある。
今回は「解説シリーズ『外貨建取引』第3回:外貨建有価証券等の換算と処理」の一部を編集し、紹介します。
Ⅰ はじめに
外貨建有価証券は、決算時において保有目的の分類や種類等に基づき異なる換算方法や処理を求められます。このため、それぞれに求められる処理等を適切に把握することが重要となります。
本稿では、外貨建有価証券等の決算時のポイントを整理します。なお、ヘッジ会計に関しては、解説の記載から除いています。
Ⅱ 外貨建有価証券の換算方法と換算差額の処理
外貨建有価証券の換算方法と換算差額の処理は、保有目的に応じて<表1>のようになります(会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下、外貨実務指針)第12項~第17項)。
Ⅲ 評価損の換算方法と処理
1. 著しい下落または低下の判断
外貨建有価証券(売買目的有価証券以外で保有しているもの)について、時価の著しい下落または実質価額の著しい低下の事実が生じている場合には、評価額の引下げが必要となります(外貨実務指針第18項、第19項)。引下げの必要性認識・測定と判断は、時価の有無に応じて<表2>のようになります。
2. 評価額の引下げ
評価額の引下げが必要と判断された場合、引下げ後の外貨建有価証券の換算方法と換算差額の処理方法は<表3>の通りです(外貨実務指針第18項、第19項)。
Ⅳ 外貨建保有転換社債型新株予約権付社債および外貨建保有転換社債の決算時の会計処理
外貨建保有転換社債型新株予約権付社債および外貨建保有転換社債の決算時の円換算は、保有目的等に応じて<表4>のように行います(外貨実務指針第19-9項、第21項)。なお、子会社または関連会社により発行されたものは、転換請求の可能性に応じて処理が異なります。
Ⅴ 外貨建保有新株予約権の決算時の会計処理
外貨建保有新株予約権は、保有目的区分に応じて売買目的有価証券またはその他有価証券として会計処理するとされており、時価評価されるため、決算時の為替相場により換算されます(外貨実務指針第19-5項)。
Ⅵ おわりに
近年、為替相場が大きく変動しており、外貨建有価証券等の換算が財務諸表に重要な影響を及ぼしている場合があります。外貨建有価証券等の換算および処理方法は、保有目的や種類等により異なりますので、決算を前にあらためて確認することをお勧めします。