1. SECRの概要
エネルギー消費量および二酸化炭素排出量に関する情報開示(SECR)のフレームワークは2013年に施行され、上場企業に対して、Strategic Report(戦略報告書)での年間排出量の報告が求められました。18年の改正では大規模非上場企業および一定基準を満たすLLPs(有限責任パートナーシップ)に対し※1、英国でのエネルギー使用と関連する年間温室効果ガス排出量、エネルギー効率化活動等について、アニュアルレポートでの報告を義務付けました。
2. TCFDの概要
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のフレームワークはガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つのテーマ領域をカバーし、17年に公表されました。プレミアム上場企業は21年4月6日以降の会計期間、一定基準を満たすその他の企業は22年4月6日以降の会計期間から適用されます※2。
3. TPTの概要
英国金融行為規制機構(FCA)は22年1月に上場企業およびアセットマネージャー等を対象にTCFDに沿った開示の一環として、その移行計画を開示するための規則を導入しました。英国の財務省(HM Treasury)は22年4月に移行計画タスクフォース(TPT)を立ち上げ、企業に対して「ゴールドスタンダード」な移行計画のガイダンスを提供しました。今後2年間でFCAはTPTの成果を利用し、上場企業と金融会社の将来の開示規則を強化する予定です。
4. SDRの概要
サステナビリティ開示要件(SDR)は21年7月に発表され、初めて既存のサステナビリティ関連の開示要件を1つのフレームワークに統合する予定となっています。気候変動だけではなく、他のサステナビリティ関連の財務情報をカバーし、英国グリーンタクソノミー※3に関連する要件も統合予定です。ISSB基準がSDRフレームワークの主要な構成要素となります。22年10月に公表されたSDRの提案書には顧客が投資商品を容易に理解できるように投資を区分する新たなサステナビリティ投資ラベリング制度の概念も含まれています。背景としては透明性のある情報を開示することでグリーンウォッシュ※4を防ぐことが目的となります。現状、FCA規制業種およびサステナビリティ関連金融商品を扱う機関が対象とされています。
5. ISSBの概要
国際的に非財務情報開示基準が乱立する中、IFRS財団によって、21年11月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が設立されました。ISSBを各国が採用することで、サステナビリティ報告の開示要請の統一が図られることが期待されます。今後、ISSBは、サステナビリティに関連するリスクと機会が企業価値に与える影響の評価が可能となるように、広範な開示基準を開発する予定です。ISSB基準は、グローバルベースで軸となることを目的としており、各法域で追加の要件を加えることで、各法域の利害関係者のニーズに応えることが期待されています。
6. TNFDの概要
21年6月に、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が立ち上がりました。TNFDは財務およびビジネス上の意思決定において自然を考慮に入れる必要性の認知度が高まったことを受け、自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する目的で設立された国際的な組織です。23年9月に予定されているフレームワークのリリースを前にした最終ドラフトが23年3月に発表されています。