グローバル企業から投資先として選ばれる背景として、ハンガリーの投資先としての魅力は次のようなものが挙げられます。
1. EU加盟国への良好なアクセス
ハンガリーは、04年にEU、07年にシェンゲン協定にそれぞれ加盟しており、EU諸国への自由なアクセスが確保されています(輸出入の7割以上がEU諸国向け)。特に最大貿易相手国であるドイツへは、ポーランド、チェコなどの隣国に準ずるアクセスとなっており、陸路で約900Km(約9時間)となっています。
2. 相対的に低い賃金水準と良質な労働力
ハンガリーの平均賃金は、経済成長や最低賃金の引き上げなどに伴って年々上昇しているものの、Eurostat(欧州連合統計局)の21年時点のデータによれば10.4ユーロ/時間と、EU27カ国平均29.1ユーロ/時間の3分の1程度の水準にとどまっています。
また、ハンガリーの大学・短大進学率は日本とおおむね同水準の約60%と高水準となっています。経済、工業技術、医療を専攻する学生が最も多く、近年ではIT技術を専攻する学生も年々増加しています。
このように質の高い労働力が相対的に安価に活用できる環境がハンガリーには整っています。
3. 積極的な投資誘致策
前述の通り、ハンガリーは国外からの直接投資を経済成長の牽引役と位置付けており、HIPA(ハンガリー投資促進庁)は、投資に対する助成、税額控除に積極的な姿勢を維持しています。投資額に対する投資補助(現金助成と税額控除の合計)の最大限度は、地域の開発度合いに応じて30%~50%の上限が設けられていますが、22年から地域・上限に大幅な見直しが行われ、より投資補助を受けやすい制度となりました。
4. 魅力的な税制
ハンガリーの法人税率は9%となっており、課税標準が異なる地方事業税を考慮した場合でも、課税所得に対する実質税率は製造業において15%程度となることが多く、近隣国、日本と比較して低い税率となっています。加えて、前記で挙げた投資優遇による税額控除等の恩恵も受けられることから、税務面でのメリットを感じてハンガリーへの投資を決定される企業も多くなっています(<表1>参照)。