22年の税制改正では移転価格諸手続きの変更が含まれていました。税制改正は対象年度が22年であるため、実際には23年より22年度分を対象とした移転価格分析ならびに諸手続に適用されます。
移転価格文書には、以前から発生していた国内法人税納税のサポート資料として準備を行う移転価格文書(納税者が保管する文書)とBEPS対応のローカルファイル(メキシコ税務当局宛申告文書)が存在しており、23年以降もこの2文書が併存する一方で、期限は双方ともに5月15日になります。期限が同じで文書も重複する内容が多く、規定では2文書が別である必要性を記載していないため、実務では2文書を1文書にまとめる納税者も近時では見られます※1。
23年から発行する(22年度対象の)移転価格文書には、国外関連者間取引の分析結果のみならず、国内関連者間取引も検証範囲として含まれます。また、移転価格分析手法にも変更があります。さらに機能リスク分析を行う場合には、今後納税者のみならず、関連者の機能リスク分析も文書に含めなければなりません。
この他、移転価格(主に取引単位営業利益法)の検証年は、従来、納税者1年の利益率に対して比較対象会社の3年平均の利益率との比較が認められていましたが、23年より、納税者1年の利益率に対して比較対象会社の1年の利益率との比較のみが認められます。例外として、ビジネスサイクルもしくは製品ライフサイクルが複数年であることが証明できた場合にのみ、比較対象会社の利益率を2年以上の平均値により比較検証として使用できます。また、比較対象レンジに関しても、従来は四分位法※2以外の手法を認めるケースもありましたが、22年税制改正以降は四分位法のみとなりました。