ISSBが設定する基準はIFRSサステナビリティ開示基準(IFRS Sustainability Disclosure Standards)とされ、IASBの設定基準はIFRS会計基準(IFRS Accounting Standards)と呼ばれることになります。
財団は、新審議会の基盤作りのため、技術的準備ワーキング・グループ(以下、TRWG)※1(<図1>参照)を設立しています。TRWGは、これまでの活動成果として、以下二つの基準原案を公表しました。これらは、サステナビリティ情報の開示基準設定主体である5団体の共同文書※2を基に、金融安定理事会による気候関連財務情報開示に関するタスクフォース(以下、TCFD)やIFRS会計基準(IAS第1号「財務諸表の表示」等)の内容を考慮して作成されています。
1. サステナビリティ関連財務情報の開示項目に対する全般的な要求事項
この一般原則は、主要な利用者(投資者、融資者やその他債権者)の企業価値評価に影響を与える重要な(material)サステナビリティ関連財務情報の開示を企業に要求することを目的としています。また、サステナビリティ関連財務情報を企業の一般目的財務報告の一部として開示することを前提とし、一般目的財務報告における情報間の結合性(connectivity)※3の向上を目指しています。主な特徴として、以下の4点を規定しています。
① 完全、中立かつ正確な企業の重要なサステナビリティに関連するリスク及び機会についての説明の開示
② 重要性(materiality)の定義(IFRS会計基準の概念フレームワークと整合し、企業価値にフォーカス)
③ TCFDが推奨する四つの開示項目(ガバナンス、戦略、リスク管理及び指標と目標)に基づく重要なサステナビリティに関連するリスク及び機会の情報開示を求める整合的なアプローチ
④ 比較可能かつ結合した(connected)※3情報提供のための追加の要求事項やガイダンス
2. 気候関連開示要求事項
全般的な開示要求事項と同様に、TCFDが推奨する四つの開示項目を中心に構成されています。経営者は、多様な気候変動関連シナリオに基づく分析を行い、企業戦略のレジリエンスについて説明する必要があります。また、気候変動に関連したリスク及び機会の財務への影響について、可能な範囲で定量的に開示することが求められています。さらに、付録では、11セクターの68の業種について、業種別の開示要求事項及び指標が定められています。
今後、ISSBはこの二つの基準原案に基づいて公開草案を策定し、22年第1四半期(1月〜3月)までに公開することとしています。また、最終基準の公表は、22年下半期(7月〜12月)としています。
なお、TRWGはテーマ別及び業種別開示要求事項の策定をISSBに提案しています。気候変動以外の優先すべきテーマは今後コンサルテーションによって決定される予定です(<図2>参照)。