モビリティ(海外赴任)コラム:個人のクロスボーダー課税 ―海外赴任中の個人所得―

今回は海外赴任者の赴任時の税金の留意点について解説したいと思います。課税を考える際には、対象者が居住者か非居住者かを判断する必要があります。海外赴任などで1年以上日本を離れることが決まっている場合には、出国した日の翌日から日本の非居住者となります。

では、非居住者になるとどのような課税が発生するのでしょうか。

非居住者については国内源泉所得が課税されることになります。給与についてはどこで働いたかで源泉を考えるので、海外赴任中の給与は国外源泉所得ということになります。

では、日本にある不動産、株式などの金融資産はどうなるでしょうか。不動産については、不動産の所在地に源泉がありますので、日本にある不動産は国内源泉所得として、非居住者であっても課税されることになります。株式にかかる譲渡所得については、非居住者の場合には通常課税されないことになりますが、日本に一時帰国中に譲渡した場合や適格ストックオプションや株の買い集めなど一定の譲渡をした場合ついては、日本で課税される可能性がありますので、留意が必要です。

日本での個人的な所得について、赴任先国でもその国の税法に従い課税される可能性があります。例えば、アメリカでは、居住者の場合には全世界所得が課税されるので、必ず報告する必要があります。また国によっては海外資産の報告義務を課しているケースや、スイスなど資産に対して税金を課す国があるため、赴任先での税金の取扱いの把握は今後ますます重要になってくると思われます。

国税庁によると、海外の税務当局と金融口座情報を交換するCRS(共通報告基準)により、日本の税務当局は2021年1月時点で日本の個人や法人が84カ国・地域に保有する口座情報を約219万件入手し、日本からは69カ国・地域に約64万件の情報を提供しています。国際的な税逃れの監視や税務調査に、CRSによる情報を活用する案件も増えており、日本では実際に税務調査で課税された事例も出てきています。不測の事態が生じないように、今一度日本、海外の税務の取扱いの整理をされることをお勧めします。

お問い合わせ先

kumiko.kawai@jp.ey.com 川井 久美子 パートナー

akiko.hayama@jp.ey.com 羽山 明子 ディレクター

※所属・役職は記事公開当時のものです

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