平成26年3月出荷分について8%の消費税の支払を受けた場合の会計・税務処理 ~買手の検収基準に基づき支払を受ける場合の対応~

2014年5月1日
カテゴリー 太田達也の視点

公認会計士 太田 達也

4月以降の仕入について5%で請求された場合の取扱い

国税庁から平成26年1月に公表された「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」の問1においては、取引の相手X社が商品Aを平成26年3月31日に出荷し課税売上に係る消費税額を旧税率により計算する場合、その商品をY社が平成26年4月1日に仕入れた場合、X社からの請求書に旧税率の記載がある場合には、Y社は課税仕入に係る消費税額を旧税率により計算すべきとの内容が示されました。

経過措置の適用を受けない取引については、資産の譲渡等の時期により適用される税率を判断するのであって、Y社は自社の継続適用している仕入計上基準に基づいて仕入計上しており、その仕入の時期を平成26年4月1日と認識している以上、課税仕入れに係る消費税額を新税率で計算することは、法令上問題とまではいえないと思われます。その場合の計算は、次のとおりとなります。

X社(売手)
 税込みの収受金額(5%込みの金額) × 100/105 = 課税標準
 課税標準 × 4% = 消費税額

Y社(買手)
 税込みの支払金額(5%込みの金額) × 6.3/108 = 控除税額
 (注)消費税6.3%、地方消費税1.7%

しかし、国税庁から、Q&Aとはいえ、上記(最初の段落)の見解が示された以上、X社からの請求書に記載された旧税率で控除税額を計算する方法によることが問題のない実務対応であると考えられます。

3月出荷分について8%の消費税の支払を受けた場合の会計・税務対応

買手の検収基準により、売手が請求書の発行を行うケースがあります。買手が請求書を作成し、売手がそれに記名押印するようなケースもありますが、むしろ請求書のやり取りなしに買手の検収基準に基づくシステムにより、売手に対する支払を行うケースが少なくないようです。

取引関係上買手の立場が優位である場合が多く、売手が3月売上(出荷)、買手が4月仕入(検収)というケースにおいて、買手の(検収基準に基づく)システムにより8%の消費税込みで代金を支払うことについては、売手は受け入れざるを得ないようです。

売手(3月決算会社であると仮定します)の側においては平成26年3月31日までの出荷分については、平成26年3月期の売上として認識し、消費税法上も平成26年3月期の課税売上として認識します。ところが、買手が自社のシステムに基づいて平成26年4月の仕入であると認識し、8%の消費税込みで仕入代金の支払をしたときの実務対応が問題となります。

以下、買手と売手に分けてそれぞれの会計・税務処理を解説します(もちろんこのケースでは、売手の処理が論点になります)。なお、買手および売手ともに、3月決算会社であるとします。

買手の処理

買手(3月決算会社であるとするとします)は、平成26年4月1日以後の仕入として認識していますので、平成27年3月期の課税仕入として認識します。8%の消費税込みで仕入代金を支払いますので、次のように課税仕入に係る消費税額を計算することになります。(本体価格を100とします。)

108 × 6.3/108 = 6.3(控除税額)

(平成27年3月期)

(平成27年3月期)

売手の処理

売手は、平成26年3月期の課税売上として認識するにもかかわらず、買手から8%の消費税込みの代金を受け取ることになります。この場合の対処法として、次の二つの方法が考えられます。

(1) 対価の返還として処理する方法

売手は、平成26年3月期において5%で課税売上に係る消費税額を計算し、平成26年3月期の消費税の申告をしておいて、翌期に8%の消費税等を受け取ったときは、対価の返還があつたものとして処理をすることが考えられます。(本体価格を100とします。)

(平成26年3月期)

(平成26年3月期)

(平成27年3月期)

(平成27年3月期)
(平成27年3月期)仕訳表2

買手は平成27年3月期において、この仕入につき課税仕入に係る消費税額を8%で計算し、8%相当額の仕入税額控除を行いますので、売手においても結果的に8%相当額の消費税額を納付することとなるこの処理は、国税庁から公表された「消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A」(平成26年1月)の取扱いと整合することとなり、問題がないものと考えられます。

(2) 仮受金として処理する方法

買手において4月1日以後に検収がされることが把握でき、8%で支払を受けることが確実である場合には、次の処理も考えられます。

(平成26年3月期)

(平成26年3月期)

(平成27年3月期)

(平成27年3月期)

当コラムの意見にわたる部分は個人的な見解であり、EY新日本有限責任監査法人の公式見解ではないことをお断り申し上げます。

この記事に関連するテーマ別一覧

税金・税効果

企業会計ナビ

企業会計ナビ

会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。

一覧ページへ