対して、分解情報を複数の要因で区分し開示している会社では商品の種類ごとに分解している会社が54社と一番多く、続いて販売形態、履行義務の充足による収益の認識、地域別となっていることが<表6>にて確認できます。
また、分解情報における主要な要因ごとの区分数としては最大で10区分、最小で2区分、平均3.7区分との結果が見て取れます。さまざまな業態や業種を有する小売業では、分解情報も多様な要因を有していることが読み取れます。
(2) 収益を理解するための基礎となる情報
当該情報では、1)契約及び履行義務に関する情報2)取引価格の算定に関する情報 3)履行義務への配分額の算定に関する情報 4)履行義務の充足時点に関する情報 5)収益認識会計基準の適用における重要な判断の注記が求められています。
多くの事例で、2.の重要な会計方針に記載の情報を参照するパターンが採用されていました。履行義務の内容や充足時点の他で多く記載されていたのは、重要な支払条件でしたが、大半が短期間であったという点は小売業における特徴の1つであると考えられます。その他には取引価格の算定に関する情報が多く見られましたが、中でも重要な金融要素がない旨、返品や値引を取引価格から控除している旨、代理人取引は純額としている旨の記載がされているケースが多くありました。一方で、履行義務の配分額への算定(変動対価を含む)などを記載しているケースはあまり見られませんでした。
(3) 当期及び翌期以降の収益を理解するための情報
当該情報では、契約資産及び契約負債の残高等(収益認識会計基準80-20項)及び残存履行義務に配分した取引価格の注記(収益認識会計基準80-21項)が求められています。契約資産を注記している例はほとんどなく(1社)、<表7>の通り、契約負債について内容を記載している事例ではポイントなどを記載する事例が多くありました。また、残存履行義務に配分した取引価格については、実務上の便法※2により省略している旨を明示している事例の他、契約負債に比べ商品券を記載する事例が多く見られました。これは収益認識を見込む期間が長期になる傾向があり、多数の会社で開示対象とされたものと考えられます。