ここからは、LTV指標の導入アプローチに関して解説します。LTV指標は四つのステップを経て決定します。なお、本アプローチ全体を通して、投資家や従業員、顧客、サプライヤー、政府や規制当局、社会など主要なステークホルダーが望むアウトカム(成果)やステークホルダーへの影響を考慮することが肝要です。
まず、STEP1では、外部環境によってステークホルダーが受ける影響や、目的(パーパス)の実現によってステークホルダーにもたらし得るアウトカムなどを考察した上で、企業戦略そのものや実行するためのガバナンスの方針に落とし込んでいきます。
次に、STEP2では、主要ステークホルダーを特定し、各ステークホルダーにとっての重要なアウトカムを検討します。企業を取り巻くステークホルダーは幅広いですが、STEP1で策定した戦略の実行によって、特に影響を及ぼし得るステークホルダーを主要なステークホルダーとして特定します。その上で、個々の主要なステークホルダーにとってのアウトカムを財務的価値、消費者価値、人材価値、社会的価値の四つの価値カテゴリーに分類し、それぞれのアウトカムの優先順位付けを行います。
STEP3では、四つの価値カテゴリーに係るステークホルダー・アウトカムを分解し、バリュードライバーを特定していきます。<図3>において、バリュードライバーおよびそこから導出する指標の具体例を示しています。なお、バリュードライバーを特定しても、戦略実行に必要なケイパビリティが企業に備わっていなければ画餅に終わってしまうため、戦略実行ケイパビリティの分析も必要となります。
最後に、STEP4では、長期的価値創出の指標を定義します。長期的価値創出の指標は、共通指標、業界指標、各社独自の指標があり、それぞれ、アウトカムの先行指標となっているか、目的(パーパス)と整合しているか、一貫性や比較可能性はあるか等を勘案し定義します。指標の定義に当たっては、STEP3までを踏まえ長期的価値の指標のロングリストを作成します。具体的な指標は<図3>において紹介していますが、これらの全てを包含する必要があるわけではなく、戦略や主要ステークホルダーにとってのアウトカムや影響を勘案した上で優先度の高い指標を選定します。指標測定に必要なデータの信頼性や正確性は重要となるため、場合によっては、それが担保されるまで指標としては採用されない場合もあります。また、LTV環境下においては、投資家等のステークホルダーの理解を得ることが肝要です。そこで、投資家等のステークホルダーの理解に資するように、各指標を定義した背景や前提、利用方法等を整理します。ここで整理した事項は、指標の精度向上や改善点の発見等、将来の活動において、振り返りの材料となり有用です。