一つ目に、ファイナンス機能そのものの姿としては、よりレジリエントかつリーンな組織体となることが必要です。過去志向から将来志向への変革、専門的なジョブ型人材へのコマンド・アンド・コントロールによる組織から、多様な人材による自律的組織への脱皮、単なる標準化や自動化を超えて、そもそも標準化が難しい複雑な業務からいかに付加価値を提供するかへのフォーカス、などが挙げられます。
二つ目に、アカウンティング・アンド・コンプライアンスの領域では、標準化・自動化・シェアード化/BPO化が進展することにより、より低コストでアカウンティングオペレーションが遂行されるとともに、信頼性の高い財務数値をもとにした分析業務により多くのエフォートが割かれる傾向にあります。今後はさらに、アカウンティングそのものが結果積み上げ型、仕訳ボトムアップ型のものから、アナリティクス起点のものへと変化し、これまでコスト削減の手段とされてきたシェアードサービスは、今後CoE(Center of Excellence)として変革の推進役に生まれ変わります。
三つ目に、業績管理の観点でも大きな変革が必要です。これまでは、PDCAサイクルのチェックを担う役割を高度化するために、過去情報・実績情報をリアルタイムに集計し、予実分析を行うことで、改善アクションを導き出していました。またその実現のために、分析に必要なデータの標準化や統合に力を注いでいました。しかし、事業を取り巻く不確実性が高まる昨今では、社外データを含む非構造データをいかに経営判断に活かすかが、競争優位や差別化の源泉として重要であり、将来予測やシミュレーションを駆使した、OODA(Observe:観察、Orient:状況判断、Decide:意思決定、Act:行動)ループの推進役としての機能が重視されます。
四つ目の、コーポレートファイナンス、あるいはトレジャリーの領域では、これまでは資金の効率化や、財務リスク・ガバナンスリスクの低減といった、守りの施策が中心でした。今後は、長期の資金計画・資本政策と戦略のアラインメントを取り、バリューチェーン上のどこに、どのような形でリスクマネーを張るべきかの判断をナビゲートすることで、長期的な成長実現に向けた攻めのリスクテイクに寄与する資金管理が求められます。
最後に、五つ目は変革の進め方についてです。これまでの期間限定的なプロジェクト推進や単発のM&Aではなく、変革そのものを定常業務とするアジャイルなEX(Enterprise Transformation)チームが、エコシステム構築とイノベーション創出を主軸に置いた、継続的かつ包括的なトランスフォーメーションを推進していくことが求められます。