行政機関とヘルスケア(いずれも44%)では、組織が環境に与える影響の測定において、最新テクノロジーはプラスの影響をもたらすと考える傾向が強いことが分かります。一方で、スコープ3排出量の報告の必要性から、サプライヤーが環境に与える影響の評価の重要性が以前より高まっていますが、この影響評価は行政機関やヘルスケアではさほど重要視されていません。しかし製造業やエネルギー産業では大きなメリットと見なされています。業績や進捗の測定に役立つ新しいテクノロジーの可能性を産業界は認識しているものの、自社のみに焦点を当てているか、サプライチェーン全体も視野に入れているか、目指すところは大きく異なっています。
まとめと今後のステップ
ESG対応は企業のテクノロジーへの投資判断の中にすでに組み込まれており、サステナビリティへのニーズも、テクノロジーベンダーを選択する際の最重要要素になろうとしています。それは良い傾向ではありますが、期待の高さを長期的価値の創造へつなげられるよう、CIOにはまだ他にできることがあります。
1. 最新テクノロジーとそれらがサステナビリティにもたらすメリットを重要視する
新しいテクノロジーによってサステナビリティの面でさまざまなメリットがもたらされることに企業は気付いています。しかし、テクノロジーを統括するリーダーが目標に焦点を定めて取り組むことが重要です。自社が求めている主なESGの成果に優先順位を付けて段階に分け、さまざまなテクノロジーがもたらす複合的な影響を精査しつつ、目指す成果を実現できる最適なテクノロジーを決定しなければなりません。
2. 自社の最新テクノロジー戦略の環境への影響を評価する強固なフレームワークを構築する
自社における最新テクノロジーのポートフォリオの炭素集約度とエネルギー効率を評価し、自社の評価フレームワークと、組織全体のITエネルギー消費量削減に関連する包括的目標とが、明確にリンクするようにします。新しいテクノロジーやスタンダードへの移行によって、組織のテクノロジー資産全体のサステナビリティがどう強化されるのかを評価するようにしなければなりません。
3. 経営陣と協力し、サステナビリティへの取り組みのあらゆる側面でテクノロジーが検討材料になるようにする。
他の幹部や部署と緊密に連携できれば、新しいテクノロジーがESG目標達成の促進に果たす役割への理解が、組織の隅々まで広がります。そうなれば、サステナブルという方針はトランスフォーメーションの重要な推進力となって、現在のデジタルトランスフォーメーションのロードマップが目指す方向性を維持できるはずです。
4. サステナビリティを、テクノロジーサプライヤーやエコシステムとの関係構築における指針とする
CIOは、テクノロジーベンダーに求める資質としてサステナビリティのケイパビリティをすでに優先しています。そこから発展させて、組織として、各種のパートナーエコシステムとの対話でサステナビリティを中心に据えることが重要です。テクノロジーへの投資判断やベンダーの選択では、すでにサステナビリティが意識されていますが、今後は循環型ビジネスモデルやESGコミットメントの共有において連携拡大を図るチャンスが広がっています。
5. 最新テクノロジーの「サステナブル・バイ・デザイン(設計段階からサステナビリティを考慮)」なユースケースを目指す
多くの企業では長年にわたってIoT戦略に取り組んでおり、そうした戦略は急速に拡大する5Gやエッジコンピューティングの導入によって後押しされています。ユースケースや導入モデルには、サステナブルな成果が組み込まれていなければなりません。そのためにCIOは、どうすれば最新テクノロジーのユースケースが従業員やパートナー企業、顧客に等しく利益をもたらせるのかを検討し、テクノロジーベンダーとの間に適切なフィードバックループを構築して、ビジョンを現実へ変えていかねばなりません。