しかしながら、10人中9人近い回答者(87%)が、法務部門に要求される管理情報が過去5年の間に大きく、または中程度増えたと答えています。
特に回答者が予想するコスト削減のレベルを考えると、こうした外からの要求は法務部門の業務をますます圧迫するおそれがあります。
企業は平均11%のコスト削減を計画していますが、地域や企業の規模によっては、この数字が持つ深刻さはさらに重大です。特に北米企業は平均13%のコスト削減を計画しており、大手企業ほど削減率が高くなっています。
コスト削減
15%は、人員数が1,000名を超える法務部門が計画している平均コスト削減率です。
要求される業務の増大とコスト削減の両方に対応するために、企業は運営モデルの再評価に力を入れるようになるでしょう。外部業者の利用を増やすこともその対策の一つです。
調査結果は、法務部門が限界にきていることを示しています。私たちは、幅広い視点に立って法務部門をつくり変える方法を発案するよう法務責任者の皆さまに働きかけています。チームの人数を減らす一方で、平均以上のパフォーマンスを維持しようとするやり方は長続きしないからです。
2. テクノロジーを活用する必要性
業務効率の面でデジタルレディネス(デジタル化への備え)と画期的なテクノロジーの利用が不可欠だという点は、あらゆるビジネスで広く認識されています。しかし、法務部門が人事、IT、財務をはじめとする他部門に後れを取ってしまい、モダナイゼーションの過程でもたらされる実益が、こうした他部門にもたらされる実益に及ばないおそれがあることを調査結果は示唆しています。
実際に回答者のほぼ3分の2(64%)が、最新テクノロジーの導入やイノベーションへの投資強化を通じて、財務部門をはじめとする組織の他部門が、法務部門よりもイノベーションの恩恵を多く受けてきたと考えています。
また、調査では、法務部門にイノベーションを導入するにあたって多数の障壁が存在することが浮き彫りになりました。最大の障壁は、回答者の36%が挙げている「平常通りの業務を求める継続的圧力」、2番目は僅差で「予算の制約」(32%)です。上述のコスト圧力を考えると、「予算の制約」は十分に理解できます。
イノベーションを阻む障壁
28%の回答者が、イノベーション導入を阻む障壁として「経営陣のスキルか、あるいは関心が欠けている」を挙げています。
法務部門の責任者は、この変革を議題に挙げる必要があります。
また、イノベーション推進に必要なスキルが経営陣自身に欠けているという事実を調査結果が指摘しています。例えば、技術的な知識、チェンジマネジメント(変更管理)能力のどちらかが欠けていることが考えられます。同様に「関心」の欠如が、競合的な優先事項を抱く意思決定者に注意を喚起させる向けさせる可能性もあります。
画期的なテクノロジーを活用しなければ、業務体系の中で法務部門と他部門との連携が弱まるおそれがあります。テクノロジーの進歩を活用しようと運営モデルを変革する企業には、コスト削減だけでなく、経営効率の向上も当然もたらされます。効率のよい組織は、新サービスの市場投入までの期間においても、新しい規制への迅速な適応においても、競争上の優位性を獲得する上で最適なポジションにつくことができるものです。企業がデジタル時代に順応し、業務がよりスピーディーになるにつれ、法務部門はますます後れを取らないようにしなければなりません。
人員削減やテクノロジーの導入といった単純な短期的コスト削減策が一般的な対策となっているようですが、私たちの経験上、新たなプロセスとワークフローを整備しない限り、法務部門はいずれ同じ問題に直面することになります。
3. 規制環境に対する自信
近年、法規制を取りまく状況は非常に大きな課題を生んでおり、規制の変更がペースダウンする気配は見られません。
若干の不確定要素は残っているものの、法務部門は、新しいプライバシー規則や処分規則、第三者データ要求、さらには米国の税制改革、税源浸食と利益移転(BEPS)といった将来的な規制上の要求を順守するための準備計画に概して自信を持っていると答えています。
企業が最も自信がないと答えたのは、英国のEU離脱(ブレグジット)に対する準備態勢です。これは決して驚くことではありません。調査実施の時点で、ブレグジットは不確定要素が最も多かったからです。
全体として幅広い規制問題に対して明らかに自信が表れていますが、企業の皆さまは全世界の重大な法改正を効率的に監視し、評価し、これに対応できるように優れた人材と技術力を常に維持しなければなりません。
上述したコスト圧力と技術的な弱みによって、これが予想以上に困難であることは言うまでもありません。
4. 人材の採用と配置に関する課題
各部署の既存の人材を最大限に活用することは、事業活動を最適化する上で非常に重要ですが、私たちの調査では、法務部門が抱える課題が増えていることが明らかになりました。
優秀な人材の発見が難しくなっているだけではありません。企業は、こうした人材をできる限り効率的に配置することにも苦慮しています。
ほぼ5社に3社の企業(59%)が、必要な人材の採用と定着に問題があると答えました。
自社のリソースを活かす
さらに、企業は平均してルーティン業務ないし低価値の業務にかなりの時間と労力をかけているようです。
低価値の業務に費やした時間
27%法務部門全体で、業務の合計時間の27%がルーティンのコンプライアンス業務や低価値の業務に費やされています。
この2つの所見は、企業がリソーシング環境に緊急に対応する必要があることを示しています。1つの答えとして社内研修と技能プログラムの改善が挙げられますが、多くの場合、これらは中・長期的な解決方法です。したがって、法務部門は、特にルーティン業務に関して外部業者の利用を検討することになるでしょう。法務部門は、こうした点で会社全体と考え方を合わせるとともに、幅広く社員が実践してきたインテリジェントな自動化から教訓を得る必要が あります。
5. 業務運用モデルを再評価する
法務部門の現在の業務状況を考えれば、多くの企業が業務運用モデルを継続的に再評価していることは理解に難くありません。この傾向は特にアウトソーシングと調達の分野で顕著です。
私たちの調査で、平均33%の企業が法人管理やコンプライアンスなど、法務部門のさまざまな業務をすでにアウトソーシングしている一方、さらに多くの企業がアウトソーシングを検討していることが明らかになりました。
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業務のアウトソーシング
41%41%の企業が、法務部門のルーティン業務をアウトソーシングすることを検討しています。
成功する調達チームは、価格の引き下げと同時に価値を優先する
調達モデルも変化しつつあり、代替法務サービスプロバイダー(ALSP)や法務業務の委託企業を検討するケースが増えています。
これはあらゆる規模の企業に言えることですが、特に小規模な法務部門でこの傾向が強まっています。社員数1,000名未満の企業の60%がALSPや法務業務の委託企業を検討しています。
効果的な調達を行うことによって、企業は、より効率的にサービスを提供することができます。この調査で明らかになったように、法務部門は、現在受けているさまざまな圧力を考慮した上で、どの選択肢を採れば、今直面している複雑で変化の激しい要求を満たせるのかを常に検証しなければなりません。
結論
私たちの調査結果で明らかになったように、法務部門はあらゆる方面から圧力を受けています。そして、これらの圧力が全て重なって、変革を促す環境が創造されているのです。
高まる要求に応える必要性は、求められるコスト削減と真っ向から対立するものです。ですから、法務部門がこれらの相反する要求に同時に応えるためには、業務運用モデルを入念に検討する必要があります。
技術革新と人材の最適化は、当然ながら解決策の一翼を担うと考えられますが、法務部門はこの2つの分野で苦労していることを認めています。結果として、多くの企業が解決策としてアウトソーシングと外部調達を検討するようになっています。
法務部門に劇的な変化が起きていることは明らかです。それについては、詳細な調査報告書でさらに掘り下げて説明します。
主なアクションポイント
- 社内法務部門を大規模なトランスフォーメーション計画の一部に含める
- 法務部門と事業戦略の間のギャップが広がらないように、イノベーションを起こす分野を早急に検討する
- 法務担当の適切な人材の採用、さらに重要なのは人材の効果的な配置
- 世界と地域の規制問題をつぶさに監視する
- 最大の価値を引き出すために、法務部門の業務運用モデルを再評価する
サマリー
法務部門はあらゆる方面から圧力を受けています。そして、これらの圧力が全て重なって、変革を促す環境が創造されています。