重要となるのは、次の4つの視点から自社が主体的に支配できるリソースを活用で自社の差別化を図ることです。
① 経営資源(人、モノ、資金、特許技術、顧客取引先関係等)
② ケイパビリティ(IT、SCM、マーケティング、ロジ、R&D、生産拠点等)
③ 組織・リーダーシップ(マネジメント、社風等)
④ コアコンピテンシー(希少性、独自性、代替不能なこと)
世界中の競争相手に対して、このような自社支配が及ぶ範囲のリソースの組み合わせで大きな差別化要因を作り出すためには、このリソースから組み合わせて競争相手に勝るビジネスロジックを構築し、セグメントの特定も同時に調整して、自社の差別化を図れる新たなオペレーション戦略を生み出す必要があります。
経営の三要素の底辺にあるオペレーションは、新しいオペレーション理論を業務実行する現場であり、SCMや、コーポレート業務という企業活動の現場です。
この前提を理解すると、戦略実行において、どの自社リソースを合わせ、どのようなタイミングで、どのような方法で、誰がどのように使うのか(5W1H)を組み合わせた幾つものビジネスロジックを事前に構築し、そのロジックで差別化した新たなコアコンピテンシーで戦略実行すること、つまりオペレーション戦略構築の重要性が理解できるはずです。こうした差別化されたコンピテンシーをもって行う戦略実行が企業戦略の成功、企業の回復、企業の期待する業績効果をもたらす根源なのです。
今日まで成功してきた日本企業の戦略は、欧米における自動車や電子精密機械産業のセグメント市場を中心に、特に自社の唯一無二の技術(有形・無形)というリソースであるコアコンピテンシーを持ち、あるいは高い品質と技術というケイパビリティの両方と、価格で、ストレートに「戦略実行による差別化」を図ってきました。
しかし、現在のリバースエンジニアリングの技術の発達で高い品質と高い技術が当たり前になってくると、経営資源である唯一無二の技術による差別化の効果が小さくなってきています。今のデジタル化の波は「コネクティビティ」や「スピード(アジリティー)」をより重要な価値観としています。自動運転の技術開発には、世界的な企業とコンソーシアムを作るオープンなデータレベルでの技術的な共有を可能にするコネクティビティ、他社や顧客と個人レベルでSNSを通じた新しいコネクティビティや、コンビニエンスストアやEC物流に見られるスピードという利便性が新たな価値観として重要視されています。