国際的には、1992年の地球サミットを契機として、年次で国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催されています。1997年のCOP3では京都議定書が採択され、先進国に法的拘束力を有する数値目標が設定されました。2008年~2012年が第一約束期間、2013年~2020年が第二約束期間と位置付け、取り組みが進みました。2015年のCOP21では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をするという目的を掲げるパリ協定が採択され、2020年以降の温室効果ガス排出量削減に向かう新たな国際的枠組みが示されました。
国・地域を見ると、欧州連合(EU)では欧州理事会がポーランドを除き2050年までにカーボンニュートラルを目指すことで合意しています。イギリスでは2050年までに全ての温室効果ガスの排出量目標をネットゼロとする法案が成立しています。米国ではジョー・バイデン大統領が2050年までの温室効果ガスのネットゼロを公約として掲げています。日本では、2050年に温室効果ガスのカーボンニュートラルを宣言しました。最大の排出国である中国では、国連総会において2030年までにCO2排出量を減少に転じ、2060年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明しています。
企業においては、ネットゼロに向けたイニシアティブが盛り上がりを見せており、銀行を中心としたNet-Zero Banking Alliance、資産運用会社を中心としたNet Zero Asset Managers initiative、機関投資家を中心としたNet-Zero Asset Owner Alliance、米国民間セクターを中心としたTransform to Net Zero等が直近1年程度で立ち上がってきています。また、パリ協定が求める水準と整合した温室効果ガス排出削減目標を設定し、推進する取り組みとしてSBTi(Science Based Targets initiative)がありますが、認定あるいはコミットメントの社数は1,300社を超えています。
これらの動向は社会的な期待水準の変化を示唆しており、より実質的効果を意識した具体的な行動が求められていると解釈します。