BNPLは、今後さらに持続可能に
バイ・ナウ・ペイ・レーター(BNPL)とは、迅速な与信判断と分割払いによる決済オプションを販売時点で提供する新しい決済方法です。小売業者や加盟店は、このオプションを通じて、顧客を引き寄せ、いわゆる「かご落ち」を減らし、売り上げ増加につなげることができます。そして消費者は、BNPLの利便性、コストの低さ、予測可能な支払いスケジュールなどのメリットが得られます。
BNPLは当初、安価な衣料品の購入に使用されていましたが、その後利用対象は拡大し、今では企業の購買の場面や義務的支払の場面でも利用されています(ヘルスケア、法律サービス、自動車修理など)。しかし、資本コストの上昇と規制当局の監視の強化を踏まえると、BNPLモデルが持続的な収益源になるには進化する必要があるでしょう。
銀行にとっては、BNPLは、融資の拡大と決済テック企業パートナーとの協力関係の深化につながる新たなチャネルを模索する機会となります。
デジタルウォレットとスーパーアプリ:多様な機能を備えたワンストップショップ
デジタルウォレットの利用により決済取引手数料が大きく低減させられるのと同時に、ユーザーはこれ1つで家計を管理することができます。スーパーアプリはこれをさらに一歩進め、ユーザーが手にするであろう財産、レジャー、生活に関するニーズの大半に応えることを目指しています。依然として決済カードネットワークが広く利用されている北米や欧州とは異なり、アジア太平洋地域(APAC)では、デジタルウォレットとスーパーアプリの普及が最も進んでいます。
しかしながら、APAC以外のデジタルウォレットプロバイダーは暗号資産ウォレット、非接触型決済方法などのオムニチャネルサービスの拡大を通じて、スーパーアプリ事業者への転換に努めています。総体的にみて、ユーザーの行動はデジタルウォレットの進化を促しています。また、デジタルウォレットの普及には、ロイヤルティプログラム、安全性、クローズドループ型からオープンループ型へのウォレットの転換などの、付加価値が組み込まれたサービスも関連しています。
金融機関は、決済テックを活用するデジタルウォレット戦略を策定し、既存のサービスに適用することで、顧客に提供する価値の増大につなげることができます。今後、銀行は、ユーザー層拡大のため、デジタルウォレットの導入をさらに進め、新たなサービスを提供していくとみられます。
組み込み型決済:未来の決済は人の目には見えない
企業が顧客に提供するエクスペリエンスのパーソナライズ化・円滑化に伴い、組み込み型決済は中核的な価値提案になりました。組み込み型決済は、非金融サービス企業(UberやShopifyなど)が法人顧客に決済機能を提供するビジネスモデルと親和性があります。
そのため、組み込み型決済はプラットフォームやマーケットプレイスを始めとするすべてのB2B2CモデルやB2B2Bモデルにおいて急速に普及しつつあり、その導入率の向上には、決済テック企業が引き続き大きな役割を果たしています。非金融サービスプロバイダーが決済をカスタマージャーニーに統合するに従い、組み込み型決済も拡大していき、さらに人の目に見えなくなると予想されます。
PSPには、加盟店のアクワイアリング事業を見直す一方で新しいビジネスモデルを模索する機会が訪れています。銀行には、大半の革新的決済事業者にはない資産があります。それらをeコマースエコシステムの加盟店や消費者が活用できるようにすることが極めて重要です。消費者と商取引が急速に変化する中、銀行はデータの活用を通じて、決済サービスから最大の価値が得られる個別の顧客層を特定し、各層に適合するソリューションを提供する必要があります。
デジタル通貨と貨幣の未来
デジタル通貨と中央銀行デジタル通貨(CBDC)への注目が高まり、業界初となるソリューションが出現したことで、これらは規制対象の代替手段を模索する決済事業者が取り組むべき最優先事項になっています。トークン化、プログラマビリティ、スマートコントラクトと、銀行が単一のプラットフォームに参加できるようにするためのネットワークの取り組み(オープンループ)が相まって、DLTのメリットのすべてが得られるようになります。デジタル通貨がもたらす究極のメリットとは、即時のアトミック決済、自動化・透明性・効率性の向上、ならびに「通貨のプログラマビリティ(自動処理の可能性)」を通じて新しいビジネスモデルが活用できるようになることです。
暗号資産とデジタル通貨は、新たな決済方法として活用されるだけではなく、DLT、プログラマビリティ、スマートコントラクト、トークン化を通じて即時決済を可能にする新しいインフラを実現させるでしょう。デジタル通貨を受け入れる銀行、加盟店、規制当局の増加に伴い、その普及が進むと予想されます。また、新しいユースケースの急速な拡大も見込まれます。
銀行は、デジタル通貨を組み込んだ商品やサービスの開発について、その価値を評価し、実現可能性を調査することもできます。