- グローバル企業の65%*¹(日本企業*²の70%)のCEOがAIをビジネス効率性向上の強力な推進力と見なしている一方で、リスクも懸念
- 88%(日本89%)のCEOがAIに資本配分しており、約半数が今後1年で大きなAI投資を計画
- M&Aは2024年半ばにかけて勢いを取り戻す見込み:71%(日本67%)のCEOがAIを活用してディール戦略を強化
EYは、最新のM&Aに関する調査レポート「The CEO Outlook Pulse survey July 2023」(以下、「本調査」)を発表したことをお知らせします。本調査は世界の1,200人(日本70)のCEOを対象として行われ、AI、資本配分、投資、サステナビリティ、トランスフォーメーションに関する戦略についての彼らの洞察を提供しています。
グローバル企業のCEOは、AIが生み出す機会を前向きに捉えつつ、AIがもたらす未知で意図しないリスクについての懸念も払しょくできないことを本調査で明らかになりました。およそ3分の2(65%)(日本70%)のCEOが、AIがよりよい社会を構築する上で必要なテクノロジーであることに同意する一方、それとほぼ同程度(グローバル67%、日本63%)のCEOが、AIがもたらす可能性のある社会的リスク、倫理的リスク、偽情報、ディープフェイク、サイバー攻撃などのセキュリティリスクに対してさらなる対策が必要であると回答しています。また、66%(日本68%)のCEOが、人間の労働力がAIに取って代わられるという懸念は、同時にAIによって創出される新たな役割やキャリアの機会によって相殺されるであろうと考えています。
CEOはAIがビジネスと社会にもたらす潜在的利点を歓迎する一方で、この先端テクノロジーが持つリスクも認識しています。3分の2(グローバル67%、日本63%)のCEOが、ビジネス界はAIの倫理的影響を注意深く見守る必要があると回答しつつ、そのリスク統制に十分な手段を講じていないとの回答も同程度の割合という結果となりました。(グローバル64%、日本62%)
こうした懸念にもかかわらず、CEOはAIが自社ビジネスにもたらすメリットを最大限に活かすため投資戦略を練っています。大多数のCEO(グローバル88%、日本89%)は、資本配分の中にAI関連の投資を組み入れています。そのうち43%(日本39%)のCEOは、実際に積極的にAIに投資していると回答し、残りの45%(日本50%)は、今後1年以内にAIに多額の投資を行う計画だと回答しています。
EY Japan ストラテジー・アンド・トランザクション リーダー 梅村 秀和(うめむら ひでかず)のコメント:
「CEOは、AIの導入がもたらす潜在的リスクに懸念を抱いています。彼らの懸念は、メディア、社会、現代文化で見られるAIに対する一般的な考え方、想像を反映したものです。CEOは、こうした懸念に取り組むことを自らの役割と捉えています。つまり、AIの倫理的影響について、また、AIの活用がプライバシーなど私たちの生活の重要な部分にどのような影響を与えるのかについて、彼らは真剣に考える機会と捉えているのです。AIの非常に大きな利点である生産性向上の加速や、すべてのステークホルダーに何らかのプラスの結果を促進する可能性を明確に認識しているので、CEOはAI主導のイノベーションに対する投資を加速させています。AIの潜在的利点を活用するための大胆なアクションを取ることが、自社が将来競争優位に立つことにつながると強く信じているのです」
不安定な経済状況は継続、サステナビリティ施策は大きな岐路に
マクロ経済の不安定な状態は続いていますが、2023年初頭に比べるとより楽観的になっています。経済の一時的または継続的で深刻な後退を予想しているCEOの割合は、1月には50%(日本59%)でしたが、今回はわずか33%(日本31%)となっています。しかし、自社の業績については、半年前と比べるとより楽観的になっているCEOが47%(日本41%)で、より悲観的になっているCEOが36%(日本33%)と、見解が分かれた状態となっています。
現在の低成長、高インフレ、金利上昇という厳しい現実によって、多くのCEOは、特にサステナビリティの目標達成を犠牲にして、短期の業績により集中せざるを得なくなっています。
現在、資本配分の意思決定においてサステナビリティの課題を優先させると回答しているCEOは、わずか38%(日本45%)のみとなっています。2022年1月に行われたEY CEO Outlook Pulseの調査では83%(日本67%)が、サステナビリティとESGの課題が、短中期的に見て成長を促進する重要な要因だと回答していました。
梅村はこの結果について次のように述べています。
「グローバル全体同様2022年初頭と比べると数値は減少しているものの、サステナビリティとESGに関して、優先課題と考えている日本企業のCEOは決して少なくないようです。現在の不安定なマクロ経済の環境により、直近では短期的な業績によりフォーカスするようになってはいますが、欧米に少し後れを取って、日本企業でも多くのCEOが既に長期的な投資戦略にサステナビリティを組み入れているようです。サステナビリティに対するステークホルダーの要求を満たす必要性を認識しているのでしょう。そのためには、戦略的業績・成果を上げ、それを発信する新しい方法が求められます。これには、非財務・財務指標を活用して、ステークホルダーの期待と業績・成果の間にあるギャップを埋め、高まる規制に成果を準拠させることが含まれます」
M&Aは2024年半ばにかけて勢いを取り戻す見込み
M&Aディールの締結は引き続きCEOにとっての優先事項です。CEOのほぼ全員(98%)(日本99%)が今後1年のうちに戦略的トランザクションを積極的に進める意向を示しています(2023年1月の89%(日本94%)から上昇)。関心の対象としてはM&Aが59%(日本47%)、事業売却が47%(日本56%)、戦略的アライアンスもしくはジョイントベンチャーが63%(日本63%)となっています。買収意欲は過去最高のレベルに達しているものの、規制の高まりや、資本コストの上昇といった現在のマーケットにあるディール締結への障壁が、こうした計画の多くに歯止めをかける可能性が高いと見られます。
資本の配分戦略の決定に関する優先的理由はグローバル全体が、テクノロジーのケイパビリティ向上とイノベーションの加速ですが、これに対し日本企業の回答は新規市場開拓や地域の拡大が投資の第一の目的としています。さらに、CEOは、M&A戦略においても投資先探しやディールのプロセスでAIを活用しています。トランザクションのプロセスの大部分もしくはパイロットプログラムまでの過程にAIを取り入れていると回答したCEOは71%(日本67%)に上りました。AIを利用する予定がないと回答したCEOは全体のわずか5%(日本3%)でした。
梅村は次のように述べています。
「景気の向かい風、加速するテクノロジー革新とディスラプションの継続にもかかわらず、CEOは、攻めの態勢に入ることを望み、これを実現するために多くがディールに目を向けています。将来のM&Aディールでは、過去とは比べものにならない程多くの情報を入手し、処理、分析、解釈を必要とします。競争力を高めるためには従来の方法はもはや通用しません。AIのケイパビリティは、正しく活用すればM&Aによってより多くの価値を解き放つための鍵となり得るでしょう」
本調査のすべての内容は、ey.com/CEOOutlookでご覧いただけます。
*¹グローバル企業のCEO=日本企業を含むグローバルでビジネスを展開している企業の回答者。本調査では全回答者がこれに該当する。
*²日本企業のCEO=今回の調査で回答のあった企業のうち、日本に本社を置くグローバルで展開している企業。
※本ニュースリリースは、2023年7月24日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳し、日本の見解を加えたものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
CEO confidence in artificial intelligence tempered by social, ethical and security risks