- 最新のEYグローバル・ウェルスマネジメント・リサーチによると、市場のボラティリティが高まる中、アクティブ投資へシフトする投資家が若い世代で多くなっており、その割合はベビーブーム世代の22%に対し、50%に達しています
- ウェルスマネジメントのサービスを受けている投資家の40%が資産運用についてこの2年間でより難しくなったと考えています
- 日本では投資家の76%がポートフォリオの価値下落により投資行動を変えています(グローバルは73%、アジア太平洋は83%)
- 一方、日本の投資家は投資プランの見直しや、追加的なアドバイスをそれほど求めてはいません
EYがまとめた2023年「EYグローバル・ウェルスマネジメント・リサーチ(EY Global Wealth Management Research)」によれば、かつてないレベルのボラティリティと世界情勢の不確実性の高まりをうけ、先行きが不透明な時期における人々の投資行動に変化が生じており、こうした状況に対し、ウェルスマネジャーにはこれまでにないスピードで適応していくことが求められています。
今回で第4版となる本レポートでは、日本を含む世界の27の国・地域の2,600人を超えるウェルスマネジメントの投資家を対象に詳細な調査を実施し、回答者の意見を集約しました。その結果、回答者の40%が資産運用についてこの2年間でより難しくなったと考えていることが分かりました。また、半数を超える57%が財政面で備えができていないと感じている理由として市場のボラティリティを挙げています。この割合は、1946年から1964年までの間に生まれ、多くがすでに定年退職した、あるいは定年退職を間近に控えている状況にあるベビーブーム世代に対象を絞ると69%に上昇します。
EYグローバルウェルス&アセットマネジメントセクターのリーダーを務めるマイク・リー(Mike Lee)のコメント:
「市場の不安定な状況が続いていることから、投資家らは質問したいことがいくつもあり、アドバイスをもらいたい、と強く願っています。また、市場ストレスが継続しているため、守りの姿勢や、ポートフォリオの入れ替え規模を拡大したいという気持ちが高まっています。今こそウェルスマネジャーの役割の重要性が問われており、これからも注目を集め続けるでしょう。リスクモデルを見直して理にかなったアドバイスを提供するとともに、ここ数カ月の間に急速な展開を見せている複合的で複雑な事象に対し、将来を見据えて対応していく必要があります」
今回の調査によると、資産を親族やチャリティに移していくという重要で有意義な最終目標を資産運用の最優先事項として挙げる投資家の数はこの2年間で30%減少しています。今や投資家の3大目標は、損失とインフレから資産を守ること(43%)、投資リターンを高めること(40%)、十分な収入と財政上の安全を確保すること(32%)となっています。
EYグローバルバンキング&キャピタルマーケットセクターのリーダーを務めるジャン・べレンズ(Jan Bellens)のコメント:
「今回の調査結果が示していることは明確です。投資家はこれまで以上に投資の多様化を進めています。そして世界で最近起こった事象を考えれば当然のことながら、即座にファンドにアクセスできることはチャンスとリスクの両方をもたらすことになるということです。投資はより複雑になっています。ウェルスマネジャーとしては、デジタル資産やESGファンドの台頭、そして投資家が市場の動向と経済の不確実性によってどのような影響を受けつつあるのか、といったオペレーション上の関係課題について対応していく必要があります」
市場のボラティリティが将来を見据えた投資行動を喚起
市場は不安定ですが、投資家はウェルスマネジメントのサービスプロバイダーの変更に強い意欲を持っており、特に若い世代でこの傾向が見られます。投資家のほぼ半数である45%(アジア太平洋は57%、日本は47%)が今後3年以内に新たなプロバイダーを加える、資金を別のプロバイダーに移す、あるいは完全にプロバイダーを切り替えることを計画しています。1981~1996年生まれのミレニアル世代では、ベビーブーム世代と比べて3倍近い割合の投資家が資産を動かすことを検討しています(ミレニアル世代は73%、ベビーブーム世代は29%)。
パッシブ投資またはアクティブ投資を求めるかについては世代間での隔たりが見られます。若い世代ではボラティリティが高まっている場合にアクティブ投資にシフトするとする投資家が多く、ミレニアル世代では半数(50%)がアクティブ投資への配分を引き上げています。これに対し、ベビーブーム世代ではわずか22%にとどまっています。同様にミレニアル世代では、上の世代と比べ、3倍を超える割合の投資家がデジタル資産プロバイダーまたは暗号資産ウォレットを使用するとしています(ミレニアル世代の投資家の24%がすでに使用)。
資産運用にフィンテック企業を起用する投資家の割合は今後3年間で9%から18%へ倍増する見込みです。その背景には利用手数料が安いこと、資産運用向けにカスタマイズされたデジタルエクスペリエンスが提供されていること、切り替えが容易なことが挙げられます。より顕著な伸びが見込まれる地域は欧州(クライアントのうち11%から23%へ上昇)、アジア太平洋(14%から26%へ)、中東(8%から41%へ)です。
アドバイスを求める声
今回の調査では、経済、市場、政治の世界で起きている衝撃的な事象の意味を解釈するために投資家がアドバイザーの助言や専門的な知見を強く求めていることが明らかになっています。投資サービスについてより多くのアドバイスが欲しい、という声が最も顕著に聞かれたのはミレニアル世代の投資家(66%)および財政面で最も備えができていないと感じている投資家(67%)からです。地域別では、中東、南米、アジア太平洋が顕著で、それぞれ63%、59%、56%と、いずれもグローバル平均の48%を超えています。
また、今回の調査では、市場のボラティリティへの対応としてアクティブ投資にシフトした投資家の割合と預貯金への配分を増やした投資家の割合は同様であることが明らかになりました。回答者のほぼ4分の3である73%(アジア太平洋は83%、日本は76%)がポートフォリオの価値の下落を受けて投資行動を変えましたが、3分の1超(34%)が資産をアクティブ投資に振り向けた一方、33%が保守的な預貯金へとシフトしました。さらに、全体の62%にあたる投資家が将来のボラティリティに対応して自身の投資プランを見直したいと考えていることが分かりました(アジア太平洋は61%、日本40%)。そして、半数を超える回答者(53%)が今のアドバイザーとは別のソースから追加で投資に関するアドバイスを求めたいと考えており(アジア太平洋は54%、日本は38%)、日本はアクティブ投資へのシフトでは変わりは見えなかったものの、投資プランの見直しやその他追加的なアドバイスの必要性について、グローバルやアジア太平洋とは異なる結果となりました。
EY Japan 金融サービス アセットマネジメントセクターリーダーである長谷川 敬(はせがわ たかし)のコメント:
「日本においては、長期にわたる超低金利下にあっても、金融資産はなかなか投資に振り向けられない状況が継続しています。政府も「貯蓄から投資」の流れを生み出そうと、NISAやiDeCoの拡充を図るとともに、2022年5月には資産所得倍増プランを発表するなど、さまざまな施策を打ち出してきていますが、その効果はまだ未知数です。さらには、少子化などによる将来の年金不安、地政学的リスクや世界的な金融不安、将来的な不確定要素を挙げれば切りがありません。
このような状況にあって、日本の投資家も若年層を中心に投資に対する考え方や取り組み姿勢が従来から変化しているのも事実です。ITリテラシーの高さや、ある程度のリスク資産に対する投資への関心、金融リテラシーの向上などにより、これまでよりも投資に関心を持つ方が増えています。一方で、資産運用会社側もこの流れをつかみとるべく、オンライン投資方法の多様化や手数料の無料化、少額からの投資を可能にするなど、この流れをいかに強化し、加速させていくのか、これからの日本における投資運用ビジネスの発展が、今問われています」
詳細な情報についてはレポートをご覧ください。
※本プレスリリースは、2023年4月24日(現地時間)にEYが発表したプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
Investor behavior changes in face of increasing market volatility as demand shifts to active investments and FinTech, new EY report finds