4. 気候変動
気候変動は、鉱山事業者にとって複雑な問題です。エネルギー移行に必要な鉱物を提供しながら、温室効果ガス(GHG)の排出量の削減も図らなければなりません。
ネットゼロに向けた取り組みは、このセクター全体で進んでいますが、今回の調査回答者の中には、中間目標達成の難しさを認める人もいました。多くの鉱山事業者が、脱炭素化を加速させる技術革新を起こすために、エコシステムやパートナーシップを構築しています。政府の支援と再生可能エネルギーのコスト低下により、再生可能エネルギー契約と太陽光発電や風力発電への投資が増加しています。多くの鉱山事業者が、スコープ2のGHG排出量削減のためにグリーン電力を調達していますが、グリーンエネルギーの大規模な確保は難しくなっています。
鉱山事業者は、日々の生産性や労働安全衛生に気候事象が与える影響の拡大にも備えなければなりません。先日の森林火災の被害を受けたカナダのある鉱山事業者は、将来の災害等事象に対するより良い備えを検討しているとして、次のように述べました。「気候変動に対応するため、作業を停止する期間を1年間に2日設けることを検討しています。これは、今後の展開としては悪くないでしょう」
5. デジタルとイノベーション
鉱山事業経営者たちは、コストを削減し、生産性、安全性、ESG の成果を向上させるような事業全体でのデジタルソリューションに対する需要によって、データとテクノロジーへの投資が急増すると予想しています。調査回答者は、生成AIの可能性に期待しており、特に鉱物回収を最適化できるような新テクノロジーを探し求めています。鉱業・金属セクターのトランスフォーメーションを加速し、イノベーションを推進するような連携およびパートナーシップの強化を求める人も多くいます。
鉱山事業者は豊富なデータを蓄積していますが、多くの場合、その豊富な情報の管理と、そこからの知見の抽出に苦慮しています。また、テクノロジー導入に対する統合的なアプローチに欠けるケースが多く、テクノロジーの導入が自社にもたらし得る価値を制限してしまっています。あるCIOは次のように話していました。「CIOとして私たちが真剣に向き合うべきはソリューションではなく、問題です。現場作業員の立場になって考え、その実情を真に理解しなければ、その日常業務のさまざまな側面を変えることはできません」テクノロジーの導入とその成否状況は鉱山事業者によって異なります。今回の調査の結果から、現場レベルで新たなテクノロジーの利用を推進している組織が最も大きな成果を上げていることが明らかになりました。
6. コストと生産性
インフレ率が低下してきたとはいえ、エネルギーコストと人件費を中心にコストは高止まりしています。最近までは物価の上昇が利益率を下支えしていましたが、現在は2019年の水準に近づき、金融ストレスの兆候がいくつか見られます。