(2) 現状調査 (SPA締結からクロージングまで)
株式売買契約締結の公表等により、これ以降はよりオープンな活動が可能になります。一方で、いわゆるガンジャンピング規制(M&A完了前の協調的行動や情報交換に関する競争法上の規制)の関係で、対象会社とのコミュニケーションがこの段階でもなお制限されます。このため本フェーズにおいては、当該規制による本フェーズのタスクの実施可能範囲や進捗への影響と、これにより影響を受けるクロージング後の残タスクに対して確保されている時間及び人員確保の十分性を、常に考慮することが望まれます。
① プロジェクトマネジメント
本フェーズは、プロジェクト全体のマネジメントを担当するプロジェクトマネジメントオフィス(以降、「PMO」とします)の設置を含めた、会計分科会の組成、及び対象会社とのコミュニケーションパスの確立から開始されます。
PMOは本フェーズ以降、連結財務報告体制構築や企業結合関連会計処理に関連するタスクの進捗管理やスケジュールのアップデート、及びタスク遂行に必要な対象会社とのコミュニケーションにおいて中心的な役割を果たします。
なお、前述の通り、対象会社とのコミュニケーションは本フェーズにおいても制限されることが一般的ですが、対象会社内の経理体制等の課題や、対象会社が抱えるM&Aに対する不安や疑問等への対応が求められることも想定されます。
このため、PMOは法律専門家や財務アドバイザーと連携し、対象会社と必要なコミュニケーションを丁寧に行うことが望まれます。
② 連結財務報告体制構築
本フェーズにおいては、親会社の具体的な要求事項の対象会社への共有、必要な対応の依頼、及び対象会社との協議に基づき親会社との間で作業分担した上での対応策の実行が、主なタスクとなると想定されます。
要求事項としては、勘定科目体系の統一、決算早期化、決算期統一、クロージング後の開始BSや連結パッケージ等の財務会計情報及び管理会計情報の作成等が想定されます。
また、関連する課題が認識された場合、対応期限を検討した上で、対象会社の独力で対応可能か、又は親会社や外部専門家の支援が必要かを迅速に見極めることが望まれます。
③ 企業結合関連会計処理
本フェーズに入ると、会計処理に必要な情報が徐々に入手されるようになります。これに応じて、SPAやその他の最新の情報に基づく企業結合の会計処理の具体化、新たに検出された論点に対する対応、及び会計方針又は会計基準と差異の具体的な調整方法の検討等が、本フェーズの主なタスクとなることが想定されます。
なお、PPAに関しては、実際の作業はクロージング日以降になるものの、本フェーズの段階で、評価替えを行う資産負債の範囲やPPAを担当する専門家の起用を検討しておくことで、PPA実施の時間軸に余裕が生まれるものと考えられます。