8 分 2020年4月16日
晴れた朝に橋の上をジョギングするEYの女性社員

Future Consumer Index:新型コロナウイルス感染症が消費者行動をどのように変えるのか

執筆者
Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

Andrew Cosgrove

EY Global Business Insights Leader – EY Knowledge

Consumer futurist. Strategist with global FMCG experience. Storyteller. Photographer. Father.

8 分 2020年4月16日

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5つの主要市場における行動と感情についてまとめたEY Future Consumer Index によれば、パンデミックによって新たな消費者セグメントが生まれています。

Local Perspective IconEY Japanの視点

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、私たちの日常生活に計り知れない影響を及ぼしており、買い物の仕方から、人との関わり方まで、消費者行動が変化しています。

日本では、政府の専門会議にて「新しい生活様式」が提言されました。
企業は、この消費者行動の変化によるビジネスへの影響や新たな消費者像を予測し、事業変革を検討する必要があります。
EYでは、新型コロナウイルス感染症に対して変化する消費者行動の指標としてFuture Consumer Indexを定義し、主要な海外マーケットで消費者調査を実施しましたので、その結果をお伝えします。
この調査は、3週間ごとに継続して行う予定で、日本においても準備を進めています。
 

担当窓口

右田 将徳
EY Japan 消費財・小売・アシュアランスリーダー EY新日本有限責任監査法人 パートナー

世界中の人々の日常生活が、ほんの数週間前には思いもよらなかった形で変化しました。消費者と向き合う企業が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを乗り越えるための方策を探るにあたり、世界の消費者がすでにかなりのスピードで変化を遂げていることを肝に銘じておくべきでしょう。変化のプロセスは、いまや誰も想像つかないほどに加速しています。

消費者を相手にする企業にとって、新たに出現しつつある消費者の特性を予測して現在の危機を乗り切り、将来においても消費者との関係を保つために必要な能力を確立することが喫緊の課題となっています。こうした取り組みの指針となるよう、EYでは2年前にFutureConsumer.Nowプログラムをスタートさせました。

今回、世界中で生まれている新しい消費者の行動や感情を理解し、追跡しようとするリーダーを支援するため、EY Future Consumer Index(以下、Indexとも記載)を発行しました。今後数か月にわたって、目の前で生まれつつある新しいセグメントを見定めながら、どれが状況の変化に対する一時的な反応であるか、どれがより根本的な変化を示すものであるかを問いかけていきます。

不安に満ちた、新たな領域において

パンデミックの初期段階において、消費者の不安は、家族の健康、基本的な必需品を購入できるか否か、これまで当然のように享受していた自由の喪失といったものに向けられていました。消費者が新しい行動様式を受け入れるにつれ、共通であった不安事項は、それぞれ異なる様相を見せるようになりました。

調査対象としたすべての市場で、「大幅に節約」する消費者が見られました。通常通りの支出を続けるものの、別の形で生活様式が変化している消費者もいました。今のところ、消費者の多くは驚くほど楽観的です。Indexのデータを概観した結果、行動様式には4つのセグメントがあることが分かりました。

「支出を増加」セグメントは、主に18~44歳で、パンデミックの影響を最も懸念している人たちです。それにもかかわらず、以前より買い物の回数を減らしたと回答したのは40%にとどまっています。42%が購入する商品が大きく変化したと回答、46%はブランドが重要な購買基準になったと回答しています。

Indexによれば、「大幅に節約」セグメントはさらに大きな変化を示しています。このセグメントに属する消費者は、主に45歳以上で、雇用の面で最も大きな影響を受けています。ほぼ4分の1が、恒久的または一時的に仕事ができない状態となっています。78%が買い物の回数が減ったと回答、64%は必需品のみを購入していると回答しています。「支出を増加」セグメントとは対照的に、このセグメントに属する消費者の33%が、もはやブランドは重要な購買基準でないとの見解を示しています。

Indexでは、これらの新しいセグメントの状況を追跡し、現在の差し迫った危機が新たな段階に進む中、他に新しいセグメントが登場するのか否かに注目しています。

今後の見通しは?  変化を追う

パンデミックによる直接的な影響を乗り切った後、すぐに以前の習慣を取り戻せると考えている消費者は少数派です。人生の過程で他のさまざまなショックに遭遇した時と同様に、誰もが立ち止まって物事を深く考えている状態です。Indexは、こうした観察結果を裏付けています。

危機が過ぎ去ったと感じたら、どのように行動するかを消費者に尋ねました。実際にどういう行動を取るかを示すものではありませんが、未来に関する期待の変化を追う手がかりになります。

下のグラフは、危機が弱まるにつれて、私たちが特定した4つのセグメントが、性質の全く異なる5つのセグメントに変化する可能性を示しています。例えば、現時点では、時間が経過するにつれて「買いだめ」セグメントに属する消費者の大部分が、「質素な生活」および「選択して贅沢」という2つの新しいセグメントに移行すると示唆されています。

現在のような不確かな時期には、こうした移行がどれだけの時間を要するか、あるいは別の形で移行が行われることになるかは未知数です。しかし、変化の推移を追うことは、消費者との関係を保ち、未来に備える上で役立つでしょう。

「選択して贅沢」セグメントの消費者は、パンデミック後には世界的な景気後退が待っていると固く信じています。その一方で、金銭的には保守的であるものの、危機が過ぎれば、生活必需品以外への支出が増えるとの見解を示しています。45%は買い物の仕方が恒久的に変化すると考えており、38%は購入する商品についても同様だと回答しています。


このセグメントの消費者は、目的意識の高いブランドに強い反応を示し、62%が社会に貢献している企業の商品を購入すると回答しています。29%が社会に貢献しているブランドなら金額が高くても購入すると回答、42%が国産品を購入するとしています。

これとは対照的に、「正常化」セグメントの消費者はパンデミック後も、それまでと何も変わらないとの確信を示しています。3分の1(33%)は、危機があっても自分たちの生活は何ら変わらないと回答し、買い物の仕方が変わると答えたのは29%、購入する物が変わるとの回答は21%にとどまっています。大多数は、普段よりも支出を増やすつもりはないとしています。

新型コロナウイルス感染症の終息後は?

パンデミックの余波から経済が立ち直ったとき、危機の時期に変容を遂げた行動のうち、どれが従来の形に回帰するのか、しばらくは現状を維持するのか、永遠に変化するのか、誰もがその答えを知りたいと思っています。

今からご紹介する内容は、FutureConsumer.Nowで過去2年にわたって行ってきたモデリングをベースとしています。ここで取り上げられている将来のシナリオは、確実に起こることの雛型としてではなく、起こり得ることを探索して模擬演習を行うための手がかりとして使われることで、その価値を発揮します。今後、消費者がどのように変化し得るかを経営チームが把握できれば、成功への道筋を描き、そこにたどり着くために必要な行動を起こせるようになります。

プライバシーに対する見方が変化

私たちが作成したシナリオの1つに、「社会性重視」と呼ばれるものがあります。2020年に世界的パンデミックが発生したと仮定して、その影響をモデル化したものです。後遺症の予測を行った時点では確率の低いシナリオと考えていましたが、今見れば不気味なほどに的を射ています。

このシナリオにおいて現在の状況と最も重なっているのが、プライバシーに対する社会の見方です。データを提供しないことが利己的であると見なされるようになるほど人々の考え方が変わり、社会の役に立つのであれば市民が個人情報を進んで提供するようになると考えられます。

現在、危機から脱するための政府による試みとして、接触追跡の重要性がさらに増しています。EYのIndexでも消費者の53%が、感染クラスターの監視と追跡に役立つのであれば、個人データを提供するだろうと回答しています。

個人データの提供

53%

Indexの調査で、感染クラスターの監視と追跡に役立つのであれば個人データの提供に同意すると回答した消費者の割合

企業は、個人データの提供に前向きな消費者の増加によって、どのような形で新しいビジネスモデルを構築する機会が生まれるのかを検討する必要があるでしょう。製品トレーサビリティへの需要がさらに加速し、消費者の活動も企業の活動も、すべて透明性をもって行われる環境が生まれる可能性があります。この流れで、あらゆる行動とそれが意味することが可視化されるかもしれません。

何事も、当たり前ではない

調査データから得られた洞察には、「社会ファースト」のような未来に向かっていることを示唆するものがある一方で、「無駄のない社会」と呼んでいるシナリオのように、これとは対照的なものもあります。このシナリオに描かれている注目すべき未来では、消費者が時間、人材、自然資源をみな等しく貴重なものとして扱っています。

現在、消費者の3分の1が、自分が最も大事と考えているものを見直そう、何もかもが当たり前だと考えることはやめよう、という提言に強く同意しています。また、4分の1以上が、自分が消費する物と、それが及ぼす影響についてこれまで以上に注意を払うと回答しています。おそらく、危機後の世界において私たちは、消費者がより高い意識を持ち、結果までを意識しながら選択を行う様子を目撃することになるでしょう。

「無駄のない社会」シナリオでは、従来のようなステータス意識は廃れ、企業目的や社会的利益がこれに替わるでしょう。消費者は、地元を意識させてくれる商店、レストラン、ブランドを好むようになり、(価格そのものよりも)金額に見合う価値があるかどうか、来歴、製品を購入したことで得られる満足度への関心が高まります。ここでもまた、透明性やサプライチェーンのトレーサビリティ向上を求める動きが活発になるでしょう。

今後も引き続き数か月にわたり、分析対象国を増やして消費者セグメントの推移を追跡していきます。一刻も早い復興を願っていますが、全く異なる未来への備えは必須です。

  • サーベイの方法

    2020年4月6日の週に、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツの消費者4,859人を対象に、調査を実施しました。アンケートの質問は、現在の行動、感情、意図を網羅しています。

サマリー

新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、世界中の消費者の日常生活は、思いもよらない形で変化しました。最も大きく変化したものと、変化しなかったものを把握することで、企業はこの状況へ適応できるでしょう。

この記事について

執筆者
Kristina Rogers

EY Global Consumer Leader

Global leader for consumer industries. Marketing strategist. Worked in 20 countries. Harvard MBA. Photographer. Scuba diver. Canadian fiction reader. Mother of two.

Andrew Cosgrove

EY Global Business Insights Leader – EY Knowledge

Consumer futurist. Strategist with global FMCG experience. Storyteller. Photographer. Father.

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